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46:誰か

銀色の使徒三人が別々に暴れてそれぞれを追う形となった魔法術対策機関と優吾の面々はそれぞれの背中を追っている。捕まりそうで捕まらない距離。明らかにこれは罠だと皆気づいていたが優吾の第六感的な勘でギンロが他に誰かを貶めようとしているというので彩虹寺がそれを信じその「誰か」を先回りして助けるということになり今に至る。なので、銀色の使徒を追う魔法術対策機関と優吾達は決してギンロ達への攻撃をしない。しかし、相手に気づかれてるとまずいので優吾は一応形だけ追いかけることに徹している。


「さて、どんな奴が出てくるかな…」


「晴山、そういえばだがもし、もしだぞ?もし、ギンロたちが貶めようとしている相手が我々の敵に鳴るような奴だった場合どうする?」


「……えっ、ごめん考えてなかった……」


彩虹寺はスっ転びそうになったがなんとか体勢を持ち直し優吾を睨む。優吾は気まずそうな顔をして沈黙する。


「君はというやつは……惰性で生きているのか?」


「いやぁ、考えたことを実行したらどうなるんやろうなって…それ言ったらお前だって俺の案に乗ってきただろうが。」


「そ、それは否定できない…が、それよりもどうする?」


「どうって、とりあえず何があっても確保した方がいいだろう。」


「確保はいいが、相手に数がいた場合は?」


「ん~分からん。」


彩虹寺は「やはり惰性的だな」と言って前を見た。


────────────


魔法術対策機関 本部


黒影は本部の前で代表 遊馬 冬至へ連絡を取っていた。


『準備はいいかい?黒影。』

「問題ありません。このまま彼らを追います。」


星々と四夜華が話し合った合同特別班の件を冬至は耳に聞くと快く承諾したが、条件を一つ出される。冬至が出した条件。それは調査班 黒影を班長にして、班員を管理するというものだった。星々は机に寄りかかる冬至を見る。


「やはり成人の班長が良いですか。」


「もちろんだとも、副班長や班員にいる子や協力者の晴山くん達はまだまだ判断能力が低い。判断能力が低いからこそ、間違いを犯す。それを正すのが我々大人の役割だからね。黒影、頼んだよ。」


『了解しました。』


「でも、黒影さんって…」


「なに、問題ないさ。彼は研究者でありながら魔法と魔術のプロフェショナルでもあるからね。」


星々は、立ち上がり窓の外を見る冬至に黒影のことを問う。


「やはり、黒影ってあの人なんじゃないですか?」


「さぁね。私は知らないよ。晴山大介のことなんて……」


「知ってるじゃないですか。」


冬至は窓の外を見ながら微笑んだ。


────────────


走り始めて数時間、ギンロと優吾達は以前訪れた本部の管理下の森へやってくると以前の傷跡が残るところを通り過ぎ、さらに森の奥の本部の管理下を外れた整備の行き届いていない森へと入る。


「ここは、瘴気が強いな。」


「そうなのか?」


彩虹寺は口を覆っていない優吾の口に慌ててハンカチを当てる。


もが、もががが。おい、何すんだよ。


「瘴気を吸えば、君の体も無事ではない。ハンカチで押さえろ。」


「わかったよ。」


優吾はハンカチを受け取るとそのまま森の中を進んでいく。ほどなくしてギンロは洞窟の前に立つ。


「さて、追い詰めたぞ。」


「あらら~追い詰められちゃった…」



「余裕そうだな。ギンロ=シルヴァス。」


「そうでもないよ?晴山優吾。」


お互いに臨戦態勢に入る。優吾は石を握り、彩虹寺は手を構える。火ぶたが切られると思ったところで他の二人の銀色の使徒も合流した。


「着いたぞ、ギンロ。」


「連れてきましたよ、教祖。」


エファとサソリの到着と同時に他の魔法術対策機関のメンバーも合流した。


「皆そろったな。それじゃ、魔法術対策機関はこれより銀色の使徒の本拠地へ乗り込む。」


「了解。」


それぞれが手を構え魔法の準備をする。それをみたギンロたちはさらに奥へ逃げようと後ずさろうとしたが、その時、ギンロ達の方の地面が盛り上がってくる。皆がその地面を見つめていると、山が盛り上がりアリ魔族が複数人出てくる。


