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第66話

リビングでは、四人が緊張した面持ちで話し合っていた。


「やはり予定より前倒しすべきではないでしょうか」


叶絵が言った。


「このまま三日後を待っていては、天音さんの修行が間に合わない」


「でも、相手の出方もわからないのに...」


直人が反論した。


「戦略的に不利です」


「両方の意見に一理あるな...」


蓮は考え込んだ様子だった。


「でも、予知では確かに三日後、妙典駅前で...」


「私は先輩と一緒に頑張りたい!」


美羽が熱心に言った。


「だって、私たち『天秤の守護者』でしょ? 一緒に立ち向かうんだよ!」


晴翔が階段を降りてくると、全員が彼に注目した。


「お姉ちゃんは眠ったよ」


「体調はどうですか?」


叶絵が尋ねた。


「疲れてるけど、大丈夫そうだ」


「そうですか...」


叶絵は少し考え込み、それから決断したように言った。


「明日から最終準備に入りましょう。もはや時間の猶予はありません」


「了解しました」


蓮が頷いた。


「僕も最大限の準備をします」


「僕も文献をさらに調査します」


直人も引き受けた。


「私はネットの監視を続けるよ!」


美羽も元気よく言った。


「晴翔君は?」


叶絵が尋ねた。


「俺はお姉ちゃんのサポートに専念するよ。それから...この家の安全確保」


「それがいいでしょう」


叶絵は立ち上がった。


「では、今日はここまでにします。明日の午前中にまた集合しましょう」


「はい」


全員が頷いた。


叶絵が帰った後、四人の高校生が残された。晴翔の表情は疲れていたが、決意に満ちていた。


「みんな、本当にありがとう」


彼は深く頭を下げた。


「お姉ちゃんと俺を助けてくれて...」


「何言ってるの!」


美羽が軽く晴翔の背中を叩いた。


「私たち友達でしょ? 当たり前じゃん!」


「そうだよ」


蓮も優しく微笑んだ。


「僕たちは一つのチーム。共に戦うんだ」


「それに、このような超常現象を目の当たりにできるなんて、研究者として最高の機会です」


直人が眼鏡を上げながら言った。彼なりの表現だ。


晴翔は胸が熱くなるのを感じた。こんな素晴らしい仲間たちと出会えたことに、感謝せずにはいられなかった。


「でも、明後日...本当に大丈夫かな?」


美羽が少し不安そうに言った。


「だって、イシュタリアって神様でしょ? 私たちみたいな高校生に何ができるの?」


「天音先輩もまた『神』だ」


蓮が静かに言った。


「それに、我々には特別な絆がある。そして...」


彼はポケットから小さな護符ごふを取り出した。


「これも用意しました。みんなに一つずつ」


「護符?」


晴翔が不思議そうに見た。


「神秘の力から身を守る護符ごふです」


蓮は一人一つ配った。古い布でできた小さな袋だ。特別な香りがする。


「これは...」


直人が興味深そうに嗅いだ。


「特殊なハーブと、古来からの秘法で作られたものです」


「効くの?」


美羽が半信半疑で尋ねた。


「完全ではありませんが、多少の防御にはなるでしょう」


「ありがとう」


晴翔は感謝して護符をポケットにしまった。


「では、今日は解散しよう。明日に備えて休むべきだ」


「了解!」


三人は帰り支度を始めた。


玄関で見送りながら、晴翔は空を見上げた。虹色のもやはさらに濃くなり、夕焼けの赤と混ざり合って、不思議な光景を作り出していた。

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