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第34話 拳に生きた族



 俺の子供の頃は、町内のガキ大将をしていた。


 中学に入ってもガキ大将気質が抜けず、喧嘩に明け暮れた。

 そのため、近隣の中学生に恐れられる存在になる。


 だが、舎弟を守る俺に何人もが集まりはじめ。

 いつしか番長と呼ばれる。


 俺はそんなつもり無かったがな。

 でもまあ、気分は良かった。

 だから、なおさら舎弟を守った。


 舎弟が苦境の時は駆けつけて助ける。

 イジメを見つけた時はイジメた奴を殴り倒した。


 折しも日本は高度成長期、それいけバンバンで何にでも夢と希望と笑いがあった。

 まあ悲しみもそれなりに有ったがな。

 それ以上に将来の夢に溢れてた。

 中学生の無茶は許された時代だった。


 中学卒業で番長を引退し、二輪免許を取た。



 高校で知り合った先輩からバイクを格安で買う。

 それが始まりだった。


 先輩の知り合いの小さな族に入る。

 最初は一番下っ端で走り回った。


 元々強かったので1年もすると頭角を現し、リーダーが引退と共に俺が次代のリーダーに指名される。


 そして、調子に乗って走り回り暴れまくった。


 あれよあれよと言う間に、他の族を吸収、舎弟が続々増えはじめる。


 あっと言う間に巨大な族となり、世間から暴走族と呼ばれる。


 俺はそんなつもりは無かったが、舎弟達と共に暴れるのが楽しく、その舎弟を守る為にも走り回った。


 今思うと、ちょっと踊らされたバカだったかも知れない。

 が、楽しければいいと思う。


 高校3年も近づき、引退して就職を考えていた。


 組から誘われたが興味は無かった。

 何度も誘われたが何度も断った。

 俺はもう遊びは終わりだと決めていた。



 卒業日の数日前。

 組から電話があった。


 お前の舎弟が俺の組に迷惑をかけた、落とし前が必要だが金を持ってない。

 このままじゃメンツが潰れる、指詰めるか、マグロ漁船か、お前が責任取る必要があるな!


 舎弟は何処にいる!


 組にいる。


 俺は一瞬で頭に血が登り、受話器を叩きつけ、バットを持ってバイクに乗り組に走る。



 頭の中は(舎弟を助け出す!)以外の考えが浮かばなかった。

 いつもと同じ様に拳で解決しか思い浮かばなかった。


 組の前に人が居て「よく来たな……」と話かけられたがバットで殴り倒した。


 そのまま組に殴り込みをした。


 十数人倒したが、流石に疲れと打撲等で勢いが無くなり、バットが振れずに下ろした時。


 後ろからドンと押された。


 そして胸からヤッパが出ていた。


 なんとか振り向くと、捕まっているはずの舎弟が長ドスを持っていた。


「喧嘩にヤッパは駄目だ……ろ…………いつ…………も………」


 心臓が握り潰された様な痛みが走り、立てなくなって倒れる。


 あまりの痛みに、全身がキューーと固くなる。


 痛みが少し薄れるが頭が朦朧となる。


 あぁ血が少ない。


 俺死ぬのか、舎弟はバカだな………………


 意識が消えていく………………



……

…………

………………



 ここは何処だ?


 チェック床の上、周りに人が多すぎる。


 三途の川は何処だ?


 閻魔様に会えるのか?


 楽しそうだなオイ!




 会ったのは管理者だった……


 誰だおまえ?



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