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不意の事故

 ミミがまさか王様の妹さんの侍女でしかも王様のお妃様候補だったなんて、今日一番の驚きだな。ん?待てよ、侍女はともかく、お妃候補ならなぜザリアンさんやゴルさんはマカマカ教団に入団するまでミミの事を知らなかったんだろう。


「あの、ミミが王様のお妃候補であったのなら、何故ザリアン氏やゴル氏は彼女の事を知らなかったんですか?」

「あの時はあくまで父上の推薦に過ぎず、我ら親族内での話でとどまっていたからな」

「そうだったんですか」

「あくまでも段階を踏んだうえでせめて彼女を治癒士に任命し、その後折を見て公表するつもりだったが……」


 俺の疑問に詳しく答えてくれる王様だったが、徐々に表情が暗くなり、遂にミミが侍女を辞めるきっかけになった出来事について話してくれた。


「あれは4年前、親族で王国内の保養地に行った時の事だ」


 保養地、要するにリゾートに適した場所なんだな、家族で楽しいちょっとした旅行の最中に一体何があったんだ?


「久しぶりに親族揃っての休みで妹も楽しんでおり、ミミも侍女として妹について同行していたのだ」


 休みとはいえ、王族に何かあってはいけないからこういう場合でも護衛やお世話係はやっぱり同行するんだよな。


「2日目に妹が森で遊びたいと希望したのでミミと数名護衛をつけておけば問題ないと思っておったが、まさかあんな事になるとは……」

「一体何があったんですか?」

「急な天候の変動により大雨が降って来たのだ、妹が心配になり、残りの者達に妹達に戻ってくるよう伝えてもらうようにしたのだが……」


 突然の大雨、そして妹さんとミミ達が向かった先は森の中、まさか……。


「雨で森を抜けた先にあった川が増水し、妹が川に流されてしまったのだ」

「そんな……」

「川下で妹は見つかったが、既に……」


 王様の妹さんはその事件に亡くなっていたのか、話を聞いているだけだがなんかやりきれないな。


「ミミは何とか妹の手を引っ張り助けようとしたが、力が及ばず妹は流されてしまい、その事にとても責任を感じていた」

「でも、それはミミの責任ではなく不慮の事故です、むしろ最後まで妹さんを助けようとしていました」

「私も、両親もそう思っていた。だが両親ともに突然の妹の死の衝撃で心身ともに弱っていき、王宮に帰還後まもなく……」

「そんな……」


 妹さんの死が引き金にご両親まで……、この人がこんなに若く王様を継いだ理由はそういう事だったのか。


「両親と妹の死を悲しむ暇もなく、即位の儀を私は行わなければいけなかった。そして王となった私はまず最初にをしなくてはいけなくなったのだ」


 ある決断、まさか……。

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