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第37話 お前の所属する黒社会は大きいのか?


 大鮮国の調査を断念して清中共に行くためフェンリルに乗る。

 ラビに大鮮国と清中共の国境にある山の中に行く説明をする。

 もちろん、モンスターもダンジョンも人も避けて転移をお願いする。


『ザンガ、清中共まで転移を数十回行う』

『おぅ』


……


 転移を数十回行い、ここは清中共に少し入った山の中。

 既に夜になっていた。

 モンスターもダンジョンも管理領域に見つからない。

 ラビに周囲の警戒を頼み、インビジブルを解く。


「ザンガ、今日はここに泊まろう」

『了解』


 ここは山と山の間にある窪地の森だった。

 すでに周囲は暗い、夜目は標準で持っているので暗くても問題なく見える。

 ザンガは獣人になり、私はワゴン車を出す。

 光を出したく無いので、ワゴン車の中で保存食を魔法で温める。

 そして、ペットボトルのお茶を出して保存食を食べ、のんびりと雑談して休む。


……

…………


 翌朝。


 朝起きて清中共の遠い奥地を目指す。

 最奥までは1400キロ弱、とても一日で行ける距離ではない。

 明るくなったワゴン車の中で、ザンガと共に清中共の地図を広げる。

 現在位置をラビから聞き、今いる場所をザンガに説明して、行き先の都市を探す。

 此処から約600キロの内陸部に有る都市に指を置き。


「ザンガ今から約600キロ先、内陸の都市に行く。

 約20数回は転移するので宜しく」

「おぅ、問題無いぜ」


 ワゴン車から大きいバックパックと、小さなかわいいバックパックをだす。

 中には基本的な旅行用品が詰められていて、旅行者として過不足無く事前に準備したものだ。


 大きいバックパックはザンガが闇収納し、小さなバックパックに地図を入れて私が背負う。中は軽い。

 腰にはサイドポーチを付けている。

 何処かで誰かに見られても、大きな犬を連れた小さな少女に見える様に偽装する。


 ワゴン車を降りてワゴン車を闇収納する。

 ザンガはフェンリルに変わり、私が飛び乗る。


「行くよ、いい?」

『おぅ』



 転移を数十回行い都市の近くに着く、私が降りて。

「ザンガ用意したら、抱っこおね」


 ザンガは獣人化後に人化で人間になりバックパックを出して背負う。

 そして私をお姫様抱っこする。

 ラビと共に管理視点で都市内の繁華街を探して、その近くで安全に転移できる場所を探す。


「ザンガ、転移したら私を下ろして計画道理にやるよ」

「任せろ」

「転移!」


 転移した先は、裏路地の更に裏路地の家の間にある狭い通路。

 前後に人は無く、周囲に人の気配は無い。

 私は降りて私しか見えない周辺のマップを見、繁華街の場所を確認する。

 家の隙間を抜けて繁華街の通りに進む、ザンガは私の後ろを着いてくる。


 ザンガの外見は、身長197、白銀の髪、目が切れそうな鋭さを持ったイケメンで顔は外人風味。

 体はスラリとした細身に見えるが中身は割れた筋肉の塊。

 服はジーンズジャンバーにジーンズと山岳シューズ。


 繁華街に出たあとはザンガと並んで、まるで旅行者の様に周りをキョロキョロ見ながらぶらぶらと歩く。

 そして、ザンガが如何にも怪しいと思う露天や店に私を連れて歩く。

 その間も、お登りさんよろしく危機感も無く危ない通りを歩き、キョロキョロと楽しそうに見ていた。


そして、『姉御、数人ついて来ましたぜ』と眷属リンクで会話。

『予定通りですね』とニヤリと笑う。


 しばらく歩いて露天の前で商品を眺めるてると、後ろに4、5人の男達に囲まれる。

 それを見た店番の腰が引けて「早く行ってくれ」と手で私達を払う。


 私は後ろに振り返り「ヒッ」と小さな悲鳴と共にザンガにしがみつく。

 内心はナイスな演技と自画自賛。

 ザンガも慌てて振り向き、怯えた声で。


「お、お前達は何だ!」

「ちょっとおまえ等に用事があってな、来てもらえないか?」


 右の男がわたしの右腕をつかみ、左の男がザンガの左腕を掴む。


「ど、何処へ行くんだ!」

「すぐそこだ、黙ってないと痛いよ」

 前の男が刃物を少しだけ見せる。

 それを見た私達はビクリと驚いておとなしくする。


 二人を中に入れて男達は歩きはじめた。

 2人は黙って怯えながら足を引き摺るように歩いていく。

 裏路地に入り、何度も道を曲がり、薄暗い突き当りの広場に連れて行かれ、私達は壁に投げられる。

 壁にぶつかりズリズリと地に落ちた。


(ラビ周囲に人は?)

