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診療所へと

 ダリアス陛下との会談を終え、王様が領主様の屋敷をあとにすると、領主様が早速俺に尋ねてくる。


「して、ミヤシタ殿よ、会談でどのような話をしたか聞かせてもらえぬか」

「はい、まずは……」


 とりあえず王様と話した内容で領主様の耳に入れておいた方がいい話としてはまずは入院施設の建設の事だな。詳しい話はいつか王様から来るだろうけど、用地と予算の確保を望んでいた事を話した。他はまだ不透明な講師の話と、ギベルトやメルの元に抜き打ち視察をする事、転移者やミミの過去の事は伏せていた方がいいな。


「そうか、陛下が具体的なお話をお届けになったら私の方からも君に知らせよう」

「はい、お願いします」

「それで、ミヤシタ殿は泊っていくのかね?」

「ああ、陛下がお帰りになったので、自分も今日は帰って、明日から予定通り診療所を始められるようにします」


 俺が王様が帰ったから、自分も早めに帰って診療所の準備がしたい事を告げると領主様がバンさんに声をかける。


「バンよ、馬車の手配を!」

「はい」

「とりあえず馬車が来るまではゆっくりしていきたまえ」

「ありがとうございます」


 馬車が来るまでの間、しばし俺は休憩し、お茶とお菓子をごちそうになった。王様が颯爽と帰ったから自分だけおもてなしされるのも悪い気がするな。


 そう考えながらしばらくしていると屋敷の外からメイドさんが戻って来て、俺に声をかける。


「ミヤシタ様、馬車が到着しました」

「来たんですね、それじゃあ領主様、皆さんお屋敷を使わせていただきありがとうございました」

「陛下のご命令であったからな、それにさっきの話は我らにとっても悪い話ではない」

「それなら良かったです」


 俺が領主様の話に安心していると、バンさんが馬車までの案内をかってでる。


「さあ、ミヤシタ様、こちらに」

「はい」


 バンさんの案内で馬車まで行き、馬車に乗り込むと馬車の御者さんが俺に声をかける。


「ユーイチ・ミヤシタさんですよね、キッコの街のミヤシタ・リハビリ・クリニックまでと聞いていますのでそこまでお連れします」

「あ、はいありがとうございます」


 俺が御者さんにお礼を言うと、続けて俺は領主様達にも帰りの挨拶をした。


「それでは失礼しました」


 俺がその言葉を言うと領主様は軽くうなづき、バンさんやメイドさん達は深々と頭を下げて、馬車は出発し、キッコの街を目指していくのであった。


 明日からもまた診療所での診断の日々が始まる。いろいろ話は聞いたが、とりあえずは今まで通りに診療をこなさないとな。

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