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第118話

季節は移り、やがて桜の満開の季節が訪れた。妙典みょうでんの街も、桜色さくらいろに染まっていた。


卒業式そつぎょうしきの日、天音たちは桜並木の下を歩いていた。


「もう三年生か…」


晴翔が桜の花弁はなびらが舞う空を見上げながら呟いた。


「早いよね」


天音も懐かしむように言った。


「あと一年で卒業…」


「みんなは進路、決まってる?」


美羽が尋ねた。


「私は地元の体育大学を目指すことにしたよ!」


「私は東京大学の理工学部志望です」


直人が真面目な表情で言った。


「僕は心理学科のある大学に行くつもりだよ」


蓮も静かに答えた。


「俺は警察学校かな」


晴翔も決意を固めた様子で言った。


「お姉ちゃんは?」


「私は保育士の専門学校」


天音は笑顔で答えた。


「やっぱり子どもたちと一緒にいたいから」


「うーん、みんな本当にバラバラになっちゃうんだね…」


美羽が少し寂しそうな表情を見せた。


「でも!」


彼女はすぐに元気を取り戻し、腕のブレスレットを掲げた。


「これがあるから大丈夫!」


「そうだな」


晴翔も自分のブレスレットを見た。


「それに、毎年この桜の季節には集まろう」


「うん」


全員が頷いた。


「約束だよ」


天音が静かに言った。


「どんなに離れていても、この季節には必ず会うこと」


「約束する!」


五人は桜の下で手を重ね合わせた。その瞬間、風が吹き、桜の花弁はなびらが舞い落ちて、彼らを優しく包み込んだ。


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