『見られる場所には居ません』

『ザンガ周囲に問題なし、ゴー』


 ザンガはスクット立ち、【麻痺】【麻痺】…………【麻痺】

 5人全員が麻痺してその場に崩れ、うめき声をを上げる。


「ファハハハーー、麻痺の怖さを身を持って受けろ!

 このグループのボスは誰だ?」


 数人が一瞬、一人の男を見る。

 ボス以外の男を私が【催眠】【催眠】…………【催眠】

 と4人を催眠にし立ち上がる。


「え! もう寝かすの? せっかくの麻痺が……」

 ザンガは未だに【麻痺】の恨みが強かった。

「煩いから静かにしたの」

 私はボスと思える男に近づき。

「お前がこのグループのボスか?」

「違う!」

「違うか、まあ確認すれば分かる【魅了】」

 男は途端に睨むような顔つきから、とろんとした顔つきに変わり。

 私を理想の女性でも見た様に見つめる。


「お前がこのグループのボスか?」

「4人を纏めてる」

『ザンガ、他はデスして収納しろ』

『了解』

 4人に【デス】……【デス】1秒後に死体を闇収納する。


「お前の所属する黒社会は大きいのか?」

「ああ、大きいぞ俺なんか下っ端だ」

「そこに連れて行け」

「分かった」

 男の麻痺を解除して立たせ、組織に案内をさせる。

 その男は他の男達の事は目もくれなかった。


「あ姉さんこちらです、終わったら俺と結婚してくれ!」

「え! いや無理、友達までなら」

「イャホーー、友達ゲット!」

 リーダーは嬉しそうに道案内するが、対応がキモすぎた。

【魅了】てこんなに効くのか? いやLvが高過ぎたか?。


『ザンガ魅了魔法って、少女に求婚する変態になるのか?』

『さあーー、ロリとか人によるんじゃないかな?』

『魅了…… 言葉の上では正しい様な、微妙……』


 1時間ほど歩くと大きなビルの前に着た。

 ビルの入口には中華風の門構えに龍の彫刻が掘られた赤くて太い柱が両脇にある。

 その両サイドに厳つい感じの男が立っていた。

 人通りは少なく、門と道を隔てた反対側で立ち止まる。

 門の男達が此方を伺っていた。


「入らないのか?」

「俺下っ端だから、用も無いのに入れない」

「いい話があるから上に伝えたいと言え」

「分かった」


 門に向かって3人が進む、入口直前で右に立っていた男が門の前に立ち塞がる。

「リュー、何の用だ?」

「いい話があって上のモンに相談です」

「ここで話せ」

「え、いや、でも……」


 これは駄目だな、【睡眠】【睡眠】【睡眠】

 門の男2名とリューが崩れ落ちる。

『ザンガ、めんどいデスして収納しろ』

『了解』

 ザンガは急いで男達を門の横に運び処理を始める。


 私は入口の不透明な両開きドアを押し開け中に入る。

 中に入ると20畳ほどのロビーがあり。

 壁には様々な武器の様な物が飾られていた。

 そこかしこにソファーや椅子、丸椅子に座って屯している黒い服を着た男達から一斉に目を向けられる。


 その中の一人が立ち上がり近づいて上から睨みつける。

「ここは子供の来るとこじゃないぞ、失せろ!」

 その男を下から睨み。

「ここのボスは何処にいる?」

 男は私を掴もうと手を出す。【睡眠】そして崩れる。

 周囲の男が一斉に立ち上がり、懐に手を差し込む。


「ここのボスが何処にいるか教えてくれないか?」

「このガキ、何しやがった!」

「無理か……」


 このビルの一階フロアをダンジョン領域にし、領域内に【範囲睡眠】【範囲デス】。

(死体は魔素に、その他は分類して倉庫に収納)

『了解』

 フロアに有った全ての物が沈むように消える。

 なんと、床や壁に固定した物以外は全て吸収するのか、今知った。


 後ろの入り口からザンガが来る。

「おう、もう処理したのか、早いな」

「死体ここに出して、消す」

 ザンガは7体の死体を闇収納からフロアに出すと、沈む様に消える。


(ラビ、ザンガに範囲攻撃が掛からないようにできる?)

