トウカはコアルーム内をうろうろ歩きながら考えに耽っていた。
パタッと立ち止まり私を見て。
「この゛管理者の真の目的を考察する゛の全てが禁則事項になっているのじゃが。
これ即ち、知られてはまずい何かがあると言う事じゃな?」
「そう、知られては不味い、又は今知る必要がない、又は自分で考えろの3っの意味があると思う。
私はそれも知りたいし重要な情報と考えている。
それに多分、3番目の自分で考えろが一番強い意味だと思ってる」
「ホホホ、これは楽しいじゃろ。
こんな楽しい秘密を残すとは、生きる楽しみができたわい。
嬢ちゃんに協力する意味もマシマシじゃ。
非力じゃが協力するぞ、そしてこの秘密も解くのじゃ」
「うん、よろしくねトウカ」
ニッコリと花開く様な笑顔をトウカに向けた。
トウカは思わず目を見張り、そして嬉しそうに笑う。
その瞬間、サブコア化が終わりゴゴゴゴと音と振動が響きコアルームの入口が消える。
サブコアは透明な球体の休止状態になり、
トウカは驚いて周りを見渡す。
「終わったのか?」
「うん、サブコア化終了。
外に出るけどトウカ人間に変身できる?」
「いや出来んのじゃ」
「よし、トウカに魔法とスキルを追加する」
トウカの種族変更と魔法等を追加する。
種族 エルダードワーフ Lv1/20
ドワーフ系の下から3つ上。
物理が強い。固く力もある。
魔法もまえより使える。
魔法
デス(中) Lv7/10
睡眠(中) Lv7/10(範囲可)
麻痺(中) Lv1/10(範囲可)
アクティブスキル
人化
その他は元の魔法やスキルを持つ。
「睡眠と麻痺は攻撃前か逃げる時に使用。
デスは死呪い、デス耐性が無ければ1秒で死ぬ。
デスは痛みや苦しみが無い一番安楽な殺し方。
インビジブルと闇収納は持ってるね。
あと人化は人間に化ける。
まずは人化してみて」
トウカが【人化】を使った、目の前で輪郭が薄くなり、横に太い大樽が縦に長く伸び始める。
体積保存の法則があるのか知らないが、横の分が縦になった。
背が高くスマートな輪郭の人間が現れた。
身長180の白髪白髭、顔は厳しそうな顔立ちだが歳と共に出来上がった優しそうな面影もある。
体は背筋がピンと伸び健康的で、ドワーフの服が上下に離れ腹筋が見える、筋肉質でシックスに割れていた。
エルダードワーフの体が基だろうか。
その体には丈の短すぎてだぶだぶのドアーフ服を着ていた。
トウカが見える様に姿見をDPで出す。
トウカは姿身の前で興味深げに見る。
「トウカの服は執事服が似合いそう、出していい?」
「お任せするのじゃ」
「あぁーー、その顔と姿で゛じゃ゛は変、変えない?」
「うむ、生前は歳と病気で体が弱く、髪も髭も真っ白だったから、じゃを好んで使っていた、それらしかったしな。
何となく老成したいい感じと思っていたが戻すか」
「では、リクエスト! 私の老執事で゛お嬢様゛と呼んで!」
「了解しました、お嬢様」
「うん、いい、いい、凄くいい、憧れだった、それでお願い!」
ピシリ背筋を立て。「畏まりました」とお辞儀する。
トウカの生前の仕事が政治家秘書と執事であり、産まれは戦前で戦中戦後の厳しい世界に生きていた。
私は素早く執事服一式を出し、それをトウカに手渡し後ろを向いた。
受け取ったトウカは、ドアーフの服を脱ぎ執事服を着始める。
パリッした新品の服に袖を通し、昔を懐かしながら着こなすトウカ。
「着ました、お嬢様」
振り返り、執事服を着こなした老執事がいた。
「きゃー立派! 私の老執事、夢が一つ叶った」
思わずトウカに抱きつく。
トウカはまるで孫を慈しむように微笑み、手を頭に添えた。
ーーーー
トウカは思う、こんな小さな少女が何故あれ程のレコードを出せたのか?
ナグモ殿にあれ程の影響を与えたのか?
そして少女が出した、身も凍る様な冷たい視線と殺意。
戦争で何人も殺した兵士に会って話した事がある。
その時の死闘と生き残る戦いの話、その兵士の持つ雰囲気は、今にも殺しそうな視線と殺気が有った。
その時の殺伐な雰囲気をこの少女は持っていた。
どの様な死線をくり抜けて来たのだろうか。
今は、まるで外見のままの幼い子供。
この少女の過去に何が有ったら、こんな少女が出来上がるのか?
