頼んだメニューがテーブルに到着し、飲み物も届いたので、とりあえずみんな食べ始め飲み始めた。
あ、今日は乾杯の音頭はなかったな。俺が話す前にみんなおもむろに食べ始めたからな。
まあいいや、話が少し通っただけでまだ新しい事を始めるわけではないからな。
俺も食べ始めると今度はギベルトから質問が飛び込んできた。
「しかし王都の専門家に器具やレシピを再現できるようになったら俺達はもうお前のリハビリの手伝いには必要ないんじゃないのか?」
「いや、たとえそれらが成功しても2人はこの街の人達の為に器具や料理はレシピを作って欲しいと思っている」
「
「メル、何を言っているんだ?」
メルがいきなり意味深な発言をしたし、まさか俺の隠していたことがばれたのか?
「確かにユーイチ君が頑張っているおかげで元気になって生活している人も多いと思うんだけど、領主様が王都の専門家に器具の見本やレシピを見せて欲しいってよく考えたらそんなに簡単に言わないわよね」
「まあ、だから俺もそうして欲しいって言われたときは驚いたよ」
「もしかしたらユーイチ君……、王都でも診療所をやってもらいたいと思われているんじゃないの?」
「え?」
メルにばれたわけではないが、しかしある意味では間違いではないな。王様からリハビリ士の育成の為の学校の講師になって欲しいとは言われているし、その話を受けたら王都に行く事にはなるな。
微妙に外れたが意外とメルは鋭いな。
「そんな話はなかったよ。でも、もしそうなっても2人にはこの街で器具やリハビリ中の食事メニューは作って欲しいな」
「だけどなユーイチ、そもそも俺はお前を手伝う為にお前の依頼を受けているんだし、お前がそこまで認められるくらいになったら俺の出る幕はないな」
「それじゃあお前も王都まで……」
「親父の遺した工房は放っておけねえし、王都で王族や貴族の顔色をうかがうのも俺の性にはあってねえしな」
診療所の話なく講師の話と打ち明けてもギベルトは同じ反応をしそうだな。そう思っているとメルも言葉を発した。
「私もそうだよ、ユーイチ君を手伝う為にリハビリ中のごはんを作っているのよ」
「メルもギベルトと同じ考えなのか?」
「王都までお母ちゃんを呼ぶのは大変だし、ユーイチ君が王都で診療所をやる頃にはきっとそのメニューも国中に広がっているわ」
ギベルトとメル、たとえミミが一人前の聖女になってもこの2人は力を貸し続けてくれると思っていたんだけど。