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第9話 北海道ダンジョン対策本部



 時が戻りサクラがこの地に降りる数日前。


 北海道ダンジョン対策本部の大会議室。


 その会議室には数十人が壁面の大型スクリーンに向かって座っていた。


 スクリーンには北海道の地図が表示され、上部に第XX回 北海道ダンジョン対策会議と表示され、その下にダンジョン討伐後の警戒の件と表示されていた。


 背広や制服を着た人たちが書類やノートPCを前に置き、真剣に前を向いていた。


 北海道ダンジョン対策本部長がスクリーンの前に立ち挨拶をする。


「北海道でダンジョンを破壊してから1週間がたちました。

 そろそろ次のダンジョンが出る頃です。


 日本のダンジョンは他国に比べ実に巧妙です。

 広い範囲で分からない様に被害者を出す。


 モンスターによる襲撃が発生した場所を調査しても何もない。

 なぜなら、遠く離れたダンジョンのモンスターが集団で遠征し、襲撃したからだ。


 この様に日本に発生するダンジョンは、巧妙に隠れて襲撃している。

 何度沸湯を飲まされたことか!


 なぜ日本に発生するダンジョンは戦略的に動けるのか、まるで戦略を事前に相談した様に。


 次こそは威信を掛けて早期に発見し、破壊する!


