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第14話 トウカ



 茨城県ひたちなか市の近郊に転移する。

 ラビにダンジョン管理領域にモンスターかダンジョンが有るか聞いてみたが無かった。


「ラビ、次からはダンジョン管理領域にダンジョンかモンスターが居たら教えて」

『了解』


 まずは、何時ものように街に歩いて行く、スーパーを見つけ食料補給と共にインターネットカフェの場所を聞く。


 インターネットカフェに行き茨城県の最新のモンスター襲撃を調べる。

 1−4日毎にモンスター襲撃が発生していた。


 ダンジョン対策部隊が広範に分布しているが、範囲が広すぎて間に合っていなかった。

 だが、見つかり次第モンスターを殲滅していた。


 インターネットカフェを出て、虱潰しに広範囲を移動して探査する。


 山や森が多ければ転移で移動もするが、この近辺は人口が多く、ダンジョン対策部隊や警察が多く警戒している。


 転移が見つかってしまうと私の顔や服装や背丈が広がってしまう。

 やはり足で稼ぐしか方法が無い。

 電車やバスも活用しよう。


 まる一日交通機関を使い移動して探査したがモンスターを見つけただけで、ダンジョンは見つからなかった。

 とても疲れた。



 さすがお兄さんの攻略本を参考にしている、簡単に見つかるような場所には無かった。


 襲撃もバラバラな場所、タイミングもバラバラで頻発じゃない。

 ダンジョン対策部隊も必死に探しているだろう。

 私には広範囲の探査レーダーが有るので楽なのだが。


 今日はもう休もう。



ーーーーーー



 探査の場所を外側に徐々にひろげて探査する。

 夕日が沈む前、ようやくダンジョンを発見する。


 福島県にある日本アルプス山の中だった、ほぼ2県隣の山だ。

 これではダンジョン対策部隊が総動員しても見つけるのは難しいだろう。


 この周辺にモンスター被害は無かった。

 このダンジョンマスターは慎重でお兄さんの攻略本を熟知している、頭も良さそうだ。

 私の話もきっと聞いてくれる。


 明日、ダンジョンに行ってみよう。

 今日はもう疲れた。

 森の中で野営の準備をする、ワゴン車を出しのんびりしながら夕食を作り食べる。


 ワゴン車が意外と活躍しているが、誰かに見つかるとNOプレートから持ち主がバレル。

 北海道で行方不明になった強姦野郎だ。

 しかし外すのは不審車として通報される。

 うーーん、NOプレートを汚して見づらくしよう。


 しかし、ワゴン車を持ってて良かった。

 これが無かったら野宿は無理。


 私は木の人形だから暑さ寒さも関係なし、虫も刺さない、汗も出ない、大小も出ないから最高だ。


 服は、服のように見える何か、汚れが付いても消して出せば新品です。

 DPを消費するけどね。


 破れたら治癒魔法で修理。

 何か、使い方が変だが考えたら負けかなと。


 人間や生物の怪我は治らない、しかし治癒魔法です。

 考えるたら負けるよ。


 Lv保持者が持つ魔力的なバリアーのHPを回復するのが治癒魔法の役割。

 HPの数値はLvで表示される魔素保持量の中のバリアーに使用する値。

 だから、外見一切関係なく屈強な自衛隊も幼児もLvでHP数が決まる。


 深く考えたら生きていけないですよ。

 管理者はきっとネット小説のファンに違いない。



ーーーー



 寝るのが遅かったので、起きたら太陽が高かっった。

 朝食を食べ、出発準備をしてワゴン車を闇収納。


 今日はダンジョンマスターを私の配下として眷属にする予定。


「ラビ、ダンジョンマスターを眷属にするとは具体的にどうするの?」


『はい、ダンジョンマスターはコアが生成したモンスターの一種です。

 コアをサブコアにすると、ダンジョンとモンスターが消え、ダンジョンマスターも消えます。


 したがって、サブコア化する前にサクラの眷属魔法でダンジョンマスターからサクラ所有のモンスターに変える事で消える事を回避します。


 これが、ダンジョンマスターをサクラの眷属にする手順です』


「なんと! ひょっとしてラビや私が消えると眷属も消える?」


『はい』


 私は呆然と立ち尽くす。


 前に、殺人の罪は全て私が死と共に持っていくとカッコいい事宣言した。

 だが、私が死ぬとサブマスターも死ぬじゃん!


