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第19話 私に常識的な攻防戦の考えは無い!


 攻略を初めて数時間、いろいろなチームが出たり入ったりしていた。

 なんだかウェアウルフ達が楽しそうだ。

 あちらこちらで話をしているが戦闘報告だろう、そんなに戦闘が楽しいのかな?

 ウェアウルフはバトルジャンキーで脳筋なのだろうか?

 いや、きっと攻略を楽しんでいると思う。


「なんか、楽しそうだねーーみんな」

「ですね、やはり真のモンスターは戦いが好きかもしれません。

 私のモンスターは特に何もなかったですが」


「チーム外の仲間に戦闘や連携の報告と相談や雑談や状況を楽しく談義かな?」

「かもしれません」


「終わったら、チームでの連携訓練や模擬戦、集団の行動訓練とか良いかもしれない。

 それと、集団での競技や娯楽とかすれば、

 目に見えない強さが上がるかも?」


「考えられます。やってみましょう」


 ウェアウルフの動きを見ながら雑談してたら眠くなってきた。


「トウカ、私寝るのでお休みーー、トウカも寝ていいよ。

 転移されない様にダンジョン含み、周辺1000メートル四方をダンジョン領域にするね。

 敵の監視もダンジョン領域の外からしか見えないし」


 私を中心に周囲1000メートル四方をダンジョン領域にし、椅子の背もたれを倒す。


「おやすみーー」

「お休みなさい、お嬢様」


 ダンジョン領域が出来ると、ウェアウルフ達は一斉にサクラを見て、嬉しそうな顔をしていた。

 しばらくしてキングが来て、サクラの寝姿を見て微笑む。

 その後もウェアウルフ達が代わる代わる、静かに歩いて寝姿を見ていった。


 モンスターはサクラに好意を持っているのか?

 私のモンスターには感じなかったのに。


 トウカは思う、このダンジョン領域はなぜ自由に作ったり消したりできるのか?

 前に一度聞いたが秘密と言われた。


 サクラにはまだ出していない手札が多いのだろう。



……

…………

………………



 目が覚めたら朝だった。

 目を擦り椅子の背もたれを上げる。


「おはよーー」

「おはようございます、お嬢様」


「ずっと起きてたの?」

「はい、ウェアウルフ達を見ていました。

 祭みたいな感じで楽しんでるようです」


 周りを見てみると、ウェアウルフ達が減っている。

 でも、出入りは多いようだ、ダンジョンの中に多く居るのだろう。

 楽しそうなので問題は無いかな。


 1日弱の時間がたった。

 ダンジョンは広くて深いのか? 罠が多いのか?

 モンスターだけならすぐ攻略できると思った。


 タケル君は中二病で偏った地頭の良さがありそう。

 私も全てネットと本の知識だけだし、同じかな。

 私の想像や妄想知識がこの状況に合っていただけだし。

 生活や常識の知識は殆ど無いと思う。

 逆に考えるんだ、常識的な人には私の奇策に弱いと。

 あれ、お兄さんに思いっきり笑わらわれた気がした。


 何となく、コアルームで一生懸命、罠や迷路、障害やモンスターを配置して、あたふたしているタケル君が見える気がする。

 『ぐあーー、第6防衛戦が破れたーー』

 とか言ってそう。


 大量DPによる力技でおまかせ攻略だが、もしだめなら、この十倍出すだけ。更に駄目なら百倍だ!

