◆
美咲は手紙を握りしめたまま、郵便受けの前で呆然と立ち尽くしていた。
(これを私が投函したっていうの? あの時みたいに──)
膝ががくがくと震える。
恐怖と混乱で息が苦しい。
しかし美咲は、この手紙を中身も見ずに捨てるという選択をどうしてもすることができなかった。
ゆっくりと部屋へと戻り、震える手で封筒の封を切る。
恐る恐る開いた手紙には、乱れた筆跡で文字が踊っていた。
──
『おかあさんへ
きょうはとてもうれしいひです。 やっと、やっと、あいにいけます。 おかあさんにやっとあえます。
おかあさん、すぐいくからね。 おかあさん、まっててね。 こんどはさくらをおいていかないでね。 ぜったいにおいていかないでね。 さくらはずっとずっとおかあさんといっしょです』
──
そこまで読んだ瞬間、美咲の喉からうめき声が漏れた。
「うっ……!」
手で口元を押さえる。
急激な吐き気が込み上げてきてのだ。
床に倒れ込み、体を丸めて吐き気に耐えようとする。
しかし次の瞬間、これまで経験したことのないような激痛が腹部を襲った。
「あ……あ゛っ!」
仰向けになり、腹を両手で押さえる美咲だが、自分のはだけた腹部を見た時に小さく悲鳴をあげた。
「ひっ……!?」
腹がまるで生き物でもいるかのようにぼこり、ぼこりと奇妙に蠕動している。
「いやぁッ! やだッ、やだぁぁ!!」
半狂乱になった美咲は、痛みと恐怖に耐えながら、スマホを掴んで必死に119へと電話をかけようとした。
しかしその瞬間、腹が内側から破裂しそうな痛みに襲われ、スマホを取り落としてしまう。
「うぁああああッ!」
見る間に美咲の腹部が風船のように膨らみ始める。
腰回りの何倍にも肥大化し、服を押し上げ。
美咲は呼吸すら困難になり、喉からはか細いうめき声しか出ない。
「あ゙……あ゙ァ……」
それでも必死に指先を伸ばし、床に転がったスマホを掴もうとする。
しかし、腹部が更に急激に膨張し、激しい激痛が襲った瞬間、美咲の口から濁った悲鳴が漏れた。
「あ゙ッ……!」
意識が薄れ、視界が急激に闇に覆われていく。
そして意識を失う直前、美咲の耳元ではっきりと声が聞こえた。
──『お゙がぁざ、ん』