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第112話

お茶会が終わり、日が傾き始めた頃、天音と晴翔は帰り道を歩いていた。夕焼けに染まる空が、まるで彼らを祝福するかのように美しい。


「楽しかったね」


天音が言った。


「ああ」


晴翔も頷いた。


「みんな元気だった」


「うん…本当に平和になったんだね」


「まあ、また何か起こるかもしれないけどな」


晴翔はふと空を見上げた。


「旧神たちは完全に消えたわけじゃない。それに…」


「私の力もまだあるしね」


天音はペンダントに手を触れた。その感触は、相変わらず温かかった。


「でも、もう怖くない」


「そうか」


「うん」


天音は優しく微笑んだ。


「だって、みんながいるもの」


「そうだな」


しばらく二人は黙って歩いた。静かな夕暮れの街を、肩を並べて。


「そういえば」


晴翔が突然言った。


「あのメッセージカード、開けたの?」


「まだ…」


天音はカバンをのぞいた。


「一人になった時にって言われたから」


「そうか」


晴翔はちょっと考え込むような表情を見せた後、ニヤリと笑った。


「じゃあ、ちょっと先に行ってるよ」


「え?どうして?」


「だって、『一人になった時に』って言われてるんだろ?」


晴翔はウインクした。


「悪いけど、ちょっとコンビニ寄っていくわ。お姉ちゃんは先に帰ってていいよ」


「もう、分かりやすすぎるんだから…」


天音は呆れたように言ったが、内心では少し嬉しかった。いつも自分のことを考えてくれる弟。その優しさが、彼女にとっては何よりの宝物だった。


「じゃあ、先に帰るね」


「ああ、また家で」


晴翔は手を振り、コンビニへと向かって行った。


天音は一人、家路を急いだ。


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