目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報

帰ってくると

 ビルディス国王、ダリアス陛下との会談を終えて、王様がコーロ地方領主のバートン氏の屋敷をあとにしてから俺も少し時間を置き、屋敷をあとにした。


 馬車に乗り、数時間が経過するとキッコの街にある俺の診療所の前まで到着した。


「お客さん、ここですよねあなたの診療所ってのは?」

「はい、ありがとうございます」

「それじゃあ私の仕事はここまでなんで失礼します」


 そう言って御者さんは馬車と共に俺の前から姿を消していった。1日も離れていたわけではないのになんか懐かしいと思いながらも俺は扉を開けようとするが早速違和感に気付く。


「あれ?開いている、カギを閉め忘れたのか?」


 カギをしっかり閉めて出たと思っていたのでカギがかかってないことに違和感を覚えつつも、俺が真っすぐダイニングに進むとそこで俺は思わぬ光景を目にした。


「ミーザ、それにメル!どうして2人がダイニングとキッチンに⁉っていうかその手に持っているのって」

「お帰りユーイチ、っていうか今日中に帰ってこれたんだ!ビックリしたよ」

「ビックリしたのは俺もだ!一体どうしたんだ?」


 俺がミーザに対して疑問をぶつけているとミーザに代わってメルが疑問に答えた。


「ふふふ、その疑問には私が代わって答えまーす」

「メル、そうだな何で手にほうきや雑巾を持っているのか気になるな」

「あのね、実は私達ミミちゃんにお願いされてね、少しだけお店や工房を抜けてきたの」

「工房⁉って事はまさか……」


 ミミがお願いしていた事にも驚いたが、工房って単語を聞くと当然もいるって事を俺は察して、俺に先んじてメルが話してくれた。


「そうだよギベルト君も来てくれたの。多分今はミミちゃんと診察室の掃除をしてくれているんじゃないかな」

「診察室の掃除か」


 診察室の様子を見に行こうとすると不意に声がしたので、声の方向に俺は身体を向けた。


「ユーイチ様!」

「ユーイチ!まさか今日帰ってくるなんて」


 声の主はミミとギベルトであり、2人が驚いていたので俺も事情を話した。


「ああ、やっぱり診療所の事が気になったから領主様に事情を話して早めに帰って来たんだ」

「そうだったんですか、私達は明日ユーイチ様がいらっしゃらなくても診療所を開けるように準備をしていたんです」


 さすがに王様と話した事は口にはできなかったから、そこは伏せたけど。


 もしかしたら泊るかもしれないとは話したような気がするし、診療所を最悪明日休みでも仕方ないと思っていたがミミは診療所をしっかりするつもりでいたんだな。


 もしかしてミミもあえて忙しくしようと思っていたのか、王様のように。

この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?