ビルディス国王、ダリアス陛下と早速案内されたコーロの領主、バートン氏の屋敷の一室で会談を始めようという時に王様は俺が異世界人ではないかと言い放ったのだ。
「ゴルより聞いた話にお前が治癒魔法で治せぬ領域、後遺症と呼んでいるそうだがその領域をスキルで治癒しているそうだな?」
「確かにそうですが、それを異世界人とする根拠はなんですか?」
「何もそれだけではない、お前がリハビリという概念について書き記した本を読んだのだがいくつか違和感があった」
「違和感?ですか」
俺の本にあった違和感?本来のリハビリ専門書には少なからず専門用語があり、それに対する注釈もある。だが俺は可能な限り理解しやすい言葉に置き換え、多少は注釈も書いたが、それに何の違和感があるというんだ。
「まずは文字だな、文字そのものは読めたが、文字の形にどうもこの国のものが書きそうにない妙な癖字が多かったな」
はっ!そうか、言葉そのものは理解したが、この国の字の書き方は結局いまだに身につけていない、と言うより筆跡を変えるというのは至難の業だ。
だから俺の場合、正確性を重視して一文一文がとても硬く感じたのかもしれない。
印刷したといってもパソコンみたいな文字ではなく手書きだから俺の癖字がそのまま印刷されるわけだ。
だが、この王様の発言には俺にも疑問が浮かんだ。一応、俺は仲間達や、ザリアンさんとゴルさん以外には異世界人という事は伏せてある。それでも教本はもちろん、普段の診断書の文字も異国の者が書いた以上の感想はなかった。
つまり、単に癖字というだけでは俺を異世界人と断じるのはいくらなんでも無理があるはずだ。
「あの、本当に文字でだけで判断したんですか?単に異国の人間が書けば硬く感じる事もあるはずです」
「……、ふう、余が感じた違和感の正体。それはこれにある」
そう言って王様は俺にある本を見せた。その本の文字を目にすると俺はある衝撃を受けた。
「こ、これは⁉」
「その驚きよう、どうやらその文字に見覚えがあるようだな。そしてお前の癖字の形はその文字の書き方に妙にそっくりであったのだ」
この本は間違いない。日本語で書かれた本だ。そして驚く俺を尻目に王様は更なる事実を告げる。
「外交をするにあたり、当然余も各国の文字や言葉を習うが、そのような文字がある国は聞いた事がない」
「確かに、これは自分の世界の文字で書かれた本です」
「やっと自らを異世界人と認めたか」
「ですが、こちらからも聞きたい事があります。どうして王様が日本語で書かれた本を持っているんですか?」
日本語で書かれた本、これが意味するのはもしかしたら……。