その後、のんびりと会津若松市を観光しながらホテルを探す。
電話としてスマホが欲しいと思い、携帯屋に入るが私を証明するものが無いため無理だった。
残念。
良さそうなホテルを見つけ、トウカが手続きをして無事ホテルのツインルームに入る。
もちろん祖父と孫の偽名、偽住所にした。
私は部屋に入るなり靴を脱いでベッドにバタリ倒れ込み。
「今日も疲れたーー、ベッドだーー、夜8時まで寝るから8時に起こして、それから夕食とお出かけ。
トウカ自由にしてて、人間じゃ無いとバレnい様にね、おやすみーー」
追加の注意点に気が付き、続けて話す。
「あ、自分を探そうとか、人類に情報を出そうとすると管理者がトウカを消すから絶対禁止。
トウカが消えたら私が寂しからね。
おやすみーー」
「畏まりました。お休みなさい、お嬢様」
私は目を瞑ると直ぐに眠りに落ちた。
ーーー トウカ ーーー
トウカは、お嬢様の可愛い寝顔を、孫を見る様な優しい顔で見てから、周辺の確認と情報収集に出かける。
《トウカが死亡したのは2000年頃、インターネットやインターネットカフェは普通に存在し、トウカは使えた》
サクラの事が知りたくてインターネットカフェに入り、北海道のダンジョン情報を調べる。
そこに有ったのは、大量の受刑者の死亡と70歳以上の老人の死亡。
そして空前のモンスター討伐ブームの膨大な情報だった。
サクラは死者を選べたのかと、私には出来なかった事に驚きを禁じ得ない。
羨望にも似た衝撃を受けた。
そして、滝川市のモンスター暴走と突然のダンジョン消滅。
ダンジョンコアを破壊した人物を今も探していた。
たぶんサクラがダンジョンを破壊したと思われ。
もし道を間違え、サクラと戦ったら私は死んでいただろう……
私の判断に救われた。
その後も色々と情報を調べる。
……
…………
………………
8時前にホテルに戻りサクラを起こす。
「起きてください、お嬢様、時間です」
と言って、サクラを少し揺すって起こす。
「うんーー、うんんーーーー、時間かーー」
と目を擦りながらサクラが起きる。
ーーー サクラ ーーー
ベットを降りて靴を履き、小さなテーブルの前の椅子に座り、目線でトウカを誘い、正面の椅子に座ってもらう。
「私の説明するね、よく聞いて」
「はい」
私は自分の胸に右手を当てて。
「この体は変異型パペットドールという木の人形、本体はエンシェントダークエレメントと言う精霊系種族。
普段はパペットドールに憑依すると、この実態がある人間の体になる。
私が人形から離れて隠れると、多分誰にも見つけられないかな。
尚かつ壁はすべて素通りできる。
換金所では透明になって換金所に入り、そのまま金庫の中に潜り込み、お金を闇収納して出てきただけの簡単なお仕事」
と言ってVサインを出してニッコリと笑う。
「私に盗めないのは無い! 命も盗めたり。
とにかくコソコソ隠れて何かするのが得意」
トウカはそんなサクラを見ながら、きっとそれだけでは無い、もっと驚くことが有ると考える。
例えばあの転移、私にはできないし方法も分からない。
「トウカも私のやり方や方針、考え方を覚えて理解して欲しい、いいですか?」
「承りました、多分色々聞くのでよろしくお願いします、お嬢様」
「うん、よろしく。
それじゃ、まずは夕食して、終わったお出かけです。
ふふふ、私の秘密その2を実地するよ」
と言いながら椅子から立ち、二人で部屋を出る。
ホテルを後に夜の街に出かける。
近くのレストランで夕食を食べて外に出て、暗い夜道を誰も居ないとこを探して歩く。
ビルの隙間、誰も来ない奥に入り、トウカに抱っこしてもらい森の奥に転移する。
「トウカ、今から私がする事と同じ事をトウカにお願いする。
トウカの担当地域は、まずは関東から上の全域をしてもらう。
今は同じ事が出来ないが、サブコアのサブマスターになれば出来るのでよく見てて」
「畏まりました」
私の前に私を含む20メートル四方のダンジョン領域を作る。
そこに何時ものリトルダークウィスプを5000召喚する。
召還陣が重なり過ぎて陣が見えない程の召喚陣から無数の小さな闇の靄のような玉が浮かび上がる。
トウカは、膨大な数のモンスターを見て戦慄する。
「これが私のモンスター、リトルダークウィスプ、これには催眠 (小)Lv3とデス (小)Lv3を習得している。
このリトルダークウィスプはLVを持っていない人に憑依できる。
このモンスターは一般人でも強く叩けば倒せる、とても弱いモンスター。
しかし、私に取って最高に頼れるモンスター。
指令を出し解き放つので一字一句覚えなさい。
よろしいですか?」
「畏まりました」
リトルダークウィスプの集団に向き。
「リトルダークウィスプのみんな、今から最重要な指令を伝える。
必ずやり遂げて欲しい、いや君達ならやり遂げられる!
