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ミミの一喝

 俺が王都の話をやたら口にしてメルにばれたかと思ったが、メルはもしかしたら俺が王都で診療所をやって欲しいと誘われているんじゃないかと勘違いし、結果ばれなかったが、講師の話を受けると必然王都に行く事にはなるだろう。


 ただもしそうなったらギベルトやメルは器具やリハビリ中の食事メニューはもう作らずこの街にとどまると話す。


 もちろん2人にも事情はあるし無理強いはできないが少し寂しくもあるな。そもそも俺が2人をあてにし過ぎたかもしれない、本業が別にある中での協力なんだからな。


 俺がその事を考えていると今度はミーザが俺に対して声をかける。


「ユーイチ、今回は領主様からその話はでなかったみたいだけど、もしいつかユーイチに王都での診療所の話が出てもあたしも一緒には行けないかな」

「ミーザ、やっぱりそうか……」

「うん、おっ母は元気になったといっても王都までの移動は大変だし、それにあたしもおっ母も王都の生活にはなじめそうにないかな」

「仕方ないよ、ミーザはお母さんの体調やお母さんとの生活が最優先だもんな」


 メルの指摘から思わぬ形でみんなの考えが聞こえたが、この空気をひっくり返す発言をミミがしたのであった。


「み、皆さん、どうなるかも分からない話で勝手にその暗くならないでくださいよ!」

「ミミ……」

「なんかいきなりお別れ会みたいな空気になっていましたし、今日はユーイチ様が私達の為にごちそうしてくれているのに、そんな空気を作っちゃ失礼ですよ!」


 お別れ会みたいな空気という言葉にハッとしたメルたちは順番に俺に謝罪をし始めた。


「ごめん、ユーイチ君。なんかいつもと少し様子が違ったから思わずあんな事を言っちゃって」

「俺もすまねえ、変な空気に当てらてちまったし、勝手にお前がすぐにいなくなると考えちまった」

「ミミの言う通りだ、勝手にあたし達で想像を膨らませて変な空気を作っちゃってごめん」


 王様の頼みとはいえ、隠し事をしているのは俺の方だからむしろ謝られるのは逆に辛い。


 だけどどうなるか分からない事に勝手に暗くなっていたのは俺だって同じだからな。


「気にするなよ、俺もはっきり言われたわけじゃないのに変な空気に呑まれてしまったからな」

「でもそれは私達のせいだし、ミミちゃんの言っている事の方が正しいよ」

「王都うんぬんよりも俺としては入院施設が最優先だしみんなもそのつもりで頑張って欲しいな」

「ユーイチ君がそう言うなら私も協力はし続けるわ」


 変な空気になったがミミのおかげで悪い空気は払しょくされたな。だけど俺があらゆる条件をクリアしたら王都の事は関係なく元の世界に戻るかもしれないからな。

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