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第29話 港町でまたまた大暴れ! ウチ、マジ有名人じゃん?




「んー! やっぱ港町は魚がウマい!」


あたし…いや、ウチ、愛内ゆきぽよは、港町リベルタの朝市で買ったばかりの、焼きたての海鮮串を頬張っていた。

昨日の夜、蛇の目のアジト(倉庫)を派手にぶっ潰してやった後だから、朝ごはんがマジで美味い!

ちなみに、あの倉庫、今朝見に行ったら、見事に全焼してた。

ウケる。

街では、「昨夜、第7埠頭で原因不明の大火事があったらしいぞ!」とか、「いや、あれは黒い組織同士の抗争で、何者かがアジトを爆破したんだ!」とか、色々噂になってるけど、もちろんウチは知らん顔。


腹ごしらえも済んだところで、宿屋に戻り、早速アル(アルフォンス王子)に通信機で連絡を入れる。


「もしもしー、アル? ゆきぽよだけどー。リベルタの蛇の目、ちょっくら潰しといたわー」


『…はい? 今、何と?』


通信機の向こうで、アルが素っ頓狂な声を上げる。


「だからー、アジト見つけて、ボスっぽいのボコって、証拠っぽいのもゲットしたから。あ、あと、ついでにアジト、燃やしといた! てへぺろ!」


『ま、またですか!? ほ、放火まで!? あなたという人は本当に、毎回毎回こちらの想像を遥かに超える行動を…! し、しかし、拠点を制圧し、証拠まで手に入れたと?』


アルの声が、呆れと、驚きと、若干の諦めが混じった感じになってる。

面白い。


「そーそー。なんか、密輸品のリストとか、ヤバそうな手紙とか、いっぱいあったよ。ちゃんと取っといたから、後で送るわ」


『…分かりました。すぐに部下をリベルタへ向かわせ、証拠を受け取らせます。あなたは…あなたは本当に、とんでもない方だ。…ですが、ありがとうございます。これでまた一歩、『蛇の目』壊滅に近づきました。報酬の金貨1000枚、必ず用意させます』


「やったー! さすがアル! 太っ腹!」


『ただし! 次からは、もう少し…もう少しだけ、慎重な行動をお願いしますよ! 心臓に悪いですから!』


アルの悲痛な叫びをBGMに、ウチは上機嫌で通信を切った。


さて、王子の部下が証拠を受け取りに来るまで、数日はリベルタに滞在することになりそうだ。

暇だし、昨日会った情報屋の兄ちゃんにでも、また会いに行ってみるか。

今回の倉庫襲撃の件で、なんか新しい情報持ってたりして。


ウチは、昨日と同じ路地裏で、情報屋の男を見つけた。

男は、ウチの顔を見るなり、目を丸くして駆け寄ってきた。


「お、おい! あんた、まさか本当に昨夜、第7埠頭の倉庫を…!?」


「ん? あー、まあね。ちょっとお掃除してきただけだし」


ウチがしれっと言うと、情報屋の男はゴクリと唾を飲んだ。


「マジかよ…あの『蛇の目』の拠点を、たった一人で潰したってのか…。あんた、一体何者なんだ…。大したもんだぜ、嬢ちゃん」


男は、驚きと、ちょっとした尊敬の眼差しでウチを見る。


「それで? なんか新しい情報とかないわけ? あの蛇野郎ども、まだリベルタに仲間とかいんの?」


「ああ…蛇の目の連中は、今回の件で、ほとんどリベルタから撤退するだろうな。だが、安心するのは早いぜ。この街には、蛇の目とは別の、もっと厄介な連中もいる。それに、奴らがこのまま黙って引き下がるとも思えねえ。必ず、報復に来るはずだ」


「ふーん。上等じゃん。返り討ちにしてやるし」


情報屋の男の不吉な予言は、思ったより早く現実のものとなった。


その日の午後。

ウチが、市場で新しい水着(異世界デザインで結構カワイイ!)でも見てっかなーとぶらぶらしていると、突然、周りの雰囲気が変わった。

なんか、殺気立ってるっていうか、明らかにウチを狙ってる視線を、四方八方から感じる!