70歳以上の老人に対して、夜の寝ている時に憑依し、身体の中から催眠魔法を行い、その後デス魔法をかける。
デスが掛れば3時間後に死ぬ。
それまで憑依したまま、目が覚めそうなら睡眠を重ねる。
死ぬ時に消える生命力を魔素に変えて吸収し、次を探す。
目的の老人以外は攻撃するな、逃げろ!
昼間は隠れて過ごし夜に活動しろ!
君達にしか出来ない事だ!
ダークウィスプに進化したら私の所に戻ってこい!
指令を遂行しろ!
行け!」
ぶわーーーーと、膨大なリトルダークウィスプが散って行く。
全て見えなくなるまでリトルダークウィスプを見送る。
送ったあとトウカに向き。
「これは、70歳以上の老人を選んで処分する方法。
だから日本に一番ダメージが少ない。
子供でも倒せるモンスター、逃げるだけで攻撃しない安全なモンスター。
間引きが避けられないなら、日本にとって一番いい方法を私は選んだ、死する人を選ぶのは私の罪、何の罪も無い老人を殺すのも私の罪。
地獄の業火に焼かれようとも私は行う」
私の頬に一筋の涙が流れる。
やはり人に説明すると心に来る、行動の結果を再認識する。
涙が流れない様に上を向いて続ける。
「でもね、Lvが無い一般人でも叩けば倒せる。
そして、Lv保持者になって魔力のバリアーを持ち人によっては魔法やスキルを習得する。
数を倒せばLvが上がる。
モンスターから攻撃されないから安全に倒せる。
日本人全体がLv保持者になって強くなるチャンス。
北海道のモンスター討伐ブームを全国に広め、継続する。
日本人の間引き数も多いから不用意にダンジョンが増えない」
顔を降ろしてトウカを見る。
魂を込め、切れるような視線でトウカの瞳を刺し。
「私が日本の全ダンジョンを支配しコントロールする!
そして、間引きもコントロールする。
その先に日本の存続を目指し世界と戦う。
そのための第一歩として日本の全ダンジョンを制覇する!
これが第一段の目標!
トウカ、共に地獄の道を進む覚悟を決めろ!」
トウカは、焼き切れるような視線を受け止め覚悟を決めた。
「はい、共に進む覚悟を決めています」
「良かった」と小さく答え、上を向いて星空を眺める。
しばらく夜空を見上げていた。
……
…………
(ラビ、私と同じ様にトウカの中にサブコアのダンジョン作るの出来ない?)
『管理者に聞いてみます』
……
『回答来ました。「チート過ぎてだめ」です。
私もここまで有効活用できると思いませんでした』
(くっ、残念だよ)
仕方ない、私の中のコアは秘密で行くしか無いか。
聞かれても秘密で惚けよう、出来ない事は知っても意味ないどころか害悪になる。
1番いいのは勝手に憶測、どんなに行っても憶測止まり。
だいたい、知っても気にしない人は、知らなくても気にしない。
知って、差別だ何だかんだと騒ぐやつは、知らないと知る権利がどうのこうのと騒いで、知ったらより騒ぐからたちが悪い。
結局騒ぐ人間は騒ぐ事が目的になって、真の目的は別にある。
「よし、帰って寝て明日は群馬県の赤城山に行って、トウカ用のダンジョンを作ろう。
抱っこよろ」
「相変わらず唐突ですね、お嬢様」
と言いながら抱っこされ「転移!」と言いながら安全な場所に移動。
ホテルに帰ってお休みです。
……
…………
翌朝ホテルをチェックアウトして、群馬県の赤城山に行く。
転移を繰り返して赤城山の山頂近くに着く。
山頂より見渡し、山が険しく人が来ない場所。
上空からも見えない場所を探し、転移で現場に行き安全を確かめる。
何度も繰り返して最良の場所をトウカと共に決める。
私のKP稼ぎの方法はリトルダークウィスプを解き放つ方法だ。
モンスター集団の遠征は必要無い。
だから場所は人から離れている難所で、ダンジョン管理領域に街がある場所が良い。
場所が決定したため、休止状態のサブコアでダンジョンを作り活動状態にする。
そして、サブコアにDPを補充する。
コアルームに二人で入りトウカをサブマスターに登録する。
「トウカ、このサブコアに手を当てて、サブマスターに登録する」
トウカがサブコアに手を当て私も手を当て【サブコアにトウカをサブマスターに登録宣言】
二人に頭の中に。
《サクラの眷属、トウカをサブマスターに登録しました》
「よし、これでほぼマスターと同様の事ができる。