 モンスター6万体、たぶん余裕!。


 私が全面に出る常識的な攻防戦の考えは無い! むふーーーー。

 と椅子に座りながら胸を張って右手を上げる。


 それを見たトウカは、また変なこと考えてると、そしてサクラの考えが読めないと諦める。


……

…………


 次の日の昼、ダンジョンの入口から多くのウェアウルフが出て来て歓声が上がる。

 そして、キングが走って来る。

 歓声を背に受けて、嬉しそうに宣言する。


「サクラ様、コアルームまで攻略しました!」


 それを聞いて笑顔でキングを迎え、ワゴン車を降り、キングと全体を見て魔法の大声で。


「良くやった! お前達の働きは私の誇りだ!」


 その瞬間、世界が割れる程の歓声が立ち上がる。

 キングが感動して嬉し涙をこらえていた。


 こんなモンスターの姿をトウカは見たことが無い。

 サクラのモンスターに対する想いの強さかもしれない。

 私はモンスターをただの道具で消耗品と思っていた。

 サクラのモンスターに対する言葉には想いが籠もっている。

 その違いかもしれない。



 二人は大勢のウェアウルフ達に迎えられてダンジョン入口に向かう。


 キングに「コアルームまで案内を頼む」と話し。


 キングは素早く隊列を整える。

 前にキングとロード、後に私とトウカ、周りをロードが護衛し、周囲にピクシーとウィスプが飛んでいる。


 そして、コアルームまで制圧したロードが案内してダンジョンに入る。


 入口は草木の斜面に出来た横2メートル縦3メートルの土の穴だったが、10メートルほど中に入ると横5メートル縦4メートルの石畳、石壁、石の天井。

 いかにも、ゲームの様な直角で構成されたダンジョン通路だった。

 タケル君はゲーム好きと決定。


 迷路を進むと、そこかしこに壊れた罠や落とし穴、段差、階段、壊れたドア、壊れた石像が続いている。

 苦労して作ったのが力の暴力で壊されていた。

 うん、数と力の暴力はやはり強い。

 これからの防衛にはそれを超える奇策の罠が必要に思う。


 仲間にしたタケル君には、ぜひ反省と構築を頑張ってもらおう。


 このダンジョンに匍匐前進の通路は無い。

 私もウェアウルフを使おうと思ったら通路は広くなる?

 いや、そんなふうに使わないし。


 ウェアウルフを使うなら力技をする。例えば巨大部屋の中、砦とウェアウルフ軍団で迎え撃つとか。


 匍匐前進で入ったら1000のウェアウルフ軍団に囲まれるとか。

 いやいや、もっと変なのがいい。

 ぐふふ、と笑いながら想像を巡らしていた。

 横に居るトウカが変な目で見てくる。


 長い距離をロードとキングに案内されて進む。

 タケル君の苦労の残骸に哀愁を感じる。


 そしてコアルームの前へ。

 ロードとキングの後にコアルーム入ると、ダンジョンコアの前にタケル君が両手をついて頭を床に着け土下座していた。


「ごめんなさい! ごめんなさい! 殺さないで! 部下でも何でもなります!」


 よし、ゲーム知識と罠に詳しいタケル君ゲット!


「君の名前は?」

「大悪魔アモンです」


「君の名前は?」

「大悪魔ア………」


 被せるように強く問いただす。


「君の名前は!!」

「……タケルです……」


「以後、大悪魔アモンは禁止、君はタケル、いいですね!」

「はい……」


「顔を上げなさい」


 タケルは正座になり私と視線が合う。

 私の仮面の様な冷たい視線を受け、ブルっと震えて冷たい汗をかき始める。

 そして、その強い視線に込められた決意が、自身の覚悟とかけ離れているのをタケルは感る。

 か、勝てないと。


「私はこのコアをサブコアにする。

 その時、ダンジョンマスターのままでは死ぬ」


 そんなーーと嘆き声が聞こえる。


「最後まで聞け!」

「はい!」


「君の命を救うには、私の眷属になるしか方法は無い。

 君はダンジョンマスターから私のモンスターに変わり、生殺与奪権は私が持ち、私の命令には従ってもらう。

 私が死ぬと君も死ぬ。

 どうですか?」


「………分かりました、眷属でお願いします」


「ちなみに、隣に居るトウカは福島県に居たダンジョンマスター、今は私のモンスターで、サブコアのマスター、サブマスターになっている。

 君も同様にサブマスターを担当するが、そのコアAIは私が管理している。

 変なこと考えると死ぬから気おつけてね」


「はい!」


「よろしい、では眷属の魔法を使うので、頭の中で眷属の了承が聞かれ、それに了承と答えて」


「はい」


 私はタケルに近寄り右手を向け【眷属】の魔法を唱える。

 頭の中に 《眷属の魔法を使いました》そして 《相手が眷属を受け入れました》と響く。


「さあ立って、よろしくタケル」

「はい、よろしくお願いします」と言ってお辞儀をするタケル。


「ちなみに、トウカは私の老執事でタケルの先輩だ。

 タケルは元20歳だが、ここでは私の弟だ!

