朝が来た。東の空が白み始める頃、アパートメント妙典は既に活気づいていた。作戦当日、全ての準備が整えられている。
「みんな、集合しました」
叶絵の声が会議室に響く。全員が真剣な表情で席に着いていた。
「今日の作戦について、最後の確認です」
地図が再び広げられ、各自の役割が確認された。
「午前中は通常通り行動し、午後三時に再集合。午後五時から作戦開始です」
「質問は?」
カナエが尋ねた。
誰も手を挙げない。全員が昨日の会議で十分理解しているようだった。
「では、最後に」
カナエは珍しく真剣な表情で全員を見回した。
「今日の作戦が成功すれば、世界は救われます。しかし、失敗すれば...」
言葉を濁す必要はなかった。全員が理解していた。
「私たちには責任がある。『天秤の守護者』として、『神狩り組織』として」
「『神』として...」
天音が小さく付け加えた。
「そうだ」
カナエは頷いた。
「それぞれの立場で、最善を尽くしましょう」
全員が頷いた。
「作戦名は『天秤の夜明け』」
叶絵が言った。
「我々の勝利が、新たな夜明けとなることを」
「頑張ろうね、みんな!」
美羽が明るく言った。彼女の笑顔が、緊張した空気を少し和らげた。
「ああ、どんな状況になっても俺たちは仲間だ」
晴翔が力強く言った。
「天秤の守護者!」
美羽が拳を上げた。
「天秤の守護者!」
全員が応じた。その瞬間、彼らは本当の意味で一つのチームになった気がした。敵も味方も関係なく、同じ目標に向かって進む仲間として。
「解散!」
カナエの声で、全員が動き始めた。午後の集合時間まで、それぞれが最後の準備をする。
天音と晴翔は、静かに部屋に戻った。
「お姉ちゃん」
晴翔が声をかけた。
「何?」
「最後に、ちゃんと言っておきたいことがある」
晴翔の表情は真剣そのものだった。
「何?」
「俺...お姉ちゃんのためなら、世界を敵にまわしてもいい」
「晴翔...」
「だから、どんな選択を迫られても...お姉ちゃんの味方でいるから」
天音の目に涙が浮かんだ。
「私も...晴翔のためなら、神になることも、人間に戻ることも...どんな選択だってする」
「ああ...」
二人は黙って見つめ合った。言葉にできない深い絆が、そこにはあった。
「行こうか」
晴翔が手を差し伸べた。
「うん」
天音はその手を取った。