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盛り上げると

 俺がもしかしたら王都で診療所を開くかもしれないというメルの想像から話は思わぬ方向に行くがミミの一喝でみんなが俺に謝罪をするが、そもそも隠し事を王様から頼まれているとはいえ、しているのは俺の方だし、謝らすのはなんか逆に申し訳ないな。


「まあ、今日は楽しむって決めたし!みんなどんどん食べて飲んでくれ」


 とりあえず俺としてはこう言うしかなかったし、とりあえず俺が率先して食べないとな。


「ミーザ、もしかしてこの豚の丸焼き食べないのか?俺が食べちゃうぞ」

「あ、待ってよユーイチ、食べるから許してよ」

「ははは、安心しろミーザの分まで食べたりしないから、どんどん食え」

「うん、食べるよ」


 少しおどかしてみたが、更に雰囲気を和やかにするにはこれがいいなって思ったからな。


「よし、俺も飲むか!」

「いいな!今日は俺も飲むか!」

「あんまり俺に付き合って無理しすぎるなよ」

「少しくらい平気だって、それに結構難しい話も聞かされたストレスもあるしな」


 実際は少しミミの過去の話を聞いて、若干ではあるが気分が落ち気味のところもある。ミミがあれほど辛い思いをしていたと考えると胸が痛くなる思いだからな。


 そういう意味ではギベルトと一緒に飲むのは少しの気晴らしだが酔ってタガが外れてうっかりしゃべらないようには気を付けなきゃだけどな。


 そう俺が考えているとメルがミミに声をかけている。


「ミミちゃんごめんね、楽しいはずのご飯なのに私達のせいで変な空気を作っちゃって」

「いえ、ユーイチ様が気になさっていなければ私が本来口にしなくても良かったはずなんですが、思わず大きな声を出してすいません」

「ううん、なんとなくだけどミミちゃんの気持ちも分かるから」

「私の気持ちですか?」


 どうやらメルはミミが大きな声を思わず出した理由を察しているようだし、俺が聞いていると分かっているうえでもミミに話すようだ。


「ユーイチ君が王都で診療所をやるかもっていうのは私の思い過ごしだったみたいだけど、でもそれ自体が実現する事はユーイチ君にとってもきっといい事だと思うの」

「私も実現すればよい事だと思います、それでリハビリの事が国中に広まるきっかけになるかもしれませんし」

「でもやっぱり私達にとっては複雑なの、私達の事情とはいえユーイチ君に力が貸せなくなるのも少し寂しいし、きっとミミちゃんもそう思ったから私達にそう言ったのかなって思って……」

「……メルさんのおっしゃるとおりかもしれません、そもそも私自身が修業期間が終われば王都に戻って正式な聖女になるのに、今のような時間が続けばとも思ったのも確かです」


 今のような時間が続けば……、それはきっと俺だって……。

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