ミミやミーザ達が俺の留守の間に診療所の掃除や俺がいなくても診療所が開けるよう準備してくれたので、そのお礼とねぎらいをするという意味で俺は夕食をみんなにごちそうすると言って、ようやく目的の店にたどり着いた。
「あ、ここだここだ!早く入ろうよ」
「まあ、そう慌てんなよ。ゆっくり入ろう」
俺がそう言うと全員がゆっくりと順番に入っていき、店員より5人座れるテーブルに案内される。
テーブルに座ってとりあえず全員でメニューを確認し、まず俺が言葉を発する。
「とりあえず豚の丸焼きは1つを切り分けて食べるようだし、1つ頼むな」
「うんお願いね」
「ミーザ、欲張って1人で食べ過ぎるなよ」
「もう、ちゃんとみんなの分も残すよ。っていうかみんなも遠慮なく食べてよ」
あれ、このセリフって俺がいうやつだよな?そう思ったから俺は思わずミーザにツッコミを入れた。
「ごちそうするのは俺だからそのセリフ言うのって本当は俺じゃないのか?」
「そうなの?まあいいじゃん」
なんか軽く流された気がするがまあいいや、そう考えていると他のみんなも食べたい料理を言ってきた。
「豚の丸焼きはみんなでって事なら個別でも頼んだ方がいいんじゃないか?俺はパスタも頼もうと思うし、あとうまそうな酒は……」
「私はなんとなく豚だけでお腹いっぱいになりそうだしいいわ」
「私もです」
「そっか、じゃあ俺は……」
残りのメニューも話してまとまると店員を呼んで注文をした。
そして料理を待っている間にちょっとした質問がメルから来た。
「ね、ユーイチ君領主様とのお話ってどんな事を話したの?」
「とりあえず、ゴルさんが領主様に入院施設の必要性を訴えてくれたらしくて、開発用地と予算の確保を考えてくれると言っていたな」
「そうなんだ、すごいね」
抜き打ち視察の事はとりあえず伏せておくとして、あの話くらいならしてもいいだろう。
「ギベルト、メル実は領主様にお願いされてリハビリ器具の見本とリハビリ中の食事メニューのレシピを王都の専門家に送りたいって事で領主様に預ける事になったんだ」
「なんだって?」
「私はいいけど、それをして何を考えているの?」
「王都でも再現できないかをお願いしてみるってさ、もしかしたらギベルトやメルにも何か聞きに来るかもな」
本当は抜き打ち視察だけど、まあこれくらいなら教えておいてもいいだろう。2人の技術もあって成り立っている事でもあるし。
だけど2人だけにいつまでも負担を強いらずに器具や食事を作ってくれる人を増やすのは必要だからな。