 うぉーーーーーーーーハズイ、穴掘って中に入って1ヶ月ぐらい穴の中に消えたい。

 私の黒歴史が増えた!


 サクラは頭を抱えながら膝を地面に落とす。


『サクラ、世界が終わる様な顔をして、どうしたのですか?』

「いや、私の人間原理が危うく世界崩壊になりかけた。

 穴掘って中に入りたいと急激に思った」


『意味が分かりませんが、スコップ出しますか?』


「いやいい、頭の中で穴掘って、今埋めてるところ。

 だ、大丈夫、うん、大丈夫。

 ちょっと修正でOK、そう、ちょっと修正でいい。

 黒歴史は消えた。

 うん、世界崩壊は回避された! 問題無い」


 何事もなくスクット立ち上がるサクラだった。


「よし! ダンジョンマスターを眷属にする!

 行こう」



 ラビの管理領域調査により、ダンジョン周囲にモンスターがいない事を確認。

 ダンジョンの1キロの離れた地点に転移、【物理強化】【魔法防御強化】の防御魔法を掛け歩いて接近。


「ラビ、他のダンジョン領域に入ったら警告して」

『了解』


 ゆっくりとダンジョン入口へ歩いて行く。


……

…………

………………



 相手のダンジョン管理領域の大きさが不明だが、最低半径1キロある。

 もうダンジョンマスターである私の接近を気が付いただろう。

 最初の挨拶は平和的にする予定。

 その後は流れで。

 攻撃してきたら即転移で逃げる。


 ダンジョンの入り口に近づいたが見えない。

 ラビの示す場所を注意して見ると、木や岩で隠したダンジョンの入り口を見つける。


 入り口まで5メートル接近してもダンジョン領域は無かった。

 ダンジョン領域に入った時点でラビが警告してくれる。

 警告で即後退する。

 ダンジョン領域は転移出来ないからね。

 私はラビットハートでは無い、慎重ダンマスだ。


 たぶん洞窟の入口からダンジョン領域だろう。

 外に領域があれば人間に見つかりやすい。


 相手のダンジョン領域はこちらのダンジョン管理領域探査が出来ないため洞窟の中は分からない、ここで相手の出方を待つ。


…………


 しばらく待つと入り口の草を分けて人が出てくる。


『ダンジョンマスターです』

(了解)


 伸長およそ160センチで横に太く樽型で筋肉質。

 モジャモジャの白髪に長い白髭に彫りの深い渋い顔、明らかにドワーフです。

 ドワーフは私を強い目つきで睨みつける。

 まずは挨拶から。


「こんにちは!」

「何しに来たんじゃ、お前ダンジョンマスターだろ?」


「はい、話をしに来ました」

「目的を言え!」


「私は攻略本に書かれている肩車の少女です。

 そこに書かれている目的のために来ました」


 ドワーフは目を見開いて驚く、しかしすぐに強い目つきに戻り問いただしてきた。


「なに! あの少女じゃと! 証拠はあるのか?」


「何を出しても、証拠にはならないでしょ。

 確認が出来ないし、同じ攻略本を持ってるし」


「むっ…… 確かにそうじゃ、……話とは何じゃ?」


「ストレートに言います。

 私の目的のために貴方を私の眷属に誘いに来ました。

 そして、貴方のダンジョンコアを私のサブコアにします。

 それが最も良い方法です。

 同じ元日本人、戦って殺したくありません」


 ドワーフはたちまち殺意の表情になり。


「ワシに勝てると思っとるのか!」


「勝てます。

 私は北海道のダンジョンマスター、番号157ー23279のレコード保持者です。

 既に10万人以上殺しています。

 私の覚悟はお兄さん、ナグモよりも遥かに固く深いです。

 ダンジョンマスターを何千人殺そうとも変わりません。

 私と戦ってみますか?」


 私は殺気を込めた能面の様な冷たい微笑を放つ。

 ドワーフは私の視線に当てられ数歩後ずさる。


『相手のコアより、マスターの番号の問い合わせが来ました。

 答えていいですか?』

(よい)