これでトウカもリトルダークウィスプを作り解き放てる。
解き放てば何もせずにKPがゴンゴン入って来るよ。
当面入手KPの一部をDPに自動で変換する。
一部でも前より余裕で多いと思う。
サブコアAIとも話せる、どうかな?」
トウカしばらく無言で立ち、何かと話したり確認をしていた。
サブコアは私のコア従属になり、ラビを通してサブコアを自由に私は操作できる。
サブコアの作ったダンジョンは私のダンジョンでもある。
「はい、ほぼ前と同じで問題無いです」
「よし、ダンジョンの中身を作ろう」
トウカと相談しながらダンジョンの仕様を決めた。
ダンジョン
地下1層
横60センチ縦40センチの狭い通路だけの迷路形ダンジョン、入口からコアルームまで最短ルートが約10キロの一層だけ。
行き止まりが多いダンジョンにした。
300メール四方の部屋に森や泉がある自然環境の部屋を10部屋作り、通路の端にまばらに配置。
ダンジョンを防御する攻撃魔法を持ったウィスプ系の集合と休憩部屋であり、モンスターチームの集団連携攻撃訓練の部屋とした。
知能の高いハイピクシーを部屋のリーダーにして各グループを管理し、巡回計画や戦術的防衛を任命した。
通路にはハイピクシーが計画した部隊で、攻撃魔法を持つウィスプ部隊が交代で巡回する。
基本壁の中の移動なので、通路にはモンスターが居ないように見える。
コアルームの近くに私の亜空間倉庫2と同じ部屋を作り、解き放ったリトルダークウィスプが進化したダークウィスプの帰還場所とした。
私の中の倉庫2のダークウィスプをこの部屋に移動。
ここにもハイピクシーを配置して、攻撃チーム作りを任命し、防衛巡回に参加させる。
地上のダンジョン管理領域は半径30キロにした。
「ふふふーー、匍匐前進しか進めない、行き止まると匍匐後退で戻るしかない。
通路が狭いから迷路が通常の数倍細かい。
最短でも何日掛かる事か、ご飯もトイレも寝るのも難しい。
入ったら匍匐移動だけでも死ねるよ。
前も後も横の壁からもウィスプ系の攻撃。
ウィスプ系は壁に入って移動するから、真横に出て0距離から攻撃できて防御が困難。
弱点は精霊系、妖精系、小人系に弱いけどね。
人間や中型以上にかなり強い」
「これは、底意地………… いや素晴らしいです、お嬢様!」
私に睨まれるトウカ。
「私みたいなか弱い少女は正面戦闘は無理!
コソコソ戦うのを極めるのです!」
トウカは、か弱いは違うと心の中で思う。
時が過ぎて深夜になる。
「深夜になったのでトウカ、リトルダークウィスプを5000召喚して関東地方に放出、帰りはこのダンジョンに。
私も北海道に向けて5000出す」
「お嬢様、5000は多くありませんか?」
「いいえ、全然足りない、日本人の半数を1年でLv保持者にするには。
約6000万人 / 365日 = 一日に約16万のリトルダークウィスプが必要。
この計算は、すべての人が1つだけ倒してすべて倒される数。
帰還するダークウィスプも居るし、倒してLv保持者になった人はLv上げのために更に多く倒すから、この数倍居ても6000万人には全然届かない。
たかが数千放出しても全く足りないの。
それに、70歳以上の人口は2千数百万人居る。
今まで十数万人ぐらい老人をKPに変えてるけど、まだ全然少ない、今のペースだと十数年かかる計算、たぶん遅いかな」
サクラの壮大な目的にトウカは「畏まりました」とうなずく以外無かった。
そして、二人で部屋が真っ暗になる程のリトルダークウィスプを召喚して解き放つ。
(ラビ、前に出したリトルダークウィスプの帰還場所はこのダンジョンに変更でよろ)
『了解』
「あとは、関東より上に向けて各地にリトルダークウィスプを送り出す簡単なお仕事です。
今から各地に向けて2000ずつ放ちます。
トウカいいですか?」
「畏まりました」
二人で何回も何回も召還を行い、リトルダークウィスプを各地に送る。
「トウカ、日本人のLv習得も出来て、間引きも出来て、私達の地力が更に増えて、他の事もできる、完璧です」
朝になり疲れ果てた二人はダンジョン内にワゴン車を出して倒れる様に寝た。
この後、関東で多数の老人が死亡する。
現場では黒い霞の玉ようなモンスターが目撃され、モンスター討伐ブームが北海道、東北に続き関東まで広がった。