YASUとの再会は、予想より早かった。
あの日、火力バカうさぎとして彼の攻撃を止めてから三日。再び草原エリアに姿を見せた彼を、私は森の影から静かに見つめていた。
ノアのようなプレイヤーが、また一人──リストに載っている人物──と接触しようとしている。私はその間に滑り込むようにしてYASUの前に跳び出した。
うさぎの姿で。
「また……お前か」
剣の柄に手をかけながら、YASUが眉をひそめる。
「今度こそ、邪魔はさせない」
そう言って、私に向かって剣を振るおうとしたその時、私は先に動いた。
ぴょん、と跳躍。すれ違いざまに空気を裂く風圧だけを与える。威嚇だった。
「待って。話をしに来たの」
YASUの剣先が止まる。
「話……?」
「あなたが狙っているプレイヤーたち。彼らは、リアルマネートレードをしてると睨んでる。でも、証拠もない。なのに、あなたは次々にキルしてる」
「証拠がないから、キルで制裁してる」
YASUの声は低かった。
「このゲームの秩序が崩れたのは、RMTのせいだ。レア装備が金で買えるなら、努力の意味がなくなる」
「それは分かる。でも、あなたの正義って、誰かを犠牲にして成り立ってる」
「じゃあ、何もせずに見過ごすのが正義か?」
YASUの目には、本気の怒りと、焦りと、悲しみが混じっていた。
「俺の親友は、このゲームを楽しんでた。でも、RMTの連中に騙されて、アイテムを奪われて、ログインしなくなった。現実でまで、引きこもった」
私は黙った。
彼の正義は、私情から始まった。でも、それだけじゃない。彼なりの「ユグドラシル・オンライン」を守るための闘いだった。
「だったら、正面から訴えかければいい。ルールの中で、できることを──」
「甘いよ」
YASUが一歩踏み出す。剣が月明かりを反射する。
「運営は動かない。だから、俺がやる。制裁を。俺が、このゲームの秩序になる」
「それじゃ、あなたが壊す側になってる」
火花のように、言葉がぶつかり合った。
「なら……その壊れかけの秩序を、力で止めてみろよ。うさぎ」
その挑発に、私は無言で首を振った。
「いいえ。私が剣士に戻る時、それが答えになる」
次の戦いは、火力バカうさぎではなく、火力バカ剣士の出番だ。