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空白

後日談──────


溜息をついた翼は神を見つけ、瞬時にそこへ移動する。神使二人もそこにおり、間に流れる空気は一触即発のものとなっている。


「さぁ、マモンを倒したぞ。妹を返せ。」


手を伸ばす翼に神はにっこりと首を横にふった。


『無理!』


「神も悪魔も皆約束や契約は守りたくないらしい。」


剣を生成する翼に神使の二人は臨戦態勢を取る。だが、神は二人を制止する。


『さっきも言われてたけど、君は能力の使い方がなってないだけさ。』


「何が言いたい。」


『怠惰と傲慢、そして君の力があれば、光の速度を超える事なんて朝飯前なんだよ。』


「時間を巻き戻せるってか?バカ言うんじゃ……」


『本当さ。しかも、今僕らに干渉したから、このまま巻き戻せば、さっきの激戦は無かったことになったり、マモンが復活したりするけど、君の能力と使用され消えた魂はそのままだから、君はマモンを脅しながら妹を治療させる事ができる。』


翼は剣を落とし、その場で固まる。そして、数分の沈黙の後にやっと口が開いた。


「本当なのか?」


『神様は嘘ついて運命をネジ曲げたらいけないからね。僕は嘘はつかないよ。』


翼は恐る恐る自分の能力プラス傲慢の能力プラス怠惰の能力を使用し、全力で羽ばたいた。一回だけではない、何度も、何度も、大気圏へ出ると、地球の輪郭を見た翼は深呼吸し、そのまま地球とは逆に回り始める。何度も、何度も、1秒で地球を10周した。そして、時間を巻き戻すこと数時間。病院のあった丘は元に戻り、焼け野原となっていた街も何事も無かったかのように日常を迎えていた。


翼は病院の前で降り、急いで妹の病室へと走った。


何年戻ったかは分からない。


ただ、翼は妹の声がまた聞きたいそう願いながら羽ばたいた。


病室のドアを勢いよく開けると、ベッドで人影がピクリと跳ねる。


「もう、お兄ちゃん!いつもドアは優しく開けてって言ってるでしょ!?」


妹の声。


死にかけていた海の中で聞こえた翼を呼ぶ声。


「刃音……」


翼は名前を呼ぶとただ無言で妹に優しく抱き着く。妹はそんな兄に違和感を感じつつでも何だか懐かしい気分になり、抱き返す。


「どうしたの?何かあった?」


「何にもないよ。ただ、ちょっと寂しくなってさ。」


「なにそれ、変なお兄ちゃん。てか、なんか先週来た時よりも大人びたね。」


「気のせいだよ。それよりお兄ちゃん、病気を治せる方法を……」


そのあとのことは細かく言ってもつまらないので簡潔に。完全に無力化されたマモンを使い、願いを…刃音の身体を完治させた。少々訝しげな刃音は次の週の検査の時に担当医から完治を言い渡され、目を見開き喜んだ。そして、マモンの願いを叶える能力をお詫びとしてもう一度使い、妹のかかった病気の治療法を世界へ広めた。

そして翼は刃音とそして、七つの大罪達と世界の平和を守りながらも、それとなくいつも通りの日常を繰り広げていくのであった。


────────────


『というわけで今回の任務はこれにて終了~ですが、今回の二人の成績をまだ発表していませんので今回の~結果発表~』


「はぁ、最悪だ。マジで。」


「また利用されたなんて信じられない。」


神使二人は肩を落とす。以下、今回の二人の結果である。



布田 龍兎


能力半減制約を破った回数 計3回  +3

強欲の目的把握できなかったため   +1

制限時間内での任務完了       -1

召喚された大罪の有るべき場所への還魂+1

神へ愚痴              +10


合計 刑期+14億年



無田 皆無

能力半減を破った回数  計5回    +5

強欲の目的把握出来なかったため   +1

制限時間内の任務終了        -1

召喚された大罪の有るべき場所への還魂+10

神への愚痴             -2


合計 刑期+14億年


『以上だね。』


「愚痴マイナス2ってなんだよ!こいつ愚痴愚痴文句言ってたじゃねぇかよぉ!」


『ま、気分かな。仕事ぶりはいいけどその過程がちょっと残念って感じ。というわけで次からはもっと頑張ってください二人とも』


「くぅ!次は絶対にマイナス10億年とか出してやる。」


「そんな調子では無理だと思うがな?」


「お”?」


「ん”?」


『はい、喧嘩そこまで~今回は紆余曲折あったけど丸く大団円になったから文句言わない。』


「「ちっ!」」


二人は互いにそっぽを向く。その様子に神は少し微笑みながら、次の指示を出す。


『次の指示はね。とりあえず”待機”かな?』


「よし!休っみー」


「そうですか。それはありがたいことです。では。」


二人は背を向けると空白内の出口を見つけ、各々ドアを開け出ていった。


「あぁ、ゆっくりお休み。」


神は微笑み二人の背中を見送った。


カタラレヌ・クロニクル 序章 完

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