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第22話 俺が生きてたのは運か?


「トウカ、タケル、四国のダンジョンが対策部隊に見つかり、ダンジョン破壊のため集団で攻撃をしている!」


 四国ダンジョン攻撃情報を紙に印刷してインターネットカフェを出る。

 人に見えない場所で森に転移し、車座に座って情報を読み漁る。


 このダンジョンのモンスターの種類はそれほど強くない。 出来てあまり経ってないように思う。

 四国のダンジョンは代替わりしたのか?


 最初にタケルが話す。


「見つかったのは3日前だ、まだ終わってないぞ。

 場所は阿波市から北に約5キロの森の中。

 馬鹿か近すぎる!」


 それを聞き、トウカが私に向けて話す。


「まずは、現地状況の確認が必要です、お嬢様」

「確認はいいが、私達が見つかったり怪しまれると困る」


 3人とも無言で思考に入る。

 そしてトウカが提案する。


「私が旅行者として地元の聞き取り調査をしましょう」


「トウカなら老人として道楽旅行が似合うね。

 現場から10キロは離れて調査して、相手のダンジョン管理領域で他者のモンスターとして見つかる可能性がある。

 10キロでも不安はあるが何かあったら眷属リンクで呼んで、対処する。

 それに人間にも絶対に怪しまれないように」


「畏まりました、お嬢様」


「私は最も隠密で動けるし転移できるから現地調査する」


「俺は?」

「……」

「……」


 私とトウカが無言になる、そして私が考えながら話す。


「あーー、リトルダークウィスプの送り出しとダンジョン改良の重要な役目がある」

「俺、留守番ですか?」


 うぐ、仕方がない必要条件を話す。


「飛行性能アップと習熟訓練、睡眠と麻痺、デスの習得。

 それにインビジブルを習得して隠密で動ける様に特訓!

 今のままでは見慣れない小学生、不用意に動いたら不信がられる。

 だから隠密行動に習熟して気づかれないように動けないと無理」


 タケルはがっくりと項垂れる。


「分かりました。

 文句を言われない飛行と隠密技術を習得する!」


「頑張れタケル!」

「正しい判断です」




 タケルをダンジョンに送り、私とトウカは淡路島を通り現場から20キロ離れた街近くの森まで転移する。


 トウカと別れ、トウカは街へ調査に向かう。


 私はダンジョンから数キロ離れた場所に【物理防御強化】【魔法防御強化】【インビジブル】を掛けて転移で向かう。



……

…………



 ダンジョンの近くに到着し、管理領域視点で調査を始めたが、見れなかった。

 どこに視点を飛ばしてもダンジョンの近くに入れない。


『ラビ、管理領域視点で見れないけど?』


『転移と監視ができない結界があります。

 ダンジョンを中心に半径1キロの半円形に結界が張られてます』


 なるほど、ダンジョン対策部隊は有能だ、転移の危険性が良くわかってる。


 管理領域視点を結界の外に置いても1キロ先は細かく見えない。


 こんな情報はダンジョン対策省や対策本部の情報に無かった、秘匿技術だろうか。


 確かにマスターが転移で後方を襲うのは危険、ダンジョン管理視点で部隊の行動を見られるのも嫌だろう。


 ダンジョンマスターが持つ転移と管理視点の情報が既に世界に広まっている?

 それを防御する結界のスキルか魔法が有るのか。


 知らない情報が多いな……


 他にも公開されていない魔法やスキルや何かがあるかも知れない。


 情報が無いのが悔しい、だが事前に知れたのが良かったと考えよう。

 新たな情報を入手するチャンスだ。


 どうするか?




 仕方が無い、危険だがエレメント状態で近づき上空から直接ダンジョン対策部隊の動向を見よう。


 転移は出来ないが、空であれば逃げる範囲が多く攻撃が魔法か弓しかない。エレメントは魔法防御が少し弱いが試す価値がある。


 それに、エレメント状態のインビジブルは見破れまい。




 パペットドールの憑依を解きドールを闇収納する。

 再度【物理防御強化】【魔法防御強化】【インビジブル】を行う。

 この状態はコアの守りが弱点でとても危険だ。特に物理攻撃は体をすり抜ける可能性があり、コアに触れてしまう。


 今度、飛べるボール型のパペットドールを作れないか試そう。

 大きさは5センチ以下で。




 上空200メートルに登り、現場に行く。

 最速で結界の手前まで進む。


 歩く程度の速度で結界内に入る……3,2,1、今、……結界を過ぎたが特に何も無い。

 しかし、転移ができない。


 走る程度で進み、現場が見え始める。

 大きなテントが4っ有り、2っほど組み立て中。

 ダンジョン周囲は簡単な柵。

 剣や盾、杖等を持った人が何人もいる。

 誰もが余裕ある表情でダンジョンに入って行く。

 外に居る集団も笑顔で会話している。


 私は恐ろしい……


 彼等にとってダンジョンに入る事が恐怖では無い様だ。

 どれ程の自信があるのか?


 少し離れた所に若い集団がいる、彼等は緊張したり青い顔をしている。

 ダンジョン初心者かLvが低いのだろう。

 多分、経験を積ませる訓練か。


 あれがダンジョン攻撃の集団行動か、初めて見る。



 ダンジョン前の広場に巫女のような人が立っている。

 あの人が結界を作っている?

 徐々に現場に近かづく。

 巫女がこちらを見上げた、目が合った!

 それと共に数人のベテランがこちらを向く。

 不味い、見つかった!


