「急いで!」
晴翔は天音の手を引いて、カフェの裏からタワーに向かって走っていた。
「でも、カナエさんとソフィアさんは?」
「二人なら大丈夫だ。俺たちは予定通り正面から入る」
「でも…」
「お姉ちゃん、迷ってる場合じゃない!」
晴翔の声には切迫感があった。
「計画では、俺たちが正面からタワーに入り、第二部隊と合流する。それが最善の策だ」
「…そうだね」
天音も決意を固め直した。
「行こう」
二人はタワーの正面入口に向かって走った。しかし、そこには巨大な
「これは…結界?」
晴翔が立ち止まった。
「どうやって通る?」
「私が…」
天音はペンダントを握りしめ、目を閉じた。
「境界の泉の力で…」
彼女の周りに金色の光が広がる。その光が
「行くよ!」
二人は素早くその
「なぜ…逃がした?」
カナエはオラクルの攻撃を
「逃がしたのではない」
オラクルは笑った。
「誘い込んだのだ」
「!」
カナエとソフィアの顔から血の気が引いた。
「そういうことか…」
ソフィアが
「タワーの中が…」
「そう。タワー全体が既に儀式の場だ」
オラクルは高々と宣言した。
「彼らは自ら
「それでもまだ、仲間たちがいる!」
カナエは怒りを
「タワー内部には既に第二部隊が!」
「ああ、彼らもまた
オラクルは
「全ては計画通りだ」
「何を企んでいる…」
ソフィアは不安な表情を浮かべた。
「あなたたちの望みは何?」
「望み?」
オラクルは首を傾げた。
「単純だ。この世界に『神の時代』を取り戻すこと」
「でも、なぜ天音さんが必要なの?」
「彼女は鍵だ」
オラクルは真剣な声で言った。
「新たな神でありながら、人の心を持つ存在。境界の両側に立てる唯一の者」
「そんな…」
「さあ、もう時間だ」
オラクルは空を見上げた。東の空に、満月が姿を現し始めていた。
「儀式の始まりだ」
「何かおかしい…」
タワー内部で、直人が不安そうに言った。
「あまりに静かすぎる」
四人は一階から上へと登っていたが、誰一人として敵の姿を見ていなかった。
「これは…」
蓮が突然立ち止まった。彼の顔は
「みんな、待って」
「どうした?」
ジンが振り返った。
「この建物全体が…」
蓮は震える声で言った。
「儀式の
「何だって?」
アルバが驚いて声を上げた。
「そんなバカな…」
「間違いない」
蓮は床を指さした。よく見ると、床全体に銀色の粉で
「つまり…俺たちは…」
アルバの表情が固まった。
「そう」
ジンが冷静に言った。
「罠に
「通信を!」
直人が慌てて通信機を操作した。
「叶絵さん!緊急事態です!タワー全体が…」
しかし、通信機からは
「
彼は
「どうする…」
「上に向かうしかない」
ジンは静かに言った。
「計画通り、天音さんと合流する」
「でも…」
「選択肢はない」
ジンの声は
「前に進むのみだ」
「了解」
全員が頷き、階段を上り始めた。