ショッピングモールに到着した俺達は早速中を回り始める。館内は俺達のような制服姿の中高生や恐らく大学生と思わしき人々、主婦など様々であり幅広い層の人がいた。
「隣町ですけどやっばりうちの制服姿の学生も結構いますね」
「ここが私達の学校から一番アクセスしやすい場所だからそうなるよな」
俺達の街にある大きなショッピングモールは学校からかなり遠くアクセスも悪いため敬遠されている。だから隣町であるにも関わらず皆んなこちらに来るというわけだ。
ちなみに駅前が再開発されて新しいショッピングモールが出来てからは皆んなそっちに流れる事になるのは言うまもない。
「それでどこから見ます?」
「ひとまずおもちゃ売り場に行こうと思うのだがどうだ?」
「ここのショッピングモールなら種類も豊富ですし、それで良いと思います」
「よし、そうと決まれば早速行こうか」
ひとまず目的地が決まったため俺達はおもちゃ売り場に向かって歩き始める。十年間の間にテナントは結構入れ替わっていたがおもちゃ売り場は未来でも変わっていなかったため場所に関しては問題ない。
「入学してからそろそろ一週間経つ頃とは思うが、有翔はクラスに上手く馴染めているか?」
「そうですね、中学時代に仲が良かった奴がたまたま同じクラスだった事もあってその辺りは比較的上手くいってます」
現在は島崎を中心としたグループに所属しているが、前世では特に関わりがなかったクラスメイト達とも交流していたりする。元々はコミュ障気味で人見知りな俺だったが大学生や社会人の頃の経験のおかげでその辺りの弱点は完全に克服した。
特に俺の入社したブラック企業では入社半年後から膨大なノルマとともに飛び込み営業をさせられ、数字が取れなければ容赦無く上司から詰められまくったため死ぬ気でコミュ障を克服するしかなかったのだ。
それが原因でブラックな労働環境で生き残ってしまい、昇進までしてしまったせいで過労死したため結果的には良かったと言えないが。
「それは良かった、クラスで友達がいないと中々しんどいからな」
「確かにぼっちになるときついですもんね」
「ああ、あれは精神的に結構くる」
そう口にした入奈は忌々しそうな表情を浮かべていた。そう言えば入奈ってぼっち気質なところがあったよな。確か大学時代も入奈は一人で講義を受けていたような気がするし。
そういう俺も大学に入学したばかりの頃はぼっちの時期があったため一応気持ちは分かる。社会人になってからはぼっちなんてどうでも良くなり気にならなくなったが。
「今は男女関係なく仲の良いクラスメイトがいるので割と学校生活は今のところ割と充実してます」
俺は特に何も考えずそう発言した。それに対して入奈も普通に会話のボールを返してくると思っていたが予想に反して何も返ってこない。
一体どうしたのだろうと思って入奈の方を見ると顔から表情という表情が完全に消え失せていた。その異様な雰囲気に俺はつい圧倒されてしまう。
「そうか、有翔は
何故かは分からないが入奈は凄まじく不機嫌そうに見えた。前世では恋人同士だったため入奈の地雷ポイントは何となく分かる。だが今回に関しては何が原因なのか全く分からない。
「……おっとすまない、どうやら自分の世界に入ってしまっていたようだ」
そう口にした入奈は普段のテンションに戻っていた。まるでさっきの異様な雰囲気が嘘のようであり、夢でも見ていたのではないかと思うほどだ。
「私にはさっきみたいについつい自分の世界に入ってしまう癖があるんだ、深い意味は無いから気にしないでくれ」
「分かりました」
どう考えても深い意味があったとしか思えなかったが怖かったのでそこは突っ込まなかった。そもそも前世ではそんな癖なんて無かったと思うんだが。
いや、でも前世では大学時代になるまで付き合いが無かった入奈と高校一年生の今の時点でこうやって関わっているわけだし全てが同じではないのかもしれない。
いや、もしくは俺という本来は存在しない異物がこの時代に混入した事によって生じたタイムパラドックスの可能性も考えられる。
まあ、俺としてはブラック企業に入社して過労死するという最低最悪の未来が避けられるのであれば全然構わないが。ただ入奈に関しては注意が必要な気がする。上手く言葉に言い表せないが前世とは決定的に何かが違う。