体育座りで声を殺して泣いた。

　ラビは何も言わずに待っていた。

　結局、管理者が行った精神操作は最初の殺人を行わせるため、そして試験期間をクリアさせるためだったんだろう。

　それでも試験期間の脱落者いたのは、強い精神操作では無かったのだろう。

　これもきっと何かの意味が有ると思う。

…………

　涙が枯れた頃、顔を上げて涙を拭きながら立ち上がり。

「あーーーー　泣いた、ラビお待たせ」

『いえ問題有りません』

「よし！　今日はもう寝よう、安全地帯に転移よろ」

『了解』

　転移後倉庫からワゴン車を出して後部に乗り、後部座席をたたみ布団と枕を出して敷いた。

　もう夜明けが近いから、窓のカーテンをすべて締めて寝た。

　肉体的、精神的疲れが多くてすぐに寝てしまった。

……

…………

………………

　ゆっくり寝たようで昼過ぎに目を覚ます。

「おはよーー、ラビ」

『おはようございます、サクラ』

　布団をそのままにして助手席に行く。

　北海道の地図をダッシュボード前に広げて、インターネット喫茶で印刷した北海道刑務所一覧の住所から地図に場所をボールペンでマークする。

　もちろん犯罪者でＫＰを稼ぐんです。

　マークした場所と街を繋げて北海道を反時計回りに回るルートを計画する。

「よし！　このルートで北海道全域制覇だ！」

　もちろん、各町でリトルダークウィスプを解き放つのです。

　え？　昨日の悲しみはどこに行った！　ですか？

　それは罪と罰を抱え、悲しみと苦しみを心に秘めながら目的を目指す。

　目的さえ達成出来れば地獄に落ちてもいい。

　その覚悟で迷わず行動する。

　そう決めた！　中途半端は無い！

　結局のところ私の選ぶ道は諦めるか進むしか無いのです。

　なればこそ、目標に向かって全力で進み、倒れる時は前のめりに倒れたい、それが私の答え。

ーーーーーーーーーー

　地図や資料を闇収納に入れ、靴やバックパック、ポーチを装備して外出準備をする。

　ワゴン車も闇収納する。

　ダンジョン倉庫では、出入りの度にダンジョン領域が必要なため良く使うものは闇収納とした。

「さあ、北海道制覇に出発……　する前にもっと北海道の情報を調べる。札幌のインターネットカフェにレッゴー」

『了解、近くまで転移しますか？』

「うん、安全地に転移おね」

『転移距離の延長のため、ダンジョン管理領域を広げませんか？』

「いいね、１０キロでどう？」

『了解、ＫＰを多く使いますが今後のために使います。

　…………

　広げました、安全地を捜査します。

　…………

　では近くの人が居ない物陰に転移します』

　その後数回転移し、前回行ったインターネットカフェまで歩いて行く。

　インターネットカフェの個室に入り、最初に調べたのが一昨日の強姦事件と刑務所の事件。

　強姦事件は検索しても何も無かった、多分まだ事件として大きくなっていないかな。

　刑務所の件は、一面の大事件ニュースになっている。

　《札幌刑務所の囚人消える！　集団脱獄か！　モンスター襲撃か！》

　なになに、刑務所から定期連絡が途絶え最寄りの警察が到着したのが朝の６時４０分頃。

（あっぶなーーーー　脱出がぎりぎりだった。こわ）

　内部と連絡が出来ないため入れず、職員用の敷地に入る。

（入り方の説明が無い、壁かドア壊したかな？）

　職員と共に刑務所内を捜索したが囚人が見つからなかった模様。

　集団脱獄かモンスター襲撃の可能性有り、札幌全域に警戒体制が敷かれる。

（ふむふむ、正式発表はまだかな。

　内部的には監視カメラに黒い球体と暗い影が映っているからモンスター襲撃と分かっているけど、発表内容を検討中かな、今日の夜に発表と思う。

　それに、強姦も８人が行方不明で移動の痕跡が無いし、助かった人は眠ていた。

　同一犯行だとほぼ断定すると思う）

　その後、事件のニュースや動画の多くを見た。

　刑務所前は輸送車やパトカーが列をなして止まり、警官や職員が慌ただしく動き回っていた。

