「………」
ただ、見慣れない街中を歩く。
「俺は…誰なんだ…」
自らの名前も思い出せない。この都市の名も…目的も。
ただ、この都市に何かがある…そう告げてくるのは傷を負った左目だ。
「やぁ。キミが例の隻眼クンかな?」
人目の少ない路地裏を歩いていたはずの俺の前にいつの間にか立っていた男。
「敵か…」
「あ~…敵じゃないよ~って言っても信用してくれないパターン?」
「敵じゃないならなんで立ちふさがる」
「キミのその眼…美しいと思ってね」
「つぶれた目が美しい…か」
どうやらとんだ異常者につかまったらしい。
「いやいや…もう片方の眼さ。その眼…君の種族は神だろう?」
「神…?」
「ああそうさ。ここは多くの種族が住まう町。神がいてもおかしくない。なにせ今この都市を統括している
目の前の男はさらにさまざまな情報を喋る。
「《神性眼》それが君の眼の名前さ」
「この眼は特別なのか?」
右眼を抑える
「ああ特別さ!なんたってその眼には能力を付与できるからね」
「能力…?」
「ああそうさ能力!オーラと呼ばれる動力源を糧に発動できる能力という力を眼に付与できるんだ…神性眼にしか付与できない能力もあるし、付与した能力はオーラの消費が少なく済むというメリットもある」
「なんでそんなものを俺が」
「さぁね…君の事なんて知らないよ」
男はにやりとわらい上を見上げる。俺もつられ視線を上に向ける。
「キミ…空を見たことはあるかい?」
「空…?」
「ああ…青くて白い雲が浮かんでいてきれいらしい」
俺の視界には黒くすさんだ景色しか入ってこない。
「おっと…僕はそろそろ行かなくちゃならない。またいつかキミと会えることを楽しみにしてるよ」
男はそう残した刹那、消えた。
代わりに聞こえてきたのは、サイレンの音だった。