「…うわ、マジで来たし。しかも、昼間っから堂々とやる気?」


次の瞬間、市場の雑踏の中から、見るからにガラの悪い船乗り風の男たちや、黒ずくめのチンピラたちが、武器を構えて飛び出してきた!

その数、20人以上!


「見つけたぞ! あの派手なアマだ!」

「昨日の落とし前、きっちりつけさせてもらうぜ!」

「タダで済むと思うなよ!」


どうやら、昨日ウチが潰した倉庫の残党か、あるいは、それに繋がる別の裏組織の連中みたいだ。

縄張りを荒らされたとか、そういうこと?

めんどくさ。


「マジでしつけーな、こいつら! いい加減にしろ!」


一般市民が「きゃー!」とか叫んで逃げ惑う中、ウチはため息をつきながら、戦闘態勢に入る。

もう、隠密行動とか、どーでもいーや。

派手にやっちゃえ!


市場の屋台を盾にしながら、襲い来るチンピラたちを、次々と蹴散らしていく!

果物カゴを蹴り飛ばして目くらましにしたり、魚屋のマグロ(みたいなデカい魚)をぶん回して武器にしたり! (後でちゃんと謝った)

市場のど真ん中で、まさに大乱闘!


「このアマ、強えぞ!」

「囲め! 囲んで叩け!」


敵も、数だけはいるから、なかなかウザい。

でも、今のウチの敵じゃない!


ドカッ! バキッ! ゴシャッ!


景気のいい音が市場に響き渡る。

ウチの『身体強化 極』と、新しく覚えた『気配察知』『危機回避』スキルが、ここでも大活躍!

敵の攻撃は、ほとんど当たらないし、当たっても全然痛くない!


「あんた、また派手にやってるねぇ!」


そんな大騒ぎを聞きつけて、リベルタの冒険者ギルドの受付嬢(あの姉御肌の人)が、屈強な冒険者数人を引き連れて駆けつけてきた!


「あら、お姉さん! ちょうどよかった! こいつら、ウザいから、ちょっと手伝ってくんない?」


「はぁ…しょうがないねぇ。街中でこんな騒ぎ起こされたんじゃ、ギルドとしても見過ごせないからね! あんたたち! この無法者どもを叩きのめすよ!」


姉御肌の号令で、ギルドの冒険者たちも戦闘に参加!

おお、なんか共闘っぽくて、ちょっとだけテンション上がる!


ウチとギルドの冒険者たちの活躍で、あれだけいたチンピラたちは、あっという間に制圧された。

市場はメチャクチャになっちゃったけど、まあ、怪我人とかは、たぶん出てないっしょ。


「ふぅ、終わった終わった。お騒がせしましたー」


「あんたねぇ…少しは加減ってもんを覚えなよ。ま、今回は、街のゴロツキが一掃できたから、結果オーライってとこかね」


姉御肌は、呆れつつも、どこか楽しそうだ。


この一件で、ウチは、リベルタの裏社会の連中から、さらに目をつけられることになったみたいだけど、同時に、一部の善良な市民からは、「街の用心棒の姐さん!」みたいな感じで、なぜか慕われるようになっちゃった。

ウケる。


数日後。

アルの部下の人が、リベルタに到着し、ウチは無事に証拠の帳簿と、蛇野郎(ファング)が持ってた指令書を引き渡した。

そして、約束の金貨1000枚も、きっちりゲット!

ホクホク顔のウチ。


「さてと。リベルタでのミッションも、これで一段落かな?」


情報屋の兄ちゃんが言ってた、「蛇の目の大物」とか「地方貴族」とか、まだ気になることはあるけど…。

とりあえず、アルからの次の指示を待つしかないか。


港町リベルタの青い空を見上げながら、ウチは、これから始まるであろう、さらなる面倒事(と、金儲けのチャンス)に、ちょっとだけ期待するのだった。

まあ、何が来ても、ウチなら余裕っしょ!

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