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第55話 モンスター襲撃7



 飛行モンスターが日本に上陸してモンスターによる惨殺が始まった時。

 海上自衛隊の護衛艦達は悔しい思いでモンスターを追跡し、レーダーによる監視を行っていた。


 海上自衛隊本部から条件付きの攻撃許可が降りる。

 しかし、発見されたモンスターは全て日本近郊に居る。

 艦対空ミサイルが撃てる場所では無かった。



 その時、監視任務をしていたイージス護衛艦のレーダーに、新たなモンスターグループと思われる光点が映る。


 すぐさま哨戒ヘリコプターを飛ばすと共に、イージス護衛艦もモンスターに近づく。


 哨戒ヘリコプターが遠くから注意して望遠で見ると6体のモンスターだった。

 もちろんリアルタイムに動画を取り送信と録画をしている。


 発見したイージス護衛艦から海上自衛隊本部に発見の報告と艦対空ミサイルによる攻撃許可を求めた。


 攻撃条件の打ち合わせと攻撃方法の打ち合わせが何度も行われ、攻撃許可が出る。

 そして確実に補足する距離へと移動、EEZ内の攻撃可能エリアにモンスターが入るのを待つ。


 外れた時にモンスターが海面上に移動するとレーダーから見えなくなり、以後攻撃も追跡も出来ない。


 逃した場合の問題が大きいため、ミサイルは高価だが初めての攻撃。

 1体に付き2発ミサイルを撃つことを決める。



 攻撃エリアに来るのをじりじりと待つ。

 これは試験では無い実戦なのだ。

 外れれば日本人が死ぬ。

 イージス護衛艦の戦闘指揮所は緊張に包まれていた。


…………


 モンスターが攻撃可能エリアに入る。

 再度攻撃諸元を確認、問題ない。

 艦長が攻撃指示を出す。


 艦上にあるミサイル発射口が開き、12本の艦対空ミサイルが連続に発射された。


 白煙を上げながらミサイルが上昇、その後方向を変え目標に向かって白い尾を引きながら進む。


 攻撃指揮所内は緊張に包まれる。

 艦長以下作戦参謀がスクリーンを見つめる。

 オペレータのカウントダウンの声が静かに響いていた。


「…………………3、2、1、弾着!」


 の声と共にスクリーン上の光点が消える。

 しかし相手は飛行モンスターだ、レーダー確認だけでは確信が持てない。

 艦対空ミサイルの様な打撃力のある攻撃を日本は初めてモンスターに行う、検証は必ず必要だ。

 艦長が指示を出す。


「待機していた哨戒ヘリコプターに連絡、注意しながら撃墜の確認を行え!

 本艦も撃墜エリアに全速で向え!」

「了解!」


 にわかに戦闘指揮所が騒がしくなる。

 各種連絡や再確認や指示のためだ。


 艦長は何も言わず、哨戒ヘリコプターの報告を待つ。



………………



 その後、哨戒ヘリコプターからの報告は、モンスターは発見できず、撃墜の確認も取れなかった。

 それも当然だった、倒されたモンスターは小さな魔石以外は黒い霧になって消える。

 魔石も海に沈んでいるだろう。


 周囲をくまなく探索し、日本上陸も無かったため、撃墜が成功したと結論した。


 しかし、日本で発生している被害があまりに大きすぎるため、発見当時に攻撃できなかった事が問題になり。

 海上自衛隊によるモンスター撃墜は一般に公表されなかった。



 イージス護衛艦のレーダーに感知されない距離で上空5000メートルを遠視スキル持ちのスズメが飛んでいた。

 そして哨戒ヘリコプターが飛ぶ先を