『パーティ登録すれば、フレンドファイア無視が有効になりパーティメンバーは攻撃されません』


 何そのゲーム仕様! 管理者はどんだけゲーム好きだよ!


(ザンガとパーティ登録おね)

 少しして。

《ザンガとパーティになりました、貴方がリーダーです》

「姉御、このパーティ登録って何ですか?」

「パーティメンバーの範囲魔法がメンバーに当たらないために、ザンガとパーティにした」

「それは便利だ」


 しかし誰も来ない、探しに行くのも行動でスキが出そうだし。


「音も無く処理したから誰も出て来ない。

 ザンガ、壁をぶち破って騒動の音を出して、出てきたのを倒すのはどう?」

「いいぜ、やろう!」


 ザンガは周囲の壁をキックやパンチで壊し始める。

 途端にビル全体が騒ぎ始める。

 通路や階段、エレベーターから剣やナイフを持った人が湧き出す。

 それを見てザンガは楽しそうに【麻痺】を連発し始めた。


「オラオラオラ! 麻痺を喰らえ! アッハハハハ!」

「ザンガ、麻痺好きだね」

「もちろんよ、麻痺は掛けるのがいい!」

 通路や階段、エレベーター出口に人が折り重なる様に倒れ、呻いていた。


 そして、パンパンパンと周囲から銃が連発される。

 私達はモンスターだ、魔力が帯ていない兵器は効かない。

 物理的運動エネルギーだけが私達を襲うが、モンスターとしての位やLvが高いため、魔力の強いバリアに阻まれ全く効果が無い。

 私は、銃を撃つ者を優先的に麻痺とデスを行う。


 銃や剣や投げナイフの攻防が続いた後、人が出なくなり呻き声だけが周囲に響いていた。

 そして声が聞こえる。


「お前らは何処の組織だ! なんの用事だ!」

「ボスに用事だ! 会わせろ!」と私は答える。

 しばらくして、太った壮年の男が階段の上に現れる。

 男の目を見て【魅了】

 とたんに厳しい男の顔が恋人でも会ったように目が輝き、階段の部下を踏みつけ私の所に急いで来る。


「これは、麗しいお嬢さん、私の妻に……いや今3人居るから4番目の妻になって欲しい。

 君のためにマンションを用意しよう、服でも宝石でも何でも言ってくれ!」

「あーー、その友達から」

「そうかそうか、奥ゆかしいお嬢さんだ。

 先ずはお付き合いからと、うむうむ私に任せておきなさい」


 横でザンガがクククと腹を抱えて笑っている。


『ザンガ、魅了の魔法は変態製造機か?』

『ブハァーー、ククク、ごめん分からん、ククク……』


「お金を融通して欲しいんだ、有るだけ」

「おお、もちろんだとも、今下ろしてくる待っててくれ、マイハニー」


 ボスは室内に走り去っていく。

 そして、カバンを持って戻り外に飛び出した。


 私達は清中共のお金を持っていなかった。

 私の金策、悪の組織に提供してもらう。

 予想以上の効果です。


(ラビ、ビル全体をダンジョン領域に出来る?)

『可能です』

(して)

 ビル全体がダンジョン領域になると、【範囲睡眠】【範囲デス】を行いビル内の全てを吸収した。


…………


 ソファーを出して寛いつると、ボスが息せき切って入ってきて私の前に大きなカバンを置く。

「これが今出せる金額だ、結婚しよう!」

 キモイ、【睡眠】【デス】で1秒後にボスを吸収し、ダンジョン領域を解除する。


 カバンの中を見ると、ぎっしりと札束が詰まっていた。


『ザンガ、トンデモない金額だよ、使い切れない』

『いいんじゃない、豪遊しよう』


 カバンを闇収納して、ザンガに抱っこしてもらい、森に転移する。

 豪遊は別の街でしよう。





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