東京タワーでの戦いから一週間が経った
「お姉ちゃん、ここにいたんだ」
振り返ると、
「晴翔、授業は?」
「終わったよ。もう放課後だよ、お姉ちゃん」
「あら、そんな時間?」
天音はハッとした表情を見せた。気づけば太陽は西に傾きかけている。
「また
晴翔は呆れたような、でも優しい表情で言った。
「うん…ごめんね」
天音は少し照れたように頬を赤らめた。
「でも何となく、ここからの景色が好きで…」
視線の先には、遠く東京タワーが見える。あの日、世界の命運が決まった場所。そして彼女が「人間」でいることを選んだ場所。
「あそこで何があったか、みんな覚えてないんだって」
晴翔が屋上の
「本当?」
「ああ。神狩り組織が記憶操作をしたらしい。観光客も、タワーのスタッフも」
「そっか…」
天音は少し寂しそうに
「でも、そのほうがいいよね。みんなを巻き込まないためには」
「そうだな」
風が二人の間を通り抜け、天音の長い髪が風になびいた。その様子を見て、晴翔はふと思い出したように言った。
「そういえば、叶絵さんから連絡があったよ」
「え?何かあったの?」
「いや、単なる近況報告だって。組織の中でも色々と動きがあるみたいだけど、もう俺たちに危険はないって」
「それは、良かった…」
天音はホッとしたように胸に手を当てた。叶絵からの連絡は、戦いが終わってからは初めてだった。
「で、カナエ先生は?まだ学校に?」
「いや、もう辞めたよ」
晴翔は肩をすくめた。
「転校生として来た四天王も、みんな『家庭の事情で転校した』ってことになってる」
「そっか…」
天音はちょっぴり寂しそうな表情を浮かべた。
「ソフィアさんとは、もう会えないのかな…」
「さあ?でも、あの人なら『必要な時』に現れそうな気がするけどな」
「そうだね」
天音は微笑んだ。師であり、先輩でもあるソフィアの姿が目に浮かぶ。
「そういえば、美羽ちゃんたちは?」
「ああ、下で待ってる。お姉ちゃんを探してくれって言われたんだ」
「え?どうして?」
「さあ?」
晴翔はニヤリと意味ありげな笑みを浮かべた。
「行けば分かるよ」
「もう、なんか企んでるでしょ?」
天音は首をかしげながらも、嬉しそうに立ち上がった。彼女のペンダントが、かすかに金色に