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第50話 情報戦



 包囲内最後のモンスターをハイブラッドスパローが倒す。


 そして、スパロー隊が周囲に散り、超高速飛行で周辺の捜索に入る。


 もちろん、監視領域マップで敵の有無は分かるが、いつもある訳では無い。


 マップの無い場合も想定して捜索をしていた。


 訓練された軍隊は違うなと感心する。


 5分程して各スパロー隊員から報告が入る。


『アルファ1、敵モンスター無し』

『アルファ2、敵モンスター無し』

   :

   :

『ガンマ5、敵モンスター無し』


 すべての報告を聞いたアルファスパロー隊リーダーから連絡が入る。


『アルファスパロー隊リーダーより防衛軍団長へ。

 敵部隊の殲滅を確認!』


 団長が終了宣言をする。


『報告を確認、こちらのマップにも発見できず。

 作戦終了を宣言する!

 戻っ休め!』


 その瞬間、念話に『やったー』『俺の勝ちだ!』『俺の方が多く倒した!』『・・・・』『・・・・・・・』

 と騒がしくなる。


『お前等!

 作戦が終わったからと騒ぐな!

 静かに帰れ!!!』


『『『はいっっ!』』』


 団長が眉間シワを寄せながら、マップに表示された隊員達の帰還行動を見ていた。




 私は団長に向き。


「お疲れ様団長、良い作戦と良い作戦行動でした。

 みんなに伝えといてね」


「はっ、過分な評価有難うございます。

 しっかりと全員にお伝えします」


「そうだ! タケル。

 防衛軍に祝の食事会でもどう?

