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第90話

朝が来た。東の空が白み始める頃、アパートメント妙典は既に活気づいていた。作戦当日、全ての準備が整えられている。


「みんな、集合しました」


叶絵の声が会議室に響く。全員が真剣な表情で席に着いていた。


「今日の作戦について、最後の確認です」


地図が再び広げられ、各自の役割が確認された。


「午前中は通常通り行動し、午後三時に再集合。午後五時から作戦開始です」


「質問は?」


カナエが尋ねた。


誰も手を挙げない。全員が昨日の会議で十分理解しているようだった。


「では、最後に」


カナエは珍しく真剣な表情で全員を見回した。


「今日の作戦が成功すれば、世界は救われます。しかし、失敗すれば...」


言葉を濁す必要はなかった。全員が理解していた。


「私たちには責任がある。『天秤の守護者』として、『神狩り組織』として」


「『神』として...」


天音が小さく付け加えた。


「そうだ」


カナエは頷いた。


「それぞれの立場で、最善を尽くしましょう」


全員が頷いた。


「作戦名は『天秤の夜明け』」


叶絵が言った。


「我々の勝利が、新たな夜明けとなることを」


「頑張ろうね、みんな!」


美羽が明るく言った。彼女の笑顔が、緊張した空気を少し和らげた。


「ああ、どんな状況になっても俺たちは仲間だ」


晴翔が力強く言った。


「天秤の守護者!」


美羽が拳を上げた。


「天秤の守護者!」


全員が応じた。その瞬間、彼らは本当の意味で一つのチームになった気がした。敵も味方も関係なく、同じ目標に向かって進む仲間として。


「解散!」


カナエの声で、全員が動き始めた。午後の集合時間まで、それぞれが最後の準備をする。


天音と晴翔は、静かに部屋に戻った。


「お姉ちゃん」


晴翔が声をかけた。


「何?」


「最後に、ちゃんと言っておきたいことがある」


晴翔の表情は真剣そのものだった。


「何?」


「俺...お姉ちゃんのためなら、世界を敵にまわしてもいい」


「晴翔...」


「だから、どんな選択を迫られても...お姉ちゃんの味方でいるから」


天音の目に涙が浮かんだ。


「私も...晴翔のためなら、神になることも、人間に戻ることも...どんな選択だってする」


「ああ...」


二人は黙って見つめ合った。言葉にできない深い絆が、そこにはあった。


「行こうか」


晴翔が手を差し伸べた。


「うん」


天音はその手を取った。


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