わんわん泣いたせいか、日が昇って明るくなった中。
顔を上げて目元や頬、口周辺の涙の跡をゴシゴシと拭く。
「ふうーー 泣きすぎた」
と言って二枚目を見る。
ーーーーー お兄さんの手紙 ニ枚目 ーーーーー
管理者の真の目的を考察する。
XXXXXXXXXXXXXXXXXXXX【禁則事項】
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XXXXXXXXXXXXXXXXXXXX【禁則事項】
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三枚目を見る。
ーーーーー お兄さんの手紙 三枚目 ーーーーー
XXXXXXXXXXXXXXXXXXXX【禁則事項】
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XXXXXXXXXXXXXXXXXXXX【禁則事項】
By、ナグモ
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ラビに手紙を見せながら。
「ラビ! 何これ!」
『禁則事項です』
「消したの?」
『禁則事項のため消しました。抗議は受付けません』
ガックリと肩を落としてため息一つ。
太陽にかざして透けて文字の跡が見えないかと頑張ってみる。
『紙の様に見える幻影です。透ける跡が有りません』
またもガックリと肩を落としてため息ニつ。
手紙を折り畳んで封書に入れ膝に置き。
攻略本を見ようとするも、ページが開かない。
「うーーーーぐぐ、ぐーーうーーーー」
「ラビ! 開かない!」
『攻略本はダンジョン作成の3日後に読めます』
「何故!?」
『管理者より「やる前に攻略本はチート過ぎ」との判断です。
3日後でも役に立つので有利です』
またまたガックリと肩を落としてため息三つ。
「管理者って、ネット小説とラノベ見過ぎ…………」
横を向いてブツブツ、ブツブツ文句を言いまくるサクラだった。
文句も尽きたところ、再度手紙を取り出し封書と共に隅から隅まで上を下へと探りため息をつく。
攻略本も諦め悪く開けようと、閉じ紐を取ろうとしたり、破ろうとしたり悪戦苦闘する。
わさわさとイジっていたら、蜃気楼の様に手紙と攻略本が消えた。
それを見て親の敵のように、キッ! とラビを睨みつける
「出して!!!」
『いつでも出せるの、次に進みましょう。
それに魔法で紙のような幻影を出しているので、保存はできません。
原本は私の中にあるデータです』
それを聞いて、大きなため息と共に諦めるサクラ。
ヒントも無く対策しなければならない。
「この、手紙とか攻略本を誰かに渡すのは私もできる?」
『これは、初代が良い結果を出した時の報償で、特別に許可された物です、サクラは出来ません』
さすがお兄さん、負けてられないと思う。
そして、深く思考を始める。
「ラビ、ちょっと考え事をする。待ってて」
『了解』
これからの行動指針を考えよう。
まず、人を殺す事。
これを避けたら私は消え、やりたい目的ができない。
出来るだけ痛みも無く最短時間でサックリと殺したい。
最適な魔法に有るはず。
その方法を後でラビと相談。
うーーむむ、私の想像設定や妄想設定の知識が活躍する予感、とニマニマしてしまう
次に、大量に殺す方法。
魔法に範囲の攻撃方法が有るはず。
又はモンスターによる数の攻撃、いわゆるスタンピード。
でも、モンスターの攻撃による殺しは痛いし短時間でサックリは無理だろう。
これもラビと要相談。
次に、睡眠か麻痺の魔法
これは攻撃前の無力化と私が逃げるための足止め。
ラビと……
次に、死体の処理。
放置では、ダンジョンの発生や暗躍がすぐにバレる。
当面、死体を消去して行方不明の演出がいい。
次に、ダンジョンに固定され動けないのは困る。
広範囲の活動と逃げるためにも動ける方法を考案する。
次に、ダンジョンと言えば、転移等の移動方法が有るはず。
ラビに問い詰めよう。
それに転移みたいな非科学的な移動方法が無ければ、星間国家は無い。
光速を超えた移動手段が魔法にはあるはず。
次に、壁をすり抜ける移動方法が欲しい。
ラビに相談。
次に、隠密での行動は必須。
妄想設定が捗りすぎ。
ダメ元ですべてラビに問い詰める!
よし、理想はコソコソと近寄りサックリ殺し、死体を消してコソコソ逃げる。
正面で戦うのは無しで。
その先は、コソコソと移動して範囲で殺害し処理して逃げる。
これぞ私らしい戦術。
モンスター不要かも?