 ドワーフは突然、全身の力を抜き諦めたような視線になる。


「今、コアからマスター番号が正しいと連絡が来た。

 嘘は無いようじゃ……

 とんでも無い子供じゃ、ワシでは勝てん。

 眷属とは何じゃ?」


「ダンジョンマスターから私のモンスターに変わります。

 生殺与奪権は私が持ちます。

 私の命令には従ってください。

 私が死ぬと貴方も死にます。

 それ以外は今と同じです。

 どうですか?」


「選択権は無かろう、うむ、腹は決まった! 眷属にしろ」


「では、そちらのコアに指示して全てのモンスターを停止して下さい」


…………


「したのじゃ」


(コア同士連絡できるのは知らなかった。

 何故できるの?

 それと、相手のコアにモンスターの停止を確認して)


『他のダンジョン管理領域にダンジョンコアが入ると、コア同士が会話可能になります。


 相手のコアに確認します…………

 確認完了モンスターは停止しています』


(わかった)


「近寄って眷属の魔法を使うので、頭の中で眷属の了承が聞かれたら、それに了承と答えて」


 私はドアーフに近寄り右手をドアーフに向け【眷属】の魔法を使う。


 頭の中に《眷属の魔法を使いました》と聞こえる。

 数秒後 《相手が眷属を受け入れました》 と響く。

 初めて使うけどわかり易いと思う。


「これで眷属になったかの?」


「なったよ、よろしくね。

 あっしまった! ここからコアルームに歩いていける?」


「付いて来るのじゃ」


 憑き物が落ちた様に優しい顔になったドアーフが、ダンジョンの奥に向かって歩き始める。

 その後を私はついて行く。


「名前何ですか? 私はサクラ」

「ワシはトウカじゃ、嬢ちゃんは幾つだ?」

「これでも17歳なんですよ」


「若いな、ワシ生前は65じゃ。

 体が悪くて死んでの、健康な体に強い力を望んでドアーフと言う種族になった。

 この種族年齢じゃと25歳じゃ、若いじゃろ。

 あと300年ぐらい生きれるらしい、自慢じゃ」


 と言ってガハハハト笑うトウカ。

 外見で老人だと思ったが若かった、びっくり。


「しかし、嬢ちゃんのレコードには驚いた。

 無茶苦茶な記録じゃ、2番がゴミに見える。

 後で秘訣教えてくれ」


「いいよ、これからして貰うから実地で分かるよ」

「そりゃ楽しみじゃ。

 これでも随分苦労したのじゃ。

 でも嬢ちゃんには負け過ぎてるがな。

 ガハハハ」


 そして、トウカはポツリとこぼす。


「一人で頑張るのは辛かった、話すのも何ヶ月ぶりじゃろ」


 2人で雑談しながらダンジョンを歩く、雑談の中でトウカの生まれが戦前と聞いて驚く、死亡時期が数十年違う。


 それからも歩き続け、随分深いダンジョンだった。

 多数見るモンスターは立ったまま動かなかった。


 ようやくコアルームに着く。

 中央の台座の上にダンジョンコアは浮いていた。


「ダンジョンコアをサブコアにするよ」

「了解じゃ」


 台座に近づき右手をコアに当て【サブコア宣言】と発言する。


 頭の中に《サブコア宣言が発動されました10分お待ちください》とアナウンスが流れる。


「トウカ、10分かかるから肩車の少女の証明見る?」

「有るのか! 見せて欲しいのじゃ」


 封書を出して「お兄さんからの手紙だよ、読んで」と言って渡す。


 トウカは、封書を受け取り表と裏を何度も見てから、中身を出して読み始める。


 しばらくしてトウカは静かに涙を流す。

(やっぱり泣くよね)


 落ち着くのを待って。


「その手紙の重要な点は2枚目と3枚目かな」


 それを聞いてトウカは真剣に考え始める。





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