 そのために議論し協力してほしい。以上!」


 その後北海道ダンジョン対策本部の各地の状況報告。

 日本ダンジョン対策の全国の状況報告。

 ダンジョンの研究や調査結果の報告。

 諸外国の情報が報告がされる。

 スクリーンには報告内容が次々に表示されていた。


 最後に司会が。


「では、北海道警察は発見のために警備強化と少しでも異常な情報があったら通達をお願いします。


 広報は、新聞、ネット、各種広報誌等で北海道民に注意喚起を。


 北海道ダンジョン対策本部は地域に密着した、広報車を用いた広報と道市町村等の民間広報や回覧板を使用して下さい。


 ダンジョン対策部隊は何時でも招集できる体制をお願いします。


 その他北海道の消防、病院、自衛隊等の緊急対応準備をお願いします。

 以上解散!」


 ダンジョン対策本部の管理職は元自衛隊員と元警察職員で構成されている。


 ダンジョン対策部隊は当初、自衛隊と警察の高Lv保持者と一部の民間人で構成されたが、現在は元民間人が多くなる。


 自衛隊は現代兵器を使用た遠距離戦闘が主体だったが、強力な兵器を国内で使えず。

 小銃でモンスターを倒すのは難しかった。



 ダンジョン災害が発生当初、全国で多く発生するモンスター被害を自衛隊や警察で対処したが、人員的にも物理的にも不十分だった。


 そのため国民が直接戦うことが多発する。


 ナイフや包丁、ナタ、鉄パイプ、バール、スコップ、弓、等々を使用してモンスターを倒し、Lvを取得して各種技能スキルを修得する。


 中には魔法と言う架空の存在を取得し発動する者も居た。


 その情報がインターネットを通じて爆発的に広がり、現代兵器を持たない民間人の攻撃手段になる。


 情報が広まっても自衛隊や警察の現代兵器による遠距離攻撃がそれなりに有効であったため、現代兵器を手放さなかった。


 初期の下位モンスターに現代兵器はスキルや近接戦闘より有効だった。

 徐々にモンスターのLvが上がると、自衛隊はより強い火力の兵器に移行していくが強力な銃火器までだった。


 この時点で目に見えないが、個人としての戦闘力は民間が上を行った。


 その後、近代兵器がモンスターに効果が少なくなる横で、民間人や接近戦闘のレンジャーがモンスターをバタバタ倒していく事態になる。



 Lv取得者は自衛隊や警察が多いがLvが上がらず低いままだった。


 高Lv保持者の民間やレンジャーが強くなるのは当然であった。

 そして、民間の中に強者が多数現れるのは必然だった。


 民間の強者は物語の冒険者の様に依頼されて、チームでモンスター討伐や助っ人や護衛を始める。



 日本ダンジョン対策本部は民間人を戦力に活用するため積極的にスカウトを始めた。


 その後の調査結果、現代兵器で倒してもLvが上がり辛いのが発覚する。

 自衛隊や警察はこの事実に落胆した。


 そして、Lvが低くても各種スキルを持った民間人を雇用して教育訓練する教育機関ができる。


 命を守るため、何かを守るため、力が欲しい若者が大挙して押しかける人気の学校になり、人気の職業になる。


『母さん、俺も冒険者になってみんなを守りたい』

 が、親への説得の言葉として流行する。


 ちなみに、冒険者はネットで広がった俗語である。


 また、装備品は使い慣れた装備が魔力に馴染み、使い続ける事でさらに馴染み、モンスター特化部隊になってもそのまま同じ装備が使われる。


 現代の冒険者風外見が出来上がった。





ーーーーーーーーーーーー





 会議の数日後、札幌で8人の大学生が車と共に行方不明になった事が報告される。


 直ちに警察と近くのダンジョン対策部隊が調査に入る。

 サクラのバレない構想はその日の内に砕かれていた。

 サクラが聞いたらorzで泣くと思う。


 その翌朝、札幌刑務所で囚人がすべて消える事件が発生。

 監視カメラにモンスターと思われる黒い影が見つかり。

 札幌近郊でダンジョン発生が報告される。


 直ちに行方不明現場と周辺の森、刑務所と周辺の森にダンジョン対策部隊が調査に入る。

 周辺の市街地には警察により家、工場、ビル等の調査に入った。


 そして、札幌全域に緊急警戒体制が布告される。


 北海道全体も警戒対象になり、ダンジョン対策部隊と警察の共同で全域の調査が行われた。


 その後、老人の死亡が多数報告され、死亡原因が老衰又は不明となる。


 その後も多数の老人が深夜の寝ている状態で死亡し、ダンジョンモンスターによる襲撃と推測される。


 そして、死亡老人の付近で小さな黒い影を見たと報告された。


 たまたま撮影していた映像に小さく黒い影がみつかり、それが証拠になりモンスターの襲撃と断定する。


 ある日、老人の近くに居た男性が黒い影に拳で強打して倒す。

 そしてLvを習得しLv保持者になる。

 黒い影は寝ている老人以外は逃げるだけで襲われることが無かった。



ーーーーーー



 8人の行方不明と札幌刑務所周辺の捜索は何も見つからなかった。


 そして、別の刑務所が襲われると共に、老人死亡の地域も広がっていく。


 あまりにも多い老人の死が発生し、このモンスターの数は万を超えると報告される。


 とても北海道ダンジョン対策本部だけで対処は不可能と判断し、日本ダンジョン対策本部に応援要請を行う。


 日本政府は北海道ダンジョンの発生当初より詳細な情報を発表していた。


 ここに至り、応援部隊を送ると共に、国民に向けて重要情報を発表する決定を下した。


 北海道ダンジョン発生からの経緯と新情報。

 それは、小さなモンスターが万を超える規模で発生し、寝ている老人だけを襲い、老人以外はひたすら逃げる事。

 一般人が殴るだけでも倒せる事、1匹倒せばLvを取得する事、数を倒せばLvが上がる事を開示した。



 この政府発表はネットを駆け巡った。



 各種掲示板やSNSが祭りの様に大騒ぎとなる。



 それも当然である。

 Lvを取得するためにはモンスターを倒す必要があり、怪我や死ぬ危険がある。

 危険を押してLv取得のために自ら戦う人は少ない。

 今までは戦う状況になって必死で戦った人が多い。


 しかし、このモンスターは危険無く倒せる。

 そしてLvが取得できる。

 騒がない理由が無い。


 その日から多くの報告や動画が投稿される。


 逃げていくモンスターを追いかける若者、倒してLvを得た若者、小学生が木の棒で倒した動画。



 日本全国に情報はまたたく間に広がる。



 その結果、Lvを取得したい若者や大人が北海道に集まる。

 多くの人がモンスターを見つけては追いかけ回す。


 空前の安全モンスター討伐ブームが始まる。

 別名、Lv取得ブームが始まる。




 日本政府は声には出さないが、数が多過ぎるモンスターを国民が倒す事を期待していた。

 そして国民の安全のためにも、少しでも多くの国民がLvを取得するのを期待した。


 ダンジョン対策本部はLv取得者の中から、より有効で強力な技能 (スキル)を取得する者が現れる事を期待した。


 現在魔法系が少なく、回復や結界、解析等の技能持ちが極端に少ない。

 これら技能持ちは大金を出してもスカウトして育てたい状態であった。


 そして、特殊技能に目覚める人は更に少なく、特殊技能は普通の技能より優秀でオンリーワンな性能を持つ。


 ダンジョン対策本部は喉から手が出るほど欲しい人材だった。



 この内なる思いは最後まで秘匿される。




ーーーーーーーーーーーーーーー




 私は札幌に戻り、インターネットカフェで情報収集を始めた。


 そして【空前のモンスター討伐ブーム】の詳細を知った。


 前に、大学生や大人が小さなモンスターを追いかけている事は見てたし知ってた。


 しかし、安全にLvを取得する討伐ブームが起きている事は知らなかった。


 これは日本にとって日本人にとって、Lvを取得する機会になる。

 日本全体の安全率が上がる。

 日本を守る強力な手段だったと今更ながら感心してしまった。


 私がした事なのに、私偉い! と。


 より一層リトルダークウィスプを解き放す事にした。



 ちなみに、未だ私の元に来たダークウィスプは居ない。

 モンスターは本能的にダンジョンコアの場所が分かるので、迷子はいないと思う。

 大半が討伐されているのだろうか?。


 ダンジョン管理領域にダークウィスプが来たら、ラビがそれを検知して待機場所に誘導する。


 深夜に私が待機場所に行き、私の中の倉庫2に入れる事になっている。


 ダークウィスプは低Lv取得者では倒せない。

 睡眠もデスもLvが高くなっているだろう。

 普通に戦ってもデス解除護符が無ければ強いと思う。

 今後の計画のためにダークウィスプの数を揃えたいと思う。



 次に、インターネットで世界のダンジョン状況も調べる。

 結果、膨大な情報があり過ぎて全体を定量的に判断できる情報は憶測や予測程度で正確な情報は無かった。


 確かに今あるダンジョン数が正確に分かれば国も楽だろう。

 それに、本当に有効な情報は国に秘匿されて出ないだろう。

 律儀に情報を出すのは日本ぐらいか。

 それでも、ダンジョン対策部隊の情報は有名チーム以外秘匿されていた。


 試しにラビに聞いてみると、各国のダンジョン数等の大枠の情報が聞けた。

 場所や規模の情報は無理だった。

 個別情報でなければ問題ないようだ。

 これも国が多いので情報が多く、周辺国のみ聞いた。




 次に、滝川市の情報を調べる。

 北海道ダンジョン対策本部のWEBには特に変わった事が無かった。


 他に何かないかと検索して、ページの下の方に。


《助けて! 滝川市XXX町に多数のモンスター襲撃!》


 のタイトルの動画を見つけ、すぐにリンクをクリックし動画を見る。


 それはリアルタイムで今の出来事をビルの上層窓から撮影している動画だった。


 百を超えるモンスターが町になだれ込み、人を襲い殺している、モンスター暴走の中継動画だった。


(なぜ! ダンジョンマスターはモンスター暴走した!!!)




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