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第68話

夜半過ぎ、朝霧あさぎり家の周囲に異変が起きた。家を囲むように、黒いもやが漂い始めたのだ。


誰も気づかない中、一人の人影が庭に立っていた。千早ちはや理子りこだ。しかし、彼女は以前の理子ではなかった。


黒いドレスを纏い、赤く光る瞳を持つ彼女。髪は長く伸び、風もないのに宙に舞っている。


「朝霧くん...」


彼女の声は低く、歪んでいた。


「私があなたを...救ってあげる...」


理子は家を見上げた。二階の窓。そこには天音の姿が見える。彼女は眠っていた。


「天音...邪魔...者...」


理子の周りの黒いもやが濃くなった。彼女の手からは赤い光が漏れ出している。


「明日...全てが終わる...」


彼女はにやりと笑った。その表情はもはや人間のものではなかった。イシュタリアの意思に支配された傀儡かいらい


「お楽しみに...朝霧くん...」


そう言い残し、理子は黒いもやと共に夜の闇に溶けていった。


翌日の戦いは、既に避けられないものとなっていた。


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