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第20話 転移の不条理を俺は叫びたい!


 翌朝、日の出と共に目が冷めた。

 二人はまだ寝ていたが起こす。


「おはよーーーー おきろーーーー朝だぞーー」

「おはようございます、お嬢様」トウカはすぐに起きた。

「眠いーーあと5分ーー」

「タケルおきろ!」 と腹パンチ。

「グフ………… お、おきます」


 ワゴン車の中に買っておいた食料で朝食を食べ、今後の事を話す。


「タケルは人化出来る?」

「出来ますけど……嫌だ」

「今しろ!」

「……はい」


 嫌々ながら人化するタケル。

 そこにはとても可愛い男の子がいた。

 身長140で黒髪キッズカット、丸い童顔で黒い瞳の大きなタレ目、小学5年生ぐらいの男の子。


「ちょ、何この可愛いの!」

「だから嫌だったんだ」

「これで大悪魔なんて名乗って恥ずかしくない?

 天使の方が合ってると思うよ」

「ぐぐぐ、返す言葉がない」


「大学は何処?」

「理系の某有名大学」

「エリートじゃん、それで中二病なんて」

「隠れゲーマーに隠れラノベだから、転生でタガが外れたんですよ。もう言わないで下さい」

「今の外見なら中二病で問題ないよ、元の歳さえ言わなければ」

「くっ」


「よし、君は四天王の第二席、勇者タケル! で行こう」

「ちょ、なんで!」

「タケルってさ勇者の名前でしょ」

「何でこんな名前になったのかなーーシクシク」

「よし、四天王の時は勇者タケルで役作りよろ」

「気が向いたら……、何で四天王?」

「あと、2人揃える。増えたら5天王」

「はぁーー、トウカさんは?」

「もちろん、四天王の第一席、謎の老執事です」


 いつの間にか私が巻き込まれてる、とため息をつくトウカ。


「さて、タケルのダンジョンを作りに行くよ。

 場所は愛知県豊田市の東20キロの山中に」

「ここからめちゃ遠いよ! 人家にも近くて危険だよ」


「問題なし、人間の中で活動をお願いするから、転移で駅近くに行って電車移動が必要。

 だから、ダンジョン管理領域に駅があるのがいい」


「分かりました」


「タケル君、人間の時も飛べるよね?」

「飛べます」

「スピードは?」

「頑張れば時速60キロはいけます」

「いいねいいね、もっとDP使って速くしよう」

「はい」


「では今から愛知県豊田市の東20キロの山中に行く、トウカよろしく」

「畏まりました」


 食事も終わり、ワゴン車を回収後。

 3人で数回転移して目的の山中に着く。

 そこに両手を地に着けたガックリポーズのタケル君。


「転移の不条理を俺は叫びたい! こんな長距離がなんですぐ着くの!」

「深く考えてはいけません」とトウカがタケルにささやく。


 3人でダンジョンにいい場所を何度も転移で探した。

 人に見つからない、人が来ない、上空からも見えない場所に決める。

 その場所にダンジョンを作成しタケル君をサブマスターに登録する。

 もちろんトウカのダンジョンと同じように作る。

 匍匐移動迷路を見てタケルが驚く。


「こんな、こんなダンジョンってあり?」


「これに好きに手を加えていいよ。

 ただし! ただし!! これより駄目にしたら怒る。


 タケルの元ダンジョンは簡単に攻略されたから、その反省を深く分析して適用しなさい。


 目標、いかに常識外れの奇策の上に奇策でスキが無いもの。

 力押しでも長時間耐えられること。


 今のところ精霊系、妖精系、小人系に弱いかな。

 小型は飛べるのが多いのでその対策もよろ。


 でも人間や中型以上のモンスターにはめちゃ強い、まともに入れないからね」


 タケル君は目をキラキラさせながらダンジョンのマップを見ていた。


「面白そう、色々考えてみる」


「君のダンジョンがこの型だったら、私も少しだけ困ったかな。

 でも出てきたモンスターを見て常識的なダンジョンだと判断した。

 だから、ウェアウルフ軍団の力押しで対処した」


「うぐ、モンスターを見せた時点で負けていた。

 常識を破壊しないと」


