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美咲は日に日に強くなる腹部の痛みに耐えながら、自宅のベッドに横たわっている。
体調の悪さが続き、大学へもほとんど行けなくなっていた。
常に痛みつづけるわけではなく、小康状態も挟むのが救いだった。
この日、美咲は昼過ぎから夕方頃まで眠っていた。
そして夕方、目が覚めて一番に思った事はやはりあの手紙だ。
幸い腹痛は余りない。
ずくんずくんとした鈍痛はあるものの、動けないというほどでもなかった。
美咲はおそるおそる外の郵便受けを覗きにいくと──あった。
(やっぱり……)
この時にはもう美咲は手紙に恐怖心すら抱いていた。
封筒を取り出し、また差出人の名前を確認する。
『さいとう さくら』
封を開ける手が震えた。
──
『おかあさんへ
きょうもさくらはげんきにしています。 おとうさんはずっとおこっています。 さくらはまた、ごはんをたべられませんでした。
おとうさんがおこったとき、さくらはめをとじます。 めをとじると、しらないおへやがみえます。 せまいおへやで、ほんがいっぱいならんでいます。 おんなのひとがねむっています。ときどきつかれたかおをして、おなかをおさえています。
あのひとはだれですか? おかあさんのおともだちですか?
それともおかあさんですか?
こっちをむいてくれたらいいのに。
さくらはまたてがみをかきます。 さくらより』
──
(お腹?)
美咲は手紙を読みながら、奇妙な違和感を覚えた。 自分の姿が頭をよぎったが、すぐにそれを振り払う。
「偶然よね……」
しかし、不思議な不安感は消えなかった。 美咲は手紙をそっと引き出しにしまうと、再びベッドへと倒れ込んだ。