「くっ…」
彼女の体からは黒い
『さあ…力を受け入れよ…』
頭の中で響くイシュタリアの声。
『お前の憎しみを…力に変えよう…』
「憎しみ…?」
理子の頭に、天音の姿が浮かんだ。晴翔の隣で笑う天音。二人だけの特別な空間にいるような、あの兄妹。
「私は…」
理子の心に、今まで抑えていた感情が湧き上がる。
「天音さんが…うらやましい…ずるい…」
『そう…おまえの願いは…かなう…』
「朝霧くんは…私のものなのに…」
彼女の目が赤く光り始めた。
『彼を手に入れるのだ…邪魔するものは…排除して…』
「排除…」
理子の唇から漏れる言葉。人形のように虚ろな表情で繰り返す。
「天音…排除…」
彼女の周りの黒い靄が濃くなり、部屋全体に広がり始めた。窓から見える空の虹色の靄とは対照的な、漆黒の闇。
そして、その闇の中で、理子の姿が少しずつ変わっていった…