アジトに戻った一行は、それぞれソファや椅子に腰を下ろした。全員が戦いの緊張から解放され、疲労感に包まれている。
「ふぅ…今日はすごかったね」
美羽がぐったりとソファに
「まさか本物の神様の使者と戦うことになるなんて…」
「あれは序の口です」
カナエが冷静に言った。
「
「え? あれより強いの?」
美羽が飛び上がるように起き上がった。
「そんなの…無理…」
「だからこそ、訓練が必要なのよ」
ソフィアが天音の隣に座り、優しく語りかけた。
「今日の経験は、あなたにとって大きな一歩になったはず」
「はい…」
天音は少し元気を取り戻したようで、顔を上げた。
「不思議と…怖くなかった。むしろ…みんなを守りたいという気持ちで一杯でした」
「それが大切なことです」
ソフィアは微笑んだ。
「力の源は愛。守りたいという気持ちが、あなたの力を正しい方向に導くのです」
「でも、一つ疑問があります」
直人が眼鏡を上げながら言った。
「なぜハンムラビは突然現れたのでしょう? 単に天音先輩を『試す』ためだけなら、もっと慎重に行動するはずです」
「鋭い指摘ですね」
カナエが直人に
「実は…それが気になっていました」
「挑発かもしれない」
ジンが無表情で言った。
「我々の力を測るため」
「いや、それだけじゃないと思う」
アルバが珍しく真面目な表情で言った。
「彼らには何か別の目的がある。でなければ、あんな派手なやり方はしない」
「別の目的…?」
晴翔が眉をひそめた。
「例えば?」
アルバは一度ジンとカナエを見た後、ゆっくりと口を開いた。
「気を逸らすことかもしれない」
「気を逸らす…?」
「そう。我々の注意を引きつけている間に、別の場所で何かを進めている可能性がある」
「それは…考えられますね」
カナエも同意した。
「では、ハンムラビの目的は…」
蓮が静かに言った。
「私たちの監視の目を一点に集中させること」
「じゃあ、本当の目的地は…」
晴翔の言葉が途切れたとき、突然アラームが鳴り響いた。モニターが再び赤く点滅する。
「!」
カナエはすぐさまコンピューターに向かった。
「今度は…神社?」
「どこ?」
「
「それって…」
天音が顔色を変えた。
「私たちの家の近く…」
「ハンムラビの狙いは気を逸らすことだった…!」
晴翔が立ち上がった。
「叶絵さんは?」
「まだ現場の後片付けに…」
「連絡を!」
カナエはすぐに通信機を取り出したが、繋がらない様子だ。
「ジャミングされています」
「くそっ…!」
「行くしかない」
晴翔は決意を固めた。
「お姉ちゃん、無理しないで。俺たちが行く」
「いいえ」
天音も立ち上がった。疲れはまだ残っているようだが、彼女の目には強い意志が宿っていた。
「私も行く。あれは私たちの大切な場所だもの」
ソフィアは少し考えた後、頷いた。
「分かりました。でも、無理はなさらないで」
「行くぞ、みんな」
カナエが命令を下した。
「最悪の事態に備えて」
全員が緊張した面持ちで頷いた。今度の戦いは、彼らの大切な場所を守る戦いになる。