ぶつかり合うその視線は見ている周りの者が逃げることも、止めることもできないほどの迫力で、その場に誰もが指一本すらも動かせない状態である。銀色の魔族は爪を研ぎ、紫の戦士はその剣を構える。両者は隙を伺い一向に動かない。銀色の魔族、銀色の使徒教祖 ギンロ=シルヴァスが口を開く。
「来ないの?それじゃ、僕からいってもいいかい?」
優吾はその言葉に剣を構えてギンロの攻撃を受け止める体勢になるが、ギンロの声はなんと優吾の背後から聞こえてきた。
「遅いよ。」
優吾は息をする間もなく銀色の斬撃を受けその場で膝をついた。ギンロはボロボロの玲央を回収するとサソリとエファの方へ戻る。優吾はその様子を見て立ち上がり剣を構える。ギンロはLEOを二人に任せるとステップを踏んだ…かと思えば、優吾の目の前に移動する。優吾は爪を振りかざそうとしているギンロを目でとらえたと思い、剣を振り下ろしたがギンロはすでに攻撃を終わらせていた。
「遅い遅い…龍の鎧は僕と相性悪いよ。」
「くっそ……」
優吾は、剣を腕にかざし龍の鎧のモードを変え、ドラゴモードになる。ギンロは余裕の表情を崩さずに優吾へ迫る。優吾は、ギンロのその動きに追いつき攻撃を防ごうとしたが、ギンロは寸前で爪攻撃をやめ拳を固めて防御をしている優吾へ拳をぶつける。そのまま優吾は後ろへ下がりやがて防御していた腕が緩み工場内の壁へぶつかりそうになる。そして、優吾が視界にとらえたのはこちらに迫ってきているギンロだった。自分よりも強かったLEOを上回ったかと思ったが上には上がいた。優吾はかろうじて攻撃を防ぐが、ギンロの拳が優吾の防御をする腕よりも早く優吾の胴体へめり込む。そのまま劣化した廃工場の壁を突き抜け外へと飛び出た。
「こんな……俺は……」
「ハハッ…君、強くなったつもりかい?」
優吾はそのまま膝をつき白い鎧へ戻る。ギンロはそのまま足で優吾を押し倒し肩を踏みつける。優吾はギンロを睨みその足をどけようとするが、ギンロはそれを微笑みながら押さえつける。
「ほぉら…頑張ってみて……」
ギンロの踏みつける足に力が入る。優吾はその足を必死にどけようとするが、ギンロはそのまま優吾の肩を押さえつけて鎧にヒビを入れる。ギンロはそのまま優吾を押さえつけて鎧を砕き、優吾の肩が露出する。優吾の肩に鈍い痛みが伝わってくる。
「ぐっ…」
「さて、弱い者いじめも飽きてきたし、そろそろ回収しようかな……」
ギンロは優吾へ手を伸ばし、担ごうとする。だが、その背後から炎の矢が飛んでくる。背後へ視線を向けるとそこにいたのは次の矢を構える星々琉聖だった。
「
「星々、琉聖…。」
ギンロは先ほどよりも口角を上げ優吾を踏みつける足に力が入る。優吾はその力に耐えられずに声を出す。その声を聴いた星々はさらに殺気だつ。
「来てよ、このままじゃ死んじゃうよ?晴山優吾が……」
「その足を今すぐどけろ。」
ギンロが瞬きをした瞬間、星々はその距離を一気に詰める。その手には、紫色の槍が握られており、魔力があふれ出ていた。
「
赤い一閃がギンロに迫る。ギンロはその赤い閃光を受け止めながらしかし、星々の力が強いため、肩にその槍先を受けつつ優吾から足を放される。そのまま宙へ浮いたギンロは星々に押されながら廃工場の隣の廃工場倉庫の壁へ
「ハハッ……!次は君が相手してくれよ。星々」
「断る。僕は君と遊んでいるんじゃないんだよ……殺すぞ……?」
ギンロの口角はさらに上がる。星々はそんなギンロにかまけることなく、槍をしまい、優吾へ駆け寄る。
「優吾君!」
「琉聖さん。すみません。少し調子に乗りました……」
「それはそうと肩以外に怪我はないかい?」
優吾へ肩を回し、一緒に立ち上がると同時にギンロが突っ込んでくる。星々はギンロの方を睨み、魔法を使用する。
「
黄金の翼が星々の背中から生えるとギンロの攻撃を防ぐ。そのまま歩き星々はその場を移動するがギンロは攻撃を止めない。
「ほら、星々、遊ぼうよ!!」
攻撃を続けるギンロに星々は苛立ちしびれを切らした星々は
「
ゴルゴ―ンの首を狩ったペルセウスの武器ハルパーが星々の右手に握られており、ハルパーが青緑に光り曲線を描いた切っ先はギンロの首元へ素早く入り込む。ギンロはその切っ先を間一髪よけ再び星々へ視線を移すが、星々は次の魔法を発動させていた。
「
大きな鋏を持った星々はその大きな鋏を肩で持ちギンロへ向けて魔力を放出する。鋏から出てきた魔力の刃をギンロへ向けて身体を真ん中から切断する。が、ギンロはその攻撃すらも避ける。星々はギンロが避けた隙に再び
「こちら、星々。優吾君を無事救出した。ただ、ギンロ=シルヴァスから逃走しているため車から離れている……このまま本部の近くまで飛ぶからえっ……と……綾那ちゃんがいいか……綾那ちゃん、本部まで帰ってきてくれ。」
『了解。』
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星々を見上げるギンロは攻撃を仕掛けようとしたが、晴山への被害を考え攻撃姿勢を辞める。そして、砂埃をはらいながら待っているサソリとエファのもとへ移動する。
「困りますよ。教祖。ちゃんとしてください。」
「結局晴山優吾を逃してしまったな。どう言い訳する?」
「まぁ、いいんじゃない?LEOは死んでないんだし。このままもっとゆったりと行こうよ。」
サソリとエファは戦闘で満足しているギンロを見つめ、ため息をつきながらも廃工場を後にする。
35:了