 文句は認めん、いいね!」

「ぐ、納得いかな……」


「いいね!!!」

「はい!」


「よし! お兄さんは一人しか居ない、その席はもう無い!」

「はい」


 その言葉を聞いたトウカは複雑な思いでサクラを見る。


「何か持ち出したいものがあったら取って持つように。

 持った物以外の他の部屋や物は消えるから」

「持ってきます!」


 急いで別の部屋に行きいバッグを持ってきた。


 ウェアウルフ達にはコアルームを出てもらい、コアのサブコア化時にダンジョンジョン外部に転送される説明をした。

 コアルームには私とトウカとタケルの3名となる。


「サブコア化するよ、完了に10分かかる」


 コアに手を当て【サブコア宣言】と発言する。

 頭の中に《サブコア宣言が発動されました10分お待ちください》とアナウンスが流れる。


…………


 10分後、ゴゴゴゴと音と振動が響きコアルームの入口が消える。

 コアは透明な玉になる、休止状態のサブコアを闇収納する。


「サブコア化終了。

 外に出よう、トウカ抱っことタケルを背負って」

「畏まりました、お嬢様」


「え? 背負う?」

「転移できないでしょう、ここに残る?」

「あ、お願いします」


 トウカが二人を担いだ状態で転移を行う。

 ダンジョン前に転移して、ダンジョン入口を見ると消えていた、周りには多くのウェアウルフが控えていた。


 トウカから降り魔法の大声で。


「みんなお疲れ様、ダンジョン攻略は私達の勝利だ!

 勝鬨をあげろーーーー、勝利だ!」


 手を上げ勝鬨を上げる。

 うおーーーーーーーーーーーーー

 「勝利だ!」「俺はやった」「ワオーーーン」

 森中に勝鬨が響き渡る!



……

…………



 私は撤収のために、東京ドーム6個分の亜空間倉庫3を私の中に作る。

 中には広い森、大きなグランド、戦闘スタジアム、訓練施設、休憩所多数、山、丘陵、池、川、遊べる施設、昼夜の環境、まるで外に居るような景色の壁と天井、等を作った。


「静かに! これより撤収する!

 キングは私の横に、今から門を出す。

 中には色々な施設がある、有効活用してくれ」


 私は倉庫3の入り口になる巨大な門をダンジョン領域にだす。


「キングを除き、全員中に入れ!」


 全員が移動を始め、キングに向かって話す。


「中で、個人、チーム、集団の戦闘訓練を頼む。

 特に連携をメインに頼む。

 戦闘スタジアムがあるので模擬戦もしろ。

 訓練施設もある、活用しろ。

 適度に休憩を入れ、遊ぶ施設もある。

 有効に使ってくれ、頼んだぞ!」

「了解致しました!」


 全員が入ると。


「よし! 撤収しろ」

「は!」


 最後にキングが入り、周囲を確認して門を消す。

 ダンジョン領域も解除する。


「終ったーーーー、疲れた。休みたい。

 タケル君、色々話があるけど休んだ後でいい?」


「もちろん、凄いですね今の。

 このノリは勝てません、逆らった俺が馬鹿でした」


「トウカ悪いけど2名また載せて、転移で安全なところに行く。

 流石に騒ぎ過ぎて危ないから」


「畏まりました、お嬢様」


 3人で2回ほど転移して森の中。

 ワゴン車を出して、助手席に座り、

「あーー、ちょっと疲れたので話は起きてからで、おやすみーー」

 と言って助手席を倒して横になって寝た。



ーーーー



 私が寝た頃。

「トウカ先輩お聞きしたいんだけど」

「何だ?」

「長距離の転移と連続転移とか、自由なダンジョン領域作成とかモンスターが強すぎだし、あの門って何ですか?

 何処に繋がっているんですか?」


 トウカは長く考えたように見える時間を使い。


「ふむ、秘密だ。

 ………………実は俺も多くは分からん。

 ただ一つだけ確かな事がある。

 飛び抜けたレコードを出したマスターが居るだろ。


 それはサクラだ」


 と言ってサクラを見る。


「まさか! あのレコードホルダーですか!」

「うむ」




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