僕らは基地を一望できる場所の物陰にテントを張り、車は近くの洞窟に一時的に隠すことにした。
蔦を巻いて土を被せ、しばらく見つからないように念入りにカモフラージュを施した。
そして次に、基地の近くに行ってみることにした。
「そろそろ物音に気を付けていくよ」
と僕が言うと、背後で中村が「分かった」と小声で囁いた。
雑木林を抜け、鬱蒼とした傾斜をうまく渡って基地の正門付近へやって来た。
見張りが二人。予想していた通りあちらも人手が足りていないらしく、モリの中を巡回する人員はいないようだった。
「……入るなら、あそこからだね」
「おい、村瀬」
僕が葉っぱを右手でどけて呟くと、左背後で中村が僕を呼んだ。
「どうしたの?」
「ここ、なんか埋まってるぞ」
僕は何だか嫌な予感がしつつ近づくと、それは想定していたものではなかった。
中村が警戒しながら掘り返すとそこには白い紙きれが埋まっており『黄色いテープ』とだけ直筆で書かれていた。
「どういうことだ?」
僕らはその文面を何度か見てから、ふいに自分らが歩いて来た傾斜の木に黄色いテープが巻きつけてあったことを思い出した。
僕らは一度来た道を戻り、黄色いテープを探すと、近づかなければ目立たない場所にそれはぽつんと現れた。
何の変哲もない木だったが、やはりその黄色いテープが巻かれた木の根元に、何かが埋まっている痕跡があった。
掘り起こすと、中にはジップロックに入った『無線機』と、紙切れが入っていた。
『これを見つけた者がいるなら三度、無線を入れて欲しい。そうすればその次の日、私は基地の玄関から武器を持たずにモリへ入る。もし信用できるなら、私と合流してくれないか』
「これは……」
文面から考察するにこのメモを残したのは基地内部の人間である。
「何だか胡散臭いなぁ」と中村が息を落とすと、ふいにメモの裏側で文字が透けた気がした。
僕はメモを裏返すと、そこには一つの名称が残されていた。
その名称を見て僕は最初ぴんとこなかったが、中村は一気に血の気を引いて「嘘だろ」とこぼしていた。
――『長谷川』と裏面には残されていたのだ。