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第5話 良好なマスターと評価する


 ラビがうるさいです、先に服がほしい。

 第一に服の入手、金銭も欲しい。

 次に、私の目的のためにKPを稼ぐ。

 たしか、札幌には刑務所があったはず。


 約1億2千万人から1/10の1200万人では日本という国が維持できない。

 最低でも7000万人は欲しい。

 当面の目標は1億人程度に間引する。

 だから、2000万人を使命のために殺す。


 そのターゲットは犯罪者、次に日本に不利益をもたらす者、次に痴呆老人や寝たきり等の弱い老人に犠牲になってもらう。


 それは、殺す人を選ぶこと………


 傲慢すぎる考え方だ、だがランダムに間引きして無秩序に人を減らすより遥かに良い。


 私はそれをする。


 私は悪魔であり怪物だ、きっと死後永遠の地獄に落ちるだろう。


 しかし、すでに決意と覚悟は終わっている。



「ラビ、先ずは街に行き服とお金を入手、次にKPを稼ぐ」


『了解、早急に行きましょう』


 ラビに街の方向を聞いて、短い足で歩き始めたが、直ぐに立ち止まりラビに向かって。


「裸足が痛いよ」


 源精霊の時も歩いていたが、実際は飛んでいた。

 源精霊の移動は飛行だが、無意識に人間だった頃の歩く動作をしていたに過ぎない。

 だが、パペットドールに憑依して人間の実態を持ったため、体重が有り痛覚もあり素足に草や砂利が刺さる。


『足裏だけパペットドールにすれば良いです』

「ラビ賢い」


 さっそく足裏だけをパペットドールに変えて歩き出す。


「おーー木靴みたい」とコツコツと音を立てて歩き始める。


 足裏から2センチほどがデッサン人形の木足に変化していた。


 何年も入院し、最後は寝たきりだったサクラは歩くのが楽しくてしかたがない。

 森や木や草花の全てが新鮮で何もかもが楽しかった。


 花を見つけては近づいて観察。

 大きな木があると木陰で佇み一休み。

 寄り道が多く、あまり進んでなかった。

 それも仕方がない、10年ほど病院の中が殆どだったから。


…………


 しかし数時間も歩くと景色も慣れ、楽しさよりも疲れや喉の乾き、空腹を覚え始める。


「ラビ、お腹が空いたし水が欲しいかな、ダークエレメントは何食べるの?」


『ダークエレメントは基本的に魔素を食べています。

 ダンジョンマスターは寝食不要で魔素を無自覚に吸収しています。

 何も食べずに24時間働けますが、よほど慣れが必要です。


 元人間のサクラは寝食の要求が無自覚に出るので、普通の食事や睡眠を取ることが良いでしょう。

 でも、今はDPが無いので我慢してください』


「そうかーー、我慢する」と言いながら全裸少女が歩く。


 てくてく、てくてく、寄り道と休憩をしながら日が傾くまでひたすら歩く。


 慣れとは凄いもので、痛みや苦しさが日常だったサクラには、我慢すると決めた瞬間それが無いと思うようになる。

 だから、ひたすら歩き続けられた。


 ラビは、てくてく歩くサクラをダンジョン管理領域視点の斜め後ろから見る俯瞰視点でサクラを見ながら思う。

 転移で移動できるのにサクラは全く気付ていない。

 最長約2キロの転移が6回で最大約12キロ移動できる。


 ラビは使命に問題が無い限りマスターの行動を追認する。

 ラビの緊急時は口頭又は精神誘導して行動してもらう。


 日が沈み周囲が暗くなる。

 星の明かりが空に現れ、周囲が真っ暗になる。

 サクラはダンジョンマスターのため暗くてもよく見える。

 ダンジョンコアAIのラビも暗くても問題ない。


 森が途切れた頃、遠くの方に明かりが見える。

 明かりに向かって進むと遊歩道のような道があり、道に沿ってコツコツと歩き始める。


 しばらく歩くと遠くから悲鳴が微かに聞こえてきた。


「ラビ、悲鳴が聞こえる!」

『この先で女性が襲われています』

「行こう!」 サクラは急いで走り始める。


 現場に数十メートル近づき見ると、2名の女性が8人の男に押し倒され服を脱がされていた。


「こ、これはレイプ現場?」

『ですね』

「よし、適切な8KP回収現場、犯罪者に慈悲は無い。

 ラビ、彼らの後ろに転移よろ」

『了解』


 彼らの後ろ数メートルに転移して、【範囲睡眠】【範囲麻痺】の魔法を行う。

 問題なく全員、睡眠と麻痺にかりその場でパタリと倒れる。


 続けて男8人に単体の【デス(高)】を掛ける。


《今後はデス(高)はデスと呼称します。

 他の魔法も魔法名のみでランクは省略します》


 少し待ったが一切の動作が無く、外見上も変わらなかった。

 魔法が効いたのか分からない。


(死んだよね?)

『はい死んでます』


(死んだのが見ためで分かる方法ない?)

『ここはダンジョン管理領域なので、マスターのみ見える死亡マークを彼らの上に表示します』


 8人の男の上に平面ホログラフの様なドクロマークが出てゆっくり回転していた。


(これいい! ゲームみたいで分かりやすい!)


 男の一人に近寄り手を当て【闇収納】。

 手から出る黒い闇が男を包み、闇が消えるとともに男が消えていた。

 残り7人も同じく収納する。


 現場には女性2名が仰向けに倒れていた。

 少し心配になり、近寄って顔を近づけ息を確認する。


 二人とも息はあった、しかしすごく酒臭い。

 飲み過ぎのレベルだと思う。

 小一時間は説教したい。


 時間がたてば目が覚めるから放置に決定。


 周りを見ると、ワゴン車と普通車が止めてあった。

 (戦利品だーー)と呟き。

 喜んで二台に駆け寄り闇収納する全裸少女。

 傍目には全裸少女が笑顔で車を消す、ホーラー映画です。


 もう一度周りを見渡し何もないのを確認した。

 これでほぼ証拠が消えて事件は闇の中だと思う。

 多分女性も話さないと思う、話してもいいけどね。


 確認が終わると森に向かって走る、ひたすら走る。


 ラビは思う、サクラは転移で離脱できるのに忘れている。

 攻撃は自然に転移を使ったのにと呆れていた。

 指摘したほうが良いのだろうか、それとも何かのために転移回数を残しているのだろうかと思い、初期のため指摘する事にした。


『サクラ、転移で離脱はどうでしょうか?』


 サクラはピタリと立ち止まり。


(それがあった! ラビ、安全な場所に最長で2回転移よろ)


『了解、転移回数の回復は夜の0時です。

 数時間後に6回に戻ります、では転移』


 ラビはまた思う。

 さっきの襲撃にインビジブルの隠密を使わなかったのは、何か理由があるのだろうか?

 ただ単に初めての魔法なので思い付かなかったのか?


 サクラは森の中に転移後、安全確認のため周囲を見る。

 問題ないため手頃な場所にワゴン車を出し、周囲を回ってドアの確認を始めた。

 運良く運転手側が開き中に潜り込む。


 そしてワゴンの後部に行き物色を始めた。

 クーラーボックスを見つけ、中にジュースやお茶やビールが入っていた。

 次に大きなバックの中には、お菓子やパン、レトルトな食料が入っていた。

 数日は持ちそうな量だった。


 「ラッキー」と言いながら菓子とパンを食べジュースを飲むサクラ。

 その姿に、人を殺した罪悪感は何処にも無かった。


 空腹や喉の乾きを解消して満足したため、次は眠気が襲ってくる。

 お茶で数回口を洗い、もぞもぞと助手席に行き背もたれを倒して「ラビおやすみー」と言って目をつぶるサクラ。


 寝息が聞こえてから十数分。

 ラビは寝ているサクラの横顔を見ながら。


(マスターダンジョンコアに定期報告。


 コアの危機アラーム状態だが、一日で一週目のノルマをクリアする。


 ダンジョン維持費にはまだ足りないが、殺しに何の抵抗も無く、その後も良好。


 余程大きな決意や目的が有ると予測される。


 多少思い込みが強いのと思慮不足はあるが、我慢強く粘りがあり発想が突飛で面白い。


 最初の出だしは良好なマスターと評価する。


 以上報告を終わる)


 ラビはサクラの寝顔を見ながら。


(お休みサクラ、良い夢を) と願う。




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