こんな所かな、使命を行う上で必要な協力や相談はラビがするだろう。
他のダンジョンマスターの事を聞いた時、開示できないの回答だった。
それすなわち、嘘や誤魔化しが無く秘密は回答不可と答えてる。
その理由を聞き、相応の答があれば信用の元になるだろう。
よし、今から相談だ。
「お待たせラビ」
『いえ』
「最初の質問、他のダンジョンやマスターの個別情報を開示できない理由を教えて」
『了解しました。
管理者は人類の長い歴史の発展を願っています。
ダンジョンマスターの役割は間引きと、ダンジョンが有る事で変化する環境の改変だけです。
それに関係ない、個別マスター情報を開示しません。
今は間引の数が膨大なためダンジョンの数は増加し、今後も増えていくでしょう。
しかし、将来ダンジョンは大量に減る必要があり、ダンジョンマスター同士の戦いを解禁しています』
この話だけで驚愕の情報がある。
間引きのためダンジョンマスターは増やしているが、その先は殺し合い。
ダンジョンマスターの選別が待っている。
管理者の非情が私を戦慄させる。
「ダンジョンマスター同士が戦ったらどうなるの?」
『1、負けた方が代替わりする。
2、相手のコアをサブコアにして私の管理下に出来ます。
実質はサクラにサブダンジョンが増えます。
条件によって、敵ダンジョンマスターをモンスターとして従属し使役できます。
そしてサブダンジョンマスターに指名できます』
なんと、ダンジョンの征服まであるとは。
将来、力あるマスターの征服ゲームが起こる。
そこまでダンジョンマスターを減らしたいのか!
地球全体でまばらに間引きをするためには、数千、数万、数十万のダンジョンができるかもしれない。
そして淘汰の時代になる。
私は今から淘汰の時代を乗り越える力を付け、目標のために生き残る!
「分かりました。ところで、ラビは使命一筋ですね」
『はい、そのために作られました』
うん、今までの話から、話さない事はあっても嘘や誤魔化しは無いと思う。
ラビの目的は使命を果たす事、この一点に絞られる。
それが私の拠り所になる。
使命を果たす限り、ラビは心強い協力者になるだろう。
その使命を利用して私の目標を行う。
よし、基本方針が決まった、次に進もう。
「ラビ、最小時間で痛みなく即死させる方法有る?」
『デス(中)魔法のLv7以上有れば、デス耐性を持ってない人やモンスターが100%掛かり、1秒後に即死します』
デス魔法の仕様を聞いたら次の様だった。
デス(低) LV1−10 10メートル内の目視単体
デス(中) LV1−10 半径30メートル内の指定範囲
デス(高) LV1−10 半径100メートル内の指定範囲
デス(極) LV MAX 半径300メートル内の指定範囲
ただし、デスLvとデス耐性Lvが同じ時、30%の確率で掛かり、24時間後に死亡だった。
100%の確率と最短時間の1秒は、耐性とのLv差が17以上離れている必要がある。
デス呪いを魔法か護符で解除すると必ずデス耐性が1LV上がるので、デス解除護符を、下10枚、中10枚、上10枚持つと、
耐性無しからデスが掛かったら即時護符で解除されデス耐性が上がる。
指定枚数の護符を持つだけで解除され耐性が上がるのでデス魔法はゴミ魔法と言われているらしい。
デス(極)まで上げれば、100%掛かるが耐性差で時間が変わる。
ただし上げるには膨大なDPが必要だとか。
デス(極)の解除には呪い解除(極)が必要らしい。
今はまだ耐性持ちは少ないし護符も少ないと思うので攻撃はデス魔法にする。
解除されたら即逃げで行こう。
「ラビ、壁を素通りしできる方法ある?」
『ゴースト系の種族かエレメント(源精霊)や下位精霊のウィスプ系種族ができます。
魔法はありません』
ふむふむ、確かに幽霊や精霊は実態が無いので壁抜けか。
エレメントの源精霊は響が好きだ。
下位はパス。
「人に見つからない方法ある?」
『ダークエレメント系は発光せず薄暗いので、目視では見つかり難く闇と黒魔法が得意です。
これに黒魔法の高Lvの【インビジブル】が良いです。
ただし他の魔法を使うか攻撃をすると解除されます。
また、ダンジョン内で【インビジブル】は解除されます。
尚かつ【インビジブル】を生成モンスターは使えません』
確かにモンスターが消えるとモンスター無双で人が殺せる。
モンスターが出来なくて当たり前か。
ふむふむ、この定番を外さない内容は何処からだ?
私の知識が無双する。
「いいねいいね、転移的な瞬間移動ある?」
『ダンジョンマスターであれば一日に指定数回、ダンジョン管理領域の好きな場所に転移できます。
転移魔法は開放されていません』
やっぱり転移魔法が有るのか!