 逃げる! 上昇、急速上昇! もっと、もっと速く!

 一心不乱に上昇!


 横に飛ぶと方向がバレる。追い掛けられる。

 もっと上に!


 1500メートルほど登っただろうか?

 下を見る。

 あぁ1000超えたら転移できたのに、焦った。

 下は特に騒ぎは無いように見える。

 遠くて良く分からないが大きな騒ぎは無い。


 今の私に再度近づく勇気が無い。

 相手の攻撃がエレメント状態の私を素通りしてコアに届いたら終りだ。

 その恐怖が私を縛る、震える。


 結界で感知では無く、近いから? 魔法? 感? 視線?

 多分モンスターの確信が無かったのか、目が合った時にそれ以外の動きは無かった。

 ただらこちらを見た。

 他の強者は巫女が振り仰いだから見たのだろう。

 下も騒いでる様子がない。


 しかし、インビジブルが効かないなら、隠れてダンジョンに侵入は不可能だ。

 ダンジョン対策部隊の精鋭が怖い、ほんと怖い。

 並ではなかった、甘く見すぎた。

 刑務所を警備していた対策部隊は精鋭では無かったのか。

 考えの甘さに恐怖する。


 戻ろう。


 転移を2回行い、森の中に降りてパペットドールを出して憑依する。

 トウカに連絡する。


『トウカ聞こえる?』

『はい、聞こえます』

『一旦戻って、別れた場所に集合』

『畏まりました』


 別れた場所に転移して小さくなってトウカを待つ。

 思い出すと震える、まだ怖い。


 エレメント状態の私はコアが露出に近い、コアに少しでも攻撃が掠れば私は即死して目的が潰える。

 ほんとに怖い。


 今までが順調すぎた、初めて危険を感じた。

 ダンジョン対策部隊と戦うのか嫌だ、避けたい。


 長い時間、悶々としているとトウカが帰ってきた。

「もどり…………」

 思わずトウカに抱き着いた、少し震えてる。

「お嬢様、どうしたんですか?」


「バレた、見つかった、目が合った、インビジブルしてたのに。

 エレメント状態だったのに……

 ダンジョン対策部隊怖い、超怖い

 抱っこして」

「はい」


 転移を数回して遠くの森の中へ。

 トウカにしがみついて震えていた。

 しばらくして、震えと体の力が抜ける。


「あぁーー怖かった。説明する」

『タケル、トウカ、タケルの洋館応接室に来て、会議する』

『オッケー』

『了解』


 洋館前に転移してトウカと共に応接室へ向かう。

 10畳の部屋にテーブルとソファが設置された簡素な部屋。

 私の向かいにトウカとタケルが座る。


「短時間だったけどトウカ何か情報ある?」

「はい、早くて数日、遅くても2週間以内でダンジョンを破壊すると広報されています」


「結構早いな」とタケル。


「次は私から、トウカと別れてから……………………」


 詳細に説明をした。



「この結果の問題点。


 1、結界の中は転移できない、管理領域視点で見れない。

   半径約1キロの半球の大きなエリアだった。

   ネットにこの情報は無く秘匿されている。

   これ以外にも多くの秘匿された技術が有ると考える。


 2、エレメント状態で高Lvなインビジブルが見破られたと私は確信するが、はっきりと見破られた訳でもないことも。

   距離は100メートル程だった。

   結界エリア侵入では多分バレていない。


 3、バレずにダンジョン侵入は不可能だと考える。

   近づく事も危険。


 4、私の想像以上にダンジョン対策部隊は強い。

   多くの武器や盾や杖を持ったダンジョン対策部隊が余裕を持って対処していた。

   数多くの後輩を指導していた。


   ダンジョン対策部隊にダンジョンが見つかったら破壊され殺されると確信する。


   私は157代目、多いと思った理由が分かった。

   ダンジョン対策部隊は既に150近くのダンジョンを破壊した経験がある。


   私に会う前にトウカやタケルが見つかっていれば死ぬだろう。

   見つかった後の対策が時間稼ぎしか思い付かない。

   ダンジョンマスターが時間稼ぎをしても死ぬのが伸びるだけ、最悪の場合KPが少なくなり新たなダンジョンが出来、地域のダンジョンが増える。


 以上、何かありますか?」




 静かだった。

 多分全員がダンジョン対策部隊に会った事がない。


「俺が生きてたのは運か?」とタケルの一言。

「私はそう思う」


 トウカが話す。


「ダンジョン対策部隊に見つかった後の生き残りを知らない。

 その結果、次のダンジョンマスターに情報が伝わら無い。

 攻略本が例外か……いや攻略本は初代、ダンジョン対策部隊がいない、違いすぎる」


「私もそう思う。

 はっきり言って、ダンジョン対策部隊が怖い。

 トウカに抱きついて震えた。

 会った事が無いから怖さを知らない。

 会った時は死ぬ時。

 これが現実かも知れない」


 続ける。


「向こうは経験や情報を積み重ねる。

 ダンジョンマスターは毎回0から始まる。

 管理者の言っていた環境の修正。

 人類が新しい環境に適応して強くなる……」


 私は考える。

 ダンジョンマスターによる一般人の間引き。

 ダンジョンマスターの犠牲によりLv保持者の強化。

 人類もまた環境適応した強者やLV保持者と、それ以外で選別されるのか。


 最初から私達死者は選別されていた。


 管理者の目的に【選別】がキーワードになるのか?


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