別の部屋では、晴翔が一人、
「準備万端?」
振り返ると、アルバが
「ああ」
晴翔は短く答えた。アルバとはまだ完全には打ち解けていない。神狩り組織の人間であり、かつては敵だった彼への警戒心は残っていた。
「緊張してる?」
アルバが問いかけた。
「当たり前だろ」
晴翔はぶっきらぼうに言った。
「姉の命がかかってるんだから」
「そうだな…」
アルバは珍しく真面目な表情になった。
「実は、俺もなんだ」
「え?」
晴翔は驚いて顔を上げた。いつも軽薄なアルバが、緊張を認めるなんて。
「信じられないだろ?」
アルバは自嘲気味に笑った。
「いつもは『どうにかなる』って思考だけど、今回ばかりは…」
「わかるよ」
晴翔の声が少し柔らかくなった。
「こんな戦い、誰だって緊張する」
「でもな」
アルバは晴翔の肩を叩いた。
「お前の姉ちゃんは本物だ。あれだけの力を持って、それでも優しさを失わない」
「ああ、知ってる」
晴翔は胸を張った。
「お姉ちゃんは特別だ」
「だからこそ、俺たちも全力で守らないとな」
アルバはにっと笑った。
「まあ、そのために来たんだし」
「アルバ…」
晴翔は少し戸惑ったように彼を見た。
「なんで俺に?」
「さあな」
アルバは肩をすくめた。
「たぶん、同じものを見たからじゃないか」
「同じもの?」
「ああ、大切な人を守りたいという思い」
晴翔は黙って考え込んだ。アルバにも大切な人がいるのだろうか。それとも…彼自身が何か、守るべきものを見つけたのか。
「じゃ、行くぞ」
アルバは
「ああ」
晴翔もうなずき、最後の点検を終えた。