お茶会が終わり、日が傾き始めた頃、天音と晴翔は帰り道を歩いていた。夕焼けに染まる空が、まるで彼らを祝福するかのように美しい。
「楽しかったね」
天音が言った。
「ああ」
晴翔も頷いた。
「みんな元気だった」
「うん…本当に平和になったんだね」
「まあ、また何か起こるかもしれないけどな」
晴翔はふと空を見上げた。
「旧神たちは完全に消えたわけじゃない。それに…」
「私の力もまだあるしね」
天音はペンダントに手を触れた。その感触は、相変わらず温かかった。
「でも、もう怖くない」
「そうか」
「うん」
天音は優しく微笑んだ。
「だって、みんながいるもの」
「そうだな」
しばらく二人は黙って歩いた。静かな夕暮れの街を、肩を並べて。
「そういえば」
晴翔が突然言った。
「あのメッセージカード、開けたの?」
「まだ…」
天音はカバンを
「一人になった時にって言われたから」
「そうか」
晴翔はちょっと考え込むような表情を見せた後、ニヤリと笑った。
「じゃあ、ちょっと先に行ってるよ」
「え?どうして?」
「だって、『一人になった時に』って言われてるんだろ?」
晴翔はウインクした。
「悪いけど、ちょっとコンビニ寄っていくわ。お姉ちゃんは先に帰ってていいよ」
「もう、分かりやすすぎるんだから…」
天音は呆れたように言ったが、内心では少し嬉しかった。いつも自分のことを考えてくれる弟。その優しさが、彼女にとっては何よりの宝物だった。
「じゃあ、先に帰るね」
「ああ、また家で」
晴翔は手を振り、コンビニへと向かって行った。
天音は一人、家路を急いだ。