目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報

第80話

定食屋「みよし」は、夜の九時を過ぎているのに、まだ明かりが灯っていた。学生たちが大挙して押し寄せたのを見て、店主の三好みよしおじさんは驚いたが、快く迎え入れてくれた。


「いらっしゃい! 珍しいね、こんな時間に大勢で」


「すみません、お腹ペコペコで…」


美羽が元気よく答えた。


「大盛りのカツ丼ください!」


「お、元気だねぇ」


三好おじさんは愉快そうに笑った。


「他の皆さんは?」


「私はお茶漬けで」


天音が控えめに言った。


「梅をお願いします」


「僕は親子丼で」


蓮も注文した。


「僕はカレーライス」


直人が眼鏡を上げながら言った。


「私は天音さんと同じく、お茶漬けを」


ソフィアも優雅に注文した。


「俺はカツ丼で」


晴翔が言った。


「みんな好きなの頼んでいいよ。今日は俺がおごる」


「マジで?」


美羽の目が輝いた。


「じゃあデザートも頼んじゃおっかな〜」


「調子に乗るなよ」


晴翔は苦笑した。


「せめて食事だけにしとけ」


「ケチ〜」


美羽が頬を膨らませた。


「冗談だよ、ありがとう朝霧くん」


一同の注文を受けた三好おじさんは、厨房へと下がっていった。残されたのは、今日二度の戦いを乗り越えた若者たちだけだ。


「なんか…不思議だね」


美羽が窓の外を見た。そこには普通の夜の街が広がっている。


「さっきまであんな大変なことがあったのに、こうして普通にご飯食べてる」


「それが大切なんだよ」


蓮が静かに言った。


「日常を守るための戦い。だからこそ、日常の大切さを忘れてはいけない」


「そうだね…」


天音も窓の外を見た。虹色に染まった空は既に夜の闇に包まれ、星々が瞬いている。


「私…守りたい」


彼女の声は小さかったが、強い決意に満ちていた。


「この日常を。みんなの笑顔を」


「お姉ちゃん…」


晴翔は姉の変化に、少し驚きながらも誇らしさを感じていた。怖がるだけだった彼女が、今は自分の力と向き合い、大切なものを守ろうとしている。


「私たちもいるよ」


美羽が元気よく言った。


「『天秤の守護者』! 最強チーム!」


「そうですね」


直人も珍しく笑顔を見せた。


「私たちの絆は、科学では説明できませんが…確かに存在します」


「うん、感じる」


天音は全員を見回した。仲間たちの顔に、疲れと共に確かな絆が見えた。


「ありがとう…みんな」


三好おじさんが料理を運んでくる音が聞こえた。美味しそうな香りが食堂に広がる。


「さあ、食べよう!」


美羽の明るい声に、全員が笑顔になった。


この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?