 何が良いのか分からないから、団長と相談して祝勝会を計画して。

 タケルが食事をどっさり出す、どう?」


「いいね、後で祝勝会しよう。

 ライトワンも良いかな?」


「はっ、光栄です。

 皆も喜ぶでしょう」


 タケル個人に念話で『タケルが皆を褒めて今後の活力にする様に。ほら、ウェアウルフの様なのりでよろ』


『おk、苦手だがやってみる』

『のりだよのり!』

『おk』



ーーーーーー



「よし、今から戦闘の評価と今後を考えるよ、団長も参加して今後の計画に組み込んで」


「了解です」


「正直に言って、相手のマスターはバカだと思う。

 何の策も無く、部隊の偵察も無く、情報戦も無い。


 ただただ、集団で移動して襲うだけの策だった。

 団長ごめんね、勝て当たり前だと思う。

 この話はここだけね、団長」


「了解です」


「まず、戦術外の情報戦を私がしていた、それを説明する。


 日本は世界から見ると特殊な国だ、ダンジョンも少なく、モンスターも弱い。

 ダンジョン対策部隊は多くのダンジョンを破壊してきたので強い。


 襲う側からすると、危険なのは小人数のダンジョン対策部隊だけ。

 だから今回の様な杜撰な計画でモンスター集団を出した。


 まあ私が、日本のダンジョンマスターは日本に迎合してて弱いと演出してたからね。

 それは、最弱のリトルダークウィスプやチャレンジダンジョンの事。


 これが、戦術外の情報戦」


 全員の顔を見渡す。

 そして胸に手を当て話始める。


「数年前、ここに監視ダンジョンを作った時、私は弱かった。

 いつ世界の強いダンジョンマスター組織が日本を襲うか分からなかったし怖くもあった。

 だから、強くなる為に時間が欲しい。


 世界のダンジョンマスターから注目されない様に行動し、日本から遠い清中共の奥地から工作を始めた。

 もちろん、力を付けるためでもある。


 だが、今回の戦いで日本のダンジョンマスターが強い事がバレた。


 まあ、バレたと言っても朝鮮半島に居るダンジョンマスター組織だけだと思う。


 ダンジョンマスターは基本、征服者と非征服者の関係。

 殺し合うライバルだ、情報が広がる要素が少ない。


 だが、世界に頭が良く知的で感の良いダンジョンマスターは、日本のマスターが変だと薄々気付いていると私は思っている。


 しかし、今最も注目されているのは、清中共奥地から始まったモンスター災害だ。

 それも、次々とダンジョンを破壊しているため、敵ダンジョンマスターとしては恐ろしい存在だ。


 危険な存在として注目していると予測している。

 たぶん、そのマスターはレコードホルダーだと思われている。


 私がそれを演出しているしね。



 これも、私が世界に向けた情報戦だ。

 世界の目を日本からそらす情報の戦だ。


 尚かつ、日本のマスターと同一とは思われないように行動している。

 このモンスター災害が日本のマスターが原因と知れたら最悪だ。


 この状況をみんなは理解して動く必要がある。


 良いかな?」


「了解致しました、お嬢様」

「おk、理解する」

「了解致しました」

「心から拝命致します」


 みんなの目をしっかり見てから、アサカを強い目で見る。


「アサカ!」

「はい!」


「情報という意味で、最も人間に近い位置にいるアサカが色々な情報に触れる機会があり、漏れる危険もある。

 そして、これから行う私の情報戦に強く関与する。

 覚悟して行動が必要」


「了解致しました!」


「よし、これからの事について話す。


 私の儚い希望は、世界全体に工作ダンジョンが広まるまで日本に注目が向かないのが良いと思うが、まず無理。


 だが、少しでもその時間を伸ばしたい。

 ライトワン!」


「はっ!」


 ライトワンに顔を向け強い目線で説明する。


「今回の戦闘は初戦闘であり私が来るまで待っていたので問題は無い。


 しかし、次からは侵入が発見され次第、団長の判断でターゲットと周辺を調べる偵察部隊を出せ。


 マップでは敵の場所と数しか分からない。


 敵の種類、速度、高さ、海面、海の中等は目視の偵察しか分からない。


 その情報から敵の目的を推測する事ができる。

 これが情報戦の始まり。


 偵察情報に合わせた戦術を組み殲滅して、こちらの情報を相手に渡さない情報戦を作戦に組み込め。


 今後、色々な方法の偵察モンスターが来ると予測される。

 場所時間を決め殲滅する戦術を立てろ。


 来た即殲滅はバカのすることだ。

 何処で何時殲滅するかも重要。


 2段3段の偵察モンスターがいる場合も想定して引き込む様な戦術もいる。

 こちらの情報が漏れるのが最も悪い。


 それを想定した戦術を立てろ」


「はっ、了解致しました」


「次に一軍の将たる者、相手の立場に立って、情報が無い今から日本を落とす為にどうするかを詳細に、多彩に考えろ。


 中には防衛出来ない戦術が出る、それが幾つも出なければ困るよ。


 その場合一つ前に戻り、それが発生しない情報戦を考える。

 または、それを利用する状況を考える。


 これは職分を超えると思うかもしれないが、将たる者そこまで考えて欲しい。


 例えば、頭の良いグループを多く作り、両サイドに立って戦う訓練や遊びを考案して大会を開く。


 勝ったチームに賞品や望みのスキルや魔法を与えるのも良い。


 以上、大変だが頼む」


「はっ、確かに承ります!」



 ライトワンは思う、サクラ様は恐ろしいお方だ。

 エンシェントの知識を持つ私でさえ、サクラ様が考え実行している事を予測し実行出来ると思えない。

 こんな小さな少女が予測し実行している。


 そして、サクラ様に見つめられた瞳のなんと強いことか。

 その瞳に込められた覚悟が如何程のものか。

 小さな少女が何故これ程の覚悟を持ったのか。


 真に恐ろしいのはその知恵と覚悟。


 誇りあるエンシェントライトドラゴンとして、心からサクラ様に忠誠を捧げよう。

 私は良い主を持った喜びに震える。



「タケル」

「おう」


 私は悪い顔でニヤリと笑いタケルに話す。


「ライトワンに協力おね。


 特に奥の手、裏の手、後ろ手、卑怯、後から、場外操作等々、条件の穴を突くような戦略を私が好きだとよく教えて。


 正攻法は出来て当たり前、それを覆す方法が必要だとよく指導してね。


 例えば、不利な状況をわざと作り、それを覆す戦略をみんなにチャレンジさせる。


 覆す戦略はたくさん出るよ、一番簡単な裏の正攻法は相手に裏切りを作る、スパイを入れる、事前の食料に下痢ピーを入れるとか。


 利用するのも有るね、談合して負けて景品貰うとか。


 こんなの単純すぎる裏の正攻法だからね!」


「おk、良くわかってる」


 ライトワンが心から思う、サクラ様が別の意味で怖い!


 ライトワンの顔を見て、更に悪い顔でぐふふと笑いながらライトワンに体全体を向け。

 腕を大きく広げて叫ぶ。


「ライトワン! よく聞け!


 世界で作ってる工作ダンジョンはね!

 敵組織の内部から喰らい尽くす為にも有るんだよ!


 敵が正攻法で攻めた時、その腹を食い破って殺すのさ!


 アッハハハハハハハハハーーーーーーーーーーーー」


 私はライトワンを見ながら高笑いをする。


「は、はいっ!」


 ライトワンは青い顔で返事をし、サクラ様が怖すぎる。



「さて、悪の親玉の演出は終にして。

 撃退した次の戦略を話す!」





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