教室に降りてくると、そこには見慣れた顔が集まっていた。
「天音先輩!」
美羽が元気いっぱいに手を振った。
「遅いよー!みんな待ってたんだから!」
「ごめんね、時間を忘れてて…」
天音が謝ると、奈央が優しく微笑んだ。
「いいのよ、あなたらしいわ」
「で、何の用なの?」
天音が首を傾げると、みんなが顔を見合わせた。
「えっとね…」
美羽が少しはにかみながら言った。
「私たち、『天秤の守護者』の活動、どうするか話し合ってたの」
「活動?」
「そう、だってさ」
蓮が静かに言った。
「もうピンチは去ったけど、僕たちはまだ『守護者』なんだよね?」
「そうですね」
直人が眼鏡を上げながら言った。
「論理的に考えれば、脅威がなくなったとしても、備えは必要です」
「もう戦う必要はないけど…」
奈央も優しく言った。
「でも、何かあった時のために、一緒にいたいなって」
「みんな…」
天音は驚いた表情で皆を見回した。そして、その目に温かな涙が浮かんだ。
「ありがとう」
「泣くなよ〜」
美羽が慌てて天音の肩をポンポンと叩いた。
「実はね、今日は特別な日なの!」
「特別?」
「そう!『天秤の守護者』結成一ヶ月記念日!」
「え?」
天音が驚いた表情を見せると、美羽はクスッと笑った。
「まあ厳密には違うかもしれないけど、『天音先輩が神様だとわかった日』から一ヶ月ってことで!」
「正確には三十三日目ですが」
直人が少しマジメに訂正した。
「細かいこと言わないの!」
美羽は頬を膨らませた。
「気持ちが大事なんだから!」
「アハハ…」
天音は思わず笑ってしまった。みんなの様子が、あの戦いの前と変わらないことが嬉しくて仕方なかった。
「で、何をするの?」
天音が尋ねると、美羽は嬉しそうに手をパチンと叩いた。
「これから、お祝いのお茶会!」
「私が手作りケーキを持ってきたの」
奈央が笑顔で言った。
「生徒会室を貸してもらったから、そこで」
「じゃあ、行こうか」
晴翔が言った。
全員が教室を出て、廊下を歩き始めた。窓の外には、部活動に励む生徒たちの姿が見える。ごく普通の放課後の風景。でも、この「普通」を守るために、彼らはかつて命を賭けた。
「あ、そういえば」
歩きながら、美羽が突然思い出したように言った。
「『
「ほんと?」
天音は嬉しそうに声を上げた。
「うん!来週から学校に戻ってくるらしいよ」
「よかった…」
天音は心から安堵した。イシュタリアに
「イシュタリアの力が完全に消えたかは分からないんだけどね」
蓮が少し心配そうに言った。
「でも、少なくとも彼女自身は無事」
「それだけで十分よ」
天音はきっぱりと言った。
「あとは私が…みんなが守るから」
「おっ、天音先輩、かっこいい!」
美羽が目を輝かせた。
「まるで本物のヒロインみたい!」
「も、もう、そんな大げさに言わないでよ…」