キッコの街に常駐しているアレフという領主への窓口担当と詰所で会った俺とミミは執務室に案内される。さあ、ここから俺が診療所を開設できるかどうかのプレゼンの時だ。
執務室にはソファーがあり、アレフさんが俺達に座るよう促す。
「座りたまえ」
「はい」
アレフさんに促されるまま俺とミミはソファーに座ると、アレフさんが口を開く。
「早速だが、まずは君の名を聞こうか?」
「はい、私はユーイチ・ミヤシタと申します」
「ユーイチ・ミヤシタか、ミヤシタ殿はこの街でいかなる事業を始めるおつもりなのかな?」
アレフさんがそう俺に尋ねると俺はプレゼン資料を取り出し、説明を開始する。
「私は診療所というものを開設したいと思っております」
「シンリョウジョ?聞いたことのない言葉だがどういったものなのかね?」
アレフさんが俺に尋ねるとミミが説明に加わる。
「私が説明いたします、申し遅れました私は王都で聖女見習いをしているミミと申します」
「聖女見習いのあなたは確かこの街で活動をすると話は聞いているが、ミヤシタ殿も関係しているのか?」
「はい、実は……」
ミミは先日ダンカンさんが怪物との戦いで大怪我を負い、自らその治療を行ったが、後遺症が残った事、そしてその後遺症を俺がスキル:
「なんと、だがにわかには信じ難い話だな」
「間違いありません、それにユーイチ様の診療所の開設を望んで改装のお手伝いをしてくださった方も多くいました」
ミミが色々俺の為に熱弁してくれている、俺も今こそ渾身の資料を見せる時だ。
「こちらをご覧ください、こちらの資料をお読みいただければきっと領主様もお考えになってくださるはずです」
「拝見しよう……」
そう言ってアレフさんは俺が作成したプレゼン資料を無表情かつ無言で読んでいる。いやあこういう経験初めてだから緊張するなあ。もしダメだと言われたらその瞬間俺は異世界で生きていく為に別の仕事に就く必要がある。それも覚悟しないとな。
「なるほど、街の者達の生活、そして我らが領内の産業の事にまで目が行き届いたうえでの事業か……」
「それで、いかがでしょうか?」
「まずは領主様に君が書いたこの文を届けよう、今から送れば明日には届く。早ければ2日後には君に返答ができる」
「それじゃあお願いします」
俺がアレフさんに懇願するとアレフさんが返答をする。
「もう帰って良いぞ。ミミ殿、あなたの借家に兵を呼びに行かせるから、その際にミヤシタ殿にも伝えてくれ」
「はい、分かりました」
「今日はお話を聞いていただき、ありがとうございました」
とりあえず第1段階はクリアしたな、あとは領主様の返事を待つだけだ。