星間移動はこれだ。
「麻痺や睡眠魔法ある?」
『有りますがLvを上げないと、効果が薄いです』
「死体をキレイに消す方法は?」
『ダンジョン領域であれば吸収して消せます。
又は、闇魔法の闇収納で収納します』
「ダンジョン作成方法は?」
『場所を指定してダンジョン作成と指示してください』
よしよし、ここからが勝負だ。
「私の体の中にダンジョンを作りたいです!」
……
…………
『ピーーーー、ERRコード20079。
エラー発生で処理不能、管理者に問い合わせをします。
しばらくお待ちください』
これは面白い! ラビの弱点を見た。
……
…………
………………
『管理者より回答が来ました。
《面白い! 流石に日本人、斜め横の発想。
特別に出来るようにした、試せ》
内容を説明します。
階層零完全オープン型ダンジョンと言う型番がサクラのみの特令で新設されました。
ダンジョンコアルームが無い、表層にコアが露出したダンジョン。
サクラの皮膚の守りしかありません。
攻撃が少しでもコアに届いた時点でサクラは消えます。
地上に起点が無いので地下や上階の階層は作れません。
ダンジョン管理領域はサクラを中心に移動します。
管理領域は基本的に情報収集範囲と思ってください。
ダンジョン領域は管理領域内に作り、一度に一つだけサクラを含む範囲に作れます。
しかし、サクラと一緒には移動しませんがダンジョン管理領域外に出ると消えます。
別のところに作るには一度解除する必要があります。
零層にダンジョン領域を作り部屋や通路や罠を作れます。
零層の部屋を亜空間に出来ますが、すべて零層です。
ダンジョン領域に部屋や通路、罠等の固定物を作るとサクラが起点のため移動できなくなります。
普通はダンジョンに対する相対位置で固定物は作成されます。コアはコアルームごと移動できます。
しかし、地上に起点がなく地下ダンジョンが無いので、固定物はコアの相対位置で作成します。
その反作用でコアが固定されサクラは移動できません。
モンスターはダンジョン領域のみで生成できます。
サクラの中に亜空間の宝物庫や各種倉庫が作れます。
吸収した物は魔素に変換するか倉庫に送られます。
以上が階層零完全オープン型ダンジョンの仕様です。
コアの守りはほぼ無し、本当に宜しいのですか?』
「もちろん問題ない」
『ではまず、種族や魔法等々を決めましょう。
今あるDP内で出来ることを決めます。
希望をどうぞ』
ラビと長々と相談した結果。
階層零完全オープン型ダンジョン
ダンジョン管理領域、私を中心に半径2000メートル、上500メートル、下30メートルの円柱型。
1日に6回転移可能にした。
今のダンジョン領域は私の体内。
体内に倉庫1が吸収のために必要だった。
ダンジョン作製には多くのDPを消費した。
種族 リトルダークエレメント Lv5/20
(小さな闇源精霊、種族内最弱)
+ 憑依のための変異型パペットドール
(ヒノキの木製、憑依すると変異する)
これが無いと物理的に物に触れるには魔法が必要であるため、木製の最も安い人形にした。
魔法
デス(高) Lv1/10
インビジブル(中) Lv1/10
睡眠(中) Lv5/10(中で範囲可)
麻痺(中) Lv5/10(中で範囲可)
闇収納(小) Lv7/10(単体収納)
これで、KP1とDPが残り僅かとなる。
私の胸の中にはダンジョンコアが入っている。
ドールから出ると、体が薄暗く透けて胸の中に白金色に光ったコアが見える。
見つかり難い種族特性が裸足で逃げ出した。
仕方がないので、コア周辺を精霊の体で覆い隠す。
胸の中に光を吸収する黒い球体が見える。
前よりは良くなったが、薄暗い透明の体の中央に真っ黒な球体が浮かぶ。
変異型パペットドールの外見はデッサン人形の様な丸と楕円棒の集合体形だが、憑依すると外見は変異して私になる。
その外見、髪は漆黒で腰まであるストレート。
前髪は目の上で切り揃えている。
透き通る様な白い肌に目は大きく少しタレ目。
全体的に優しさや慈愛を感じる雰囲気を持っていた。
だが喋ったり動くと幼い子供だった。
あの時空の狭間にいた小さな少女。
しかし裸だ、服ください、えっDPが無いから無理。
泣きたいです。
身長は130センチの低学年小学生にツルペタなので泣きたいです。
ラビが文句を言い始めた。
『DPをほぼ全てを使い切りました。
7日以内にダンジョン維持費であるKPを稼がないとサクラは消えます。
私の判断は危機的状況です。
すぐにも゛KP欲しい焦り゛に精神誘導しそうです。
魔法はできるだけ早くLvを上げてください。
攻撃はクズ魔法と言われるデスだけ。
他の攻撃魔法も覚えてください。
種族は系統最弱なので魔法を打たれたら即死、強い物理衝撃でも死にます。
種族Lvも上げて強い精霊に進化してください。
パペットドールもヒノキの棒で弱すぎ、強い体のパペットドールに変えてください。
隠密暗殺超特化なピーキー仕様で攻撃や防御の使役モンスターも居ません。
今の物理防御と力は小学生程度です。
下手に手で叩いても反動でヒノキの腕が折れます。
コアの中の危機アラームが鳴りすぎて困っています。
きっと管理者も腹を抱えて笑ってまっすよ。
斜め横に行ったと思ったら、前を向いたまま全力で後ろに暴走していると。
早くKPを補充してください!!!』