「奇策な手札を何枚も隠し持つ方針で考えて」


「了解、面白そうだ」


 タケル君と深夜までああだこうだと議論した。

 その後、リトルダークウィスプの説明と実演をし、中部地方全域にタケル君がリトルダークウィスプを大量に送り出す。

 関東、東北、北海道をトウカと二人でリトルダークウィスプを送り出す。


 タケル君いわく。


「こんな方法が有ったなんて。

 日本にもいいし、無差別じゃ無いし。

 ダンマスとして理想なのか?」


 翌朝までリトルダークウィスプを送り出して。

 疲れ果ててワゴン車で熟睡する。


……

…………


 昼過ぎに起きて新しい発表を行う。


「眷属と主で眷属リンクの念話が使える。

 眷属内で距離に関係なく念話で話が出来るようになる」


『もしもし、聞こえるかな?』

『聞こえます、お嬢様』

『うお、頭の中に聞こえる』

『遠距離会話、緊急連絡、隠密作戦、眷属会議等に使って』


「次に、サブコアは私のコアの従属下にある。


 サブダンジョンのダンジョン領域とダンジョン管理領域は私の領域と同じである。

 私は制限無く何処でも転移できるし管理もできる。


 サブマスターはサブコアの領域のみ管理と転移ができる。


 これでは、サブマスター同士が離れると集合出来ない。

 その解決の為に、各ダンジョンに誰でも転移して入れる部屋を作った。

 その部屋は転移以外は出入りできない部屋だ。


 トウカのサブダンジョンに集合部屋と大きな洋館を作った、トウカのダンジョン内にある共有エリアの洋館前に各自転移して」


 私、トウカ、タケルが順次転移する。

 そこは東京ドーム1つ分の部屋、森と川と洋館が立ち、昼夜がある外と変わらない空間だった。


 2階建ての大きな洋館の前には噴水の泉と庭園があり、水の流れる先に池と川がある。


 その周囲を森が囲っている。

 天井と壁には空と遠くの景色が書いてあり、ダンジョン外の様に見えた。


 洋館には謎の老執事トウカと書かれた大きな看板が入り口の上にある。


「ここは既に群馬県、タケルのダンジョンにも同じ物を作ってるよ。

 この部屋には隠されたとても細い通路がダンジョンに繋がっているが、その通路は使えないので転移で出入りする。

 外に出る時はこのダンジョン管理領域に転移可能。

 洋館は泊まったり会議をする予定。

 こんな感じで全国を移動できるよ」


 タケルは美しい景色を見渡し、最後に洋館を見て呟く。

「俺、もう深く考えない」

「正しい判断です」


「トウカ、街に飯食べに行こう」

 3人で別々にダンジョン出口に転移し、トウカの案内で街に行きレストランで食事をする。

 タケルが嬉し涙で食事をしていた。

 気持ちが分かる、普通の食事と数人で食べるのはとてもいい。

 ダンマスは寂しい、特にタケルは長い期間一人だったと思う。


 それから数日はタケルのダンジョン周囲の調査とトウカのダンジョン周囲をタケルに案内と言う名の休暇を過ごした。

 毎日深夜にはリトルダークウィスプを送り出す。


 二人には、自分以外のサブマスターがこの部屋以外の自分のダンジョン領域に入った時、警報を鳴らす設定になっいているのを伝える。


 理由は、悪意を持ったサブマスターからサブマスターを守るため。

 最悪な時は、自分のダンジョン領域に転移で逃げれば他のサブマスターは追って来れない。


 今後サブマスターが増えるし、時と共に関係が悪化する可能性も有り、サブマスター同士は対等なために攻撃が出来てしまう。


 だから、自分で自分を守ることも考えて欲しいと伝え。

 問題があったら私に相談し、速攻対処すると話す。



ーーーーーー



 のんびりと調査という休暇と観光を行う。


 数日後、インターネットカフェに入り、リトルダークウィスプの影響を調べたり、ダンジョン情報を調べていると、ダンジョン事件の情報を見つける。


「トウカ、タケル、四国のダンジョンが対策部隊に見つかりダンジョン破壊をしている。

 調査しないと」




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