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会談の終わり

 ミミの過去を聞き、少し戸惑いながらも王様から俺と一緒に診療所で活動をし続ける事が少しは悲しみを和らげているのではないかと話してくれて、今まで通り、ミミに接する事ができるよう心掛ける事を決意し、今後の診療所関係の事を王様と話し、話がまとまると王様が俺に言い放った。


「とりあえず、講師の件はまたいずれ返答を聞かせてもらう。入院施設の件は文にはなるがバートンと連絡を取り合い密に進めていこう」

「ありがとうございます」

「それから今後はゴルよりお前の診療所での活動をザリアンだけではなく余にも報告するよう命じてある。報告をもとに治癒士の養成学校の設立のヒントにするためにな」

「そこまで考えているんですか!」


 俺が王様の考えに驚いていると更に度肝をぬくような話をしてきた。


「そうだ。これは内密に進めるが、ギベルトという者の工房とメルという者の料理店に民衆に成りすました部下を向かわせるつもりだ」

「抜き打ち視察のようなものですか?」

「まあ、そういう事だ」


 すごいな、まさかギベルトやメルの事まで調べようとしているなんて、いろいろ手を打ってくるな。


「それでは、話は終わりだな。バートンに挨拶し、王宮へと戻る」

「え?もう帰るんですか?お泊りにならないんですか?」

「今回の会談も部下にかなり無理を通したからな、早めに戻ってたまった仕事をしなければ小言がうるさいからな」


 無理を通した分、その仕事はやらないといけないんだな。王様とはいってもまだ若いからベテランの部下の人からなにかと小言も言われるんだな。


 そう考えている内に王様は部屋の扉越しに護衛の人に声をかけた。


「ご苦労であった、扉を開けて良いぞ」

「はっ!」

「ではバートンの部屋へとゆくぞ!」

「はっ!」


 そう言って領主様の部屋に行く途中で執事長のバンさんが俺達に気付いて話しかけてくる。


「陛下!ミヤシタ様!お話はもう済まされたのですね」

「うむ!これよりバートンに挨拶し、余は王宮へ戻ろうと思う」

「それでしたらお呼びして参りますので、ごゆっくりお過ごしください」

「いや、余の都合でバートンの屋敷を借りた以上こちらから礼は尽くさねばな」


 こういう気遣いも無理を言ったからというのもあるだろうし、領主様は地方とはいえ領地を治めている歴が長いからそのあたりも王様なりに礼儀を尽くしているつもりなんだろうな。


 王様の言葉を受け、バンさんが領主様の部屋まで俺達を案内してくれた。とりあえず屋敷での会談は一区切りだな。

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