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第115話

春の訪れを感じさせる風が校舎こうしゃの窓を軽く揺らした三月さんがつのある日、朝霧あさぎり天音あまねは教室の窓からさくらの蕾をながめていた。満開にはまだ早いが、そのふくらみ始めた蕾には、確かな春の約束やくそくが感じられる。


「ねえねえ、天音先輩!」


物思いにふける天音の肩を、結城ゆうき美羽みうが元気よく叩いた。


「わっ!びっくりした…」


「あはは、ごめんごめん!でも大事な話があるの!」


美羽の目は輝いていた。その手には一枚の紙切れが握られている。


「何?その紙は…」


「これはね…」


美羽は得意とくいげに紙を掲げた。


「私たちの未来計画書!」


「未来…計画書?」


天音が首を傾げると、後ろから鴻上こうがみ直人なおとの声が聞こえた。


「結城さんが急に思いついたんです」


彼は眼鏡を上げながら溜息ためいき混じりに説明した。


「『天秤の守護者』の未来について、全員で話し合おうって」


「面白そうじゃない」


望月もちづきれんも加わってきた。彼の透き通るような瞳が、優しく微笑んでいる。


「僕は賛成だよ。未来を語ることは、未来を創ることだから」


「予知能力者らしい発言だな」


教室の入り口から朝霧あさぎり晴翔はるとが入ってきた。


「お昼休みだし、屋上でやろうぜ」


「それがいいわね!」


美羽は嬉しそうに手を叩いた。


「じゃあ、お弁当持って集合!『天秤の守護者』緊急会議だよ!」


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