疑問が消えない。
ーーーー
私は散々騒いだ後、冷静になりサブコアを闇収納する。
「では外に出て移動しよう。
私にトウカと言う保護者が出来たから、ホテルや漫画喫茶に泊まれる。
こんな小さな少女が一人泊まったら通報案件だから、今まで野宿だった。
私を抱っこして転移するよ。
私の持ち物か、私が持ち物ならまとめて転移出来るから。
抱っこよろ」
トウカは力も強く、右腕に座る形で抱っこされ手をトウカの体に回す。
そして、地上に転移。
ダンジョン入口前に着きダンジョンを見ると、入口は消え、入口を隠していた物が崩れていた。
「このまま抱っこよろ、連続転移で移動するよ」
(ラビ、会津若松市の近くのまで安全に連続転移よろ)
『了解』
その声と共に数回転移して会津若松市の近くの森に着く。
景色が何度も変わりトウカが驚愕していた。
「ここは何処ですか? お嬢様」
「会津若松市の近くの森の中、ダンジョンから数十キロほど離れた場所かな」
「少し、理解が出来ないのですが……」
「秘密で」
「分かりました、お嬢様」
抱っこから降ろしてもらい街に向かって歩き始める。
「今日は千葉市のホテルに入ってベッドで寝たい。
試しにホテル使おう、トウカお願いできる?」
「やってみましょう」
「名前は偽名でよろ、人生初のホテルだよ。
今まで野宿だけだし、やっとまともに寝れる」
トウカは人生初の言葉に驚く、17年間一度もホテルを利用していないとは、家族旅行や修学旅行は無いのかと。
しばらく歩いて街に入る時、「あ、お金」と言いながら止まってバックパックを出し、可愛い財布を出し中身を見る。
「うーーん、最近お金入手してなかったし、お金使ったから残り少ないなーー。
闇収納にも無かったし」
トウカはサクラの困った顔見て観察する、そして解決策をひらめく。
その建物に手を向けて。
「お嬢様、あちらにパチンコ屋が見えますね。
ギャンブルは否定しませんが、パチンコ屋はやり過ぎです。
少しぐらい減った方が日本のためですよ。
あそこに換金所が有り、その中のお金を提供して頂くのは如何ですか?」
「なるほど、日本のために殺しより遥かに優しい方法です。
人に見られない場所に移動しよう」
移動しながら、換金所の詳しい内容と部屋の状況を聞いた。
そして、倉庫の様な建物の裏に入り、周りの安全を確認、ラビに警戒を頼む。
トウカと共に座り体をトウカに預ける。
「私が人形になったら保護してね。
ちょっと行ってお金を提供してもらう」
憑依を解くと、カシャと小さな音と共に服を着た木のデッサン人形がトウカにもたれかかる。
私はすぐに【インビジブル】して換金所に向かって飛んでいく。
換金所の壁を抜け部屋に入り。
中にある小さな金庫を見つけて、金庫の壁を抜けて狭い金庫の中を覗き込み、お金を見つけて金庫の中に入りお金を【闇収納】し【インビジブル】する。
金庫を離れて換金所を出るとき、換金所の店員のすぐ横を通ったが何も気が付かなかった。
トウカの元に戻り、寄りかかっているパペットドールに憑依してトウカを見上げる。
そして、闇収納から数十万をトウカに差し出した。
トウカが目点で固まって動かなかった。
「後で説明するから、動いてーー」
トウカは錆びたロボットの様にギギギと動き目線を合わせた。
「お嬢様は、私の予想の遥か先にいますね。
さすがレコードホルダー」
と言いつつ、私の考えた方法が野蛮すぎたとブツブツ言ってる。
戻ってこーーいと思いながら、トウカの手にお金を押し付け、再起動したトウカがお金を財布に入れる。
そして一緒に立ち上がり何食わぬ顔で歩き始めた。
しばらく歩いて、ファミリーレストランを見つけ、昼ご飯を食べる事にした。
トウカと言う保護者が居るので安心感が大きく、のんびりと食事ができた。
「保護者がいるから、こんなにゆっくり食べるのは久しぶり」
「私も外で普通に食べれると思わなかった。
お嬢様には感謝です。
ダンジョンマスターとは奥でひっそり暗躍する者と思ってました。
目から鱗です」
「でしょ、これからはアクティブに動くよ!」
「承りました、お嬢様」
と言って笑いあった。
トウカは、なんと型破りなお嬢様だと、心底から思う。
このお嬢様がどこまで進むか楽しみで仕方が無い。
そして、その隣を歩きたいと願う。