　その外に野次馬が蠢いている。

　なかなかに緊迫の動画だった。

　動画の中に現代風の冒険者？　の様な集団が刑務所に入る動画があり、テロップで。

《ダンジョン対策本部の精鋭が到着！》

　と有り、思わず何度も動画を見てしまった。

　持ってるの剣と弓だよね？　それに杖が見える。

　現代風プロテクターの鎧？

　巫女風紅白袴も居るよ！　硬そうな扇子持ってるし！

　日本どうなった！！！

　まあ現代兵器や防護服は魔力が無いから意味薄いけど、知らない間に日本がファンタジーになってた。

　それにダンジョン対策本部の精鋭……

　公的なダンジョン対策組織が有り、動画を見た雰囲気は信頼されてそう。

　きっとLVも高くて魔法とか魔力の乗った物理攻撃ができると思う。

　私が日本の１５７代目と考えると、多くのダンジョンを破壊した強者が集まる組織…………

　今戦ったら即死だよ。

　怖すぎる。

　（犯人は事件現場に戻る）をしなくて良かった。

　起きた時、現場見てみたいなと思ったのは内緒です。

（日本にダンジョン対策組織があると、ラビ知ってた？）

『いえ、マスターダンジョンコアに問い合わせれば情報はあると思いますが、個々のダンジョン情報も含まれるのでお伝え出来ない可能性が高いです』

（そうかーー　インターネットで調べてみる）

　検索したら、結果が軽く６桁超えた！

　日本ダンジョン対策省が一番上にある。

　軽く読むと、警察と自衛隊の合同で設立された後、日本ダンジョン対策省に格上げされ、武器携帯と使用が許可されたダンジョンとモンスターに最も武力が有る組織になる。

　国連の国際ダンジョン対策組織と協力関係で、基本そこのルールに足並みを揃えていると。

　それなら過激組織になる！

　実に日本らしい組織の出来かた、国連に合わせました、で法律が作られてた。

　空いた口が塞がらないけど、私にとって最も危険な組織だった。

　個人作成のwiki読むと、ダンジョン災害が発生当初は自衛隊と警察が対処していたが、民間に高Ｌｖ保持者が多く現れる。

　これら２組織とバラバラな民間の強者をまとめる為、ダンジョン対策組織が作られる。

　その時、多くの自衛隊員と警察署員の高Ｌｖ保持者をダンジョン対策組織が引き抜く。

　その結果、ダンジョンとモンスターはダンジョン対策組織が専任になったと。

　警察とダンジョン対策部隊は共に歩む組織になったが、自衛隊は今でも高Ｌｖ保持者になると強制的に移籍する。

　自衛隊が持つ近代兵器の効果がモンスターに弱く、自衛隊の活躍する状況が徐々に薄くなり、優秀な人材ほど引き抜かれるため感情的な対立が発生している。

（アチャー、何とも複雑になった事。どおりで自衛隊を見かけなかった）

　その後、北海道ダンジョン対策本部のホームページを訪れ北海道の状況を調べる。

　北海道には他にダンジョンが有り、滝川市周辺のかなり広い範囲でモンスターの襲撃が今も発生していた。

　まだダンジョンの場所が特定されていなかった。

　今の私がダンジョンマスターに遭遇し、不幸にも敵対して戦っても勝てる気がしない。

　もっと力を付けてから会いに行ってみよう。

　滝川市は札幌の上、反時計回りに回るなら十分にＫＰが稼げてもっと強化が可能だろう、まずは私の強化が最優先だ。

　最低でも逃げれる強さが欲しい。

　その後もいろいろな情報を検索して読んでいた。

　私が死んでから十数年過ぎていたため、ダンジョンに対する取り組みがかなり変わっていた。

　特にLV習得による人間の強化と魔力が籠もった攻撃や魔法がモンスターを倒すためには必須と言っていいほど重要になっていた。

　もちろん、近代兵器でも最下位モンスターなら銃でも棒で叩くだけでも倒せる。

　下位も強力な銃器の攻撃なら倒せる。

　中位のモンスターには集中攻撃が当たれば倒せる。

　上位は大砲が近距離で直撃すれば倒せるが、機動力の高いモンスターに当てる事が困難だった。

　銃弾の消費や武器の消耗、戦闘時の被害範囲を考えると倒すのが困難で消耗が大きすぎて近代兵器の負担が大きい。

