定食屋「みよし」は、夜の九時を過ぎているのに、まだ明かりが灯っていた。学生たちが大挙して押し寄せたのを見て、店主の
「いらっしゃい! 珍しいね、こんな時間に大勢で」
「すみません、お腹ペコペコで…」
美羽が元気よく答えた。
「大盛りのカツ丼ください!」
「お、元気だねぇ」
三好おじさんは愉快そうに笑った。
「他の皆さんは?」
「私はお茶漬けで」
天音が控えめに言った。
「梅をお願いします」
「僕は親子丼で」
蓮も注文した。
「僕はカレーライス」
直人が眼鏡を上げながら言った。
「私は天音さんと同じく、お茶漬けを」
ソフィアも優雅に注文した。
「俺はカツ丼で」
晴翔が言った。
「みんな好きなの頼んでいいよ。今日は俺がおごる」
「マジで?」
美羽の目が輝いた。
「じゃあデザートも頼んじゃおっかな〜」
「調子に乗るなよ」
晴翔は苦笑した。
「せめて食事だけにしとけ」
「ケチ〜」
美羽が頬を膨らませた。
「冗談だよ、ありがとう朝霧くん」
一同の注文を受けた三好おじさんは、厨房へと下がっていった。残されたのは、今日二度の戦いを乗り越えた若者たちだけだ。
「なんか…不思議だね」
美羽が窓の外を見た。そこには普通の夜の街が広がっている。
「さっきまであんな大変なことがあったのに、こうして普通にご飯食べてる」
「それが大切なんだよ」
蓮が静かに言った。
「日常を守るための戦い。だからこそ、日常の大切さを忘れてはいけない」
「そうだね…」
天音も窓の外を見た。虹色に染まった空は既に夜の闇に包まれ、星々が瞬いている。
「私…守りたい」
彼女の声は小さかったが、強い決意に満ちていた。
「この日常を。みんなの笑顔を」
「お姉ちゃん…」
晴翔は姉の変化に、少し驚きながらも誇らしさを感じていた。怖がるだけだった彼女が、今は自分の力と向き合い、大切なものを守ろうとしている。
「私たちもいるよ」
美羽が元気よく言った。
「『天秤の守護者』! 最強チーム!」
「そうですね」
直人も珍しく笑顔を見せた。
「私たちの絆は、科学では説明できませんが…確かに存在します」
「うん、感じる」
天音は全員を見回した。仲間たちの顔に、疲れと共に確かな絆が見えた。
「ありがとう…みんな」
三好おじさんが料理を運んでくる音が聞こえた。美味しそうな香りが食堂に広がる。
「さあ、食べよう!」
美羽の明るい声に、全員が笑顔になった。