「何だこいつら。」


「アリの魔族のようだが、生気が感じられない。」


ギンロたちはアリ魔族をにらみつけ舌打ちをする。


「なんでこいつらがここに…」


「ボクさ」


ギンロの後ろから声がすると大神 阿頼耶が姿を現した。


「貴様、なぜここに……」


「おいおい、このボクがなんの対策もなしに君らを送り出すわけないだろう?この前の件もあって、君が裏切るのはそこにいるサソリ君のおかげで分かっていた。」


ギンロとエファはサソリに視線を向ける。


「サソリ、本当か?」


「なんで、君が……」


サソリは短く嗤うと大神の隣へ移動した。


「いたって簡単。ギンロ=シルヴァス。君に勝機がなくなったからだ。」


「どういうことだ。」


サソリは魔法術対策機関の面々にも聞こえるように大きな声で話始める。


「ここにいる大神氏は人間を魔族に変える薬を完成させています。私は彼の思惑に乗っかり、この世界へこの研究の偉大さを知らしめるのです。それの過程にギンロ=シルヴァス率いる銀色の使徒はいらないと結論が出ました……だから、私は君を裏切る。」


サソリが言い終わると大神はそのままサソリを連れて奥へと戻った。ギンロがその背を追いかけようとするとアリ魔族たちがその行く手を阻んだ。


「邪魔だ。」


ギンロとエファはその大群を一瞬で消し炭に変え、ゆっくりと歩いて行く。優吾たちはギンロたちを追おうとするが、それもアリ魔族に阻まれる。ギンロは優吾へ聞こえるように叫ぶ。


「晴山 優吾。君ならここまで来れるだろう!!?」


優吾はギンロと目が合うと、お互いににらみ合った。


「皆、行くぞ。」


魔法術対策機関を率いた優吾は石を握り魔装する。


「魔装!!」


白と黒の鉄の塊が宙を舞い、アリ魔族たちへ襲い掛かりながら優吾へと突き刺さり鎧の形を形成していった。皆も大群のアリ魔族を相手にしながら、前へ進む。


魔装戦士マガ=べラトル……魔装完了All Set!!」


優吾はその拳をぶつけながら、ギンロの後を追いかける。優吾に続いて魔法術対策機関の面々も魔法で突破していくが、アリ魔族は次から次に出てくる。


「この人数を相手するのはなかなかきついな。」


彩虹寺は魔法を撃ちながら優吾のサポートもする。しかし、隙を作ってしまいアリ魔族に腕を狙われるが、海辺がそれを阻止する。


「すまない。」


「いや、この数は初めてだし仕方ないよ……とりあえず、ここにいれば、乱戦になる。優吾君を抜いた三組で別れよう。」


「そうだな。それじゃ、私はここで一人になろう。」


「それは危なくない?僕が残ってた方がよくない?」


彩虹寺と海辺が戦いながら相談しているのを見ていた他のメンバーも戦いながら近寄ってくる。


「どっちが残ってもいいからよーさっさと決めろよ!」


「私たちだけでこの人数は無理です。彩虹寺さん応援要請をお願いします。」


「ボクも右に同じ。」


三人の意見を聞いた二人は、うなずき、彩虹寺を残して、海辺、陸丸ペアと夢希、焔ペアに分けて分散させた。彩虹寺は応援要請をしてそれぞれとコンタクトとり、優吾のサポートへ専念し始める。


「それじゃ、僕と陸丸はこっちに行く!何かあったらすぐに連絡して!」


「もちろんだ。夢希ちゃん、凪ちゃん。頼んだ。」


「わかりました。彩虹寺さんも油断しないように。」


それぞれに分かれて彩虹寺は優吾の方へ目を向けると、優吾はアリ魔族の壁に阻まれて進めなくなっていた。彩虹寺はそこへ走り次々にアリ魔族を倒していく。


「晴山。私が道を切り開くから君は早くギンロと大神とかいうやつのところに行って確保してこい。」


「分かってんだけどよ……この壁は突破できねぇわ。」


彩虹寺は手を構えて目の前のアリ魔族の壁に魔法を撃ちこんだ。


五光ペンタ:フレア!!」


燃えるアリ魔族の壁は崩れ落ちると道が開けた。優吾はその先へ進もうと足を踏み出したが、彩虹寺の方を見る。


「どうした?早くいけ。」


「お前、ここで一人で戦うのか?」


「あぁ、でも大丈夫だ。応援が来る。だから君は先に行け。」


サムズアップをする彩虹寺に不安を覚えながらも優吾はギンロと大神の後を追っていった。

優吾を見送ると、彩虹寺は先ほどよりも強力な魔法を撃ちこんだ。


六光ヘキサ:インフェルノ!!」


炎が勢いよくアリ魔族たちを燃やし尽くすが、アリ魔族たちは続々と地面から湧き出てくる。彩虹寺はその様子に魔力配分を誤らないように気を付けないとと思いながら、魔法を撃ちこんでいった。

「俺も、やるぞ!」


気合を入れた優吾はそのまま走る。


46:了

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