　魔力を纏わない攻撃は、魔力で出来たＨＰの壁にダメージが少ししか出ないからだ。

　近代兵器は魔力が込められないのが最大の欠点になった。

　なぜか弓等人力の飛び道具には魔力が籠もる。

　これは遠距離魔法と同じ原理ではないかと言われている。

　LVを持った人間はLV対応の魔力で出来たＨＰのバリアーを持ち、魔法や剣や弓や拳には魔力が込められ、モンスターのＨＰの壁に直接ダメージを与える。

　ダンジョン対策組織は、戦力になるLVを持った人間を集め育て、戦力としていた。

　その部隊をネットが冒険者チームと呼び始め、あっという間に世界に広まってしまった様だ。

　正式名はLV保持者と言い、部隊をモンスター特化部隊、略称M特隊と言う。

　だが、LV保持者は戦争でも強力な兵士になり、LV保持者はLV保持者でなければ倒せないとまで言われている。

　ネットを見ると既に戦争の形が少しずつ変化していた。

　世界危機であるダンジョン災害があるのに、まだ人間同士で戦争しているのを見ると思わず、《人間は一度生まれ直せ》と思う。

　興味深い情報が多すぎて、気が付くと夜になっていた。

　北海道制覇は明日からと心で話し、森の安全地帯に移動してリトルダークウィスプを１０００解き放つ。

　ラビがＫＰが少ない！　と言ったが無視した。

　再度転移で安全地帯に移動してワゴン車で寝る。

　朝起きたらＫＰが増えてた。

ーーーーーーーーーー

　まず私の強化の為に、札幌から下に行き反時計回りに巡り、最後に滝川市に行きダンジョンマスターに会う計画を建てる。

　各街に行き１泊以上し、街周辺の規模に対応して数百のリトルダークウィスプを解き放つ。

　刑務所の場所は深夜に私が直接乗り込み受刑者を処分する。

　また、訪れた街のインターネットカフェに訪問して暴力団等を念入りに調査し襲撃を行う。

　活動資金が必要なので暴力団から拝借する。

　この頃から、ＫＰの消費より収入が多くなる。

　定期預金以上の速さで溜まっていく。

　出発から数日後、ラビより最短時間で累積１万ＫＰ超えのレコード達成報告があり、大量の報奨ＤＰを貰う。

　当然ながら２位の差がさらに大きく開いた。

　まだ試験期間だったのに。

　約１ヶ月掛けて滝川市以外の北海道を周り終えた。

　試験期間も終わり週間のノルマが多くなる筈だが、私の累計が他と比べ極端に多いため、当面ノルマ提示が無くなる。

　良い事なのだろうか？

　心の痛み苦しみはそのままだが流す涙は無くなった。

　ノルマが無くとも目的のための行動は変わらない。

　ステータスの変更は随時行っていたが

　現在のステータスの変更点を示す。

　種族　エンシェントダークエレメント　　Ｌｖ１／２０

　　　　　（古代闇源精霊、最高の一つ前）

　　　　　（指定空間を闇で閉鎖できる、闇や影に潜り高速移動）

　魔法

　　デス（極）　　　　　Ｌｖ　ＭＡＸ

　　インビジブル（高）　Ｌｖ５／１０

　　闇収納（中）　　　　Ｌｖ５／１０（遠隔で単体収納）

　　物理強化（高）　　　Ｌｖ１／１０

　　魔法防御強化（高）　Ｌｖ１／１０（魔法防御強化）

　　眷属（中）　　　　　Ｌｖ５／１０（２５０の眷属可）

　　治癒（高）　　　　　Ｌｖ１／１０

　治療は魔力のバリアーであるＨＰを修復する。

　ただし魔素でできた物は部位欠損しても修復する。

　ダンジョン産の服や武器は治癒で新品になった。

　不条理だがとても便利だった。

　リアルな怪我には何も出来ない。

　　呪い解除（極）　　　Ｌｖ　ＭＡＸ

　　異常状態解除（極）　Ｌｖ　ＭＡＸ

パッシブスキル

　　状態異常耐性（極）

　　精神耐性（極）

　　呪い耐性（極）　　（デス耐性含む）

　　自動自己回復（極）

　　物理耐性（極）

　　魔法耐性（極）

パペットドール付与

　　物理耐性（極）

　　魔法耐性（極）

　防御がひたすら伸びました。

　攻撃はデスだけのピーキー仕様。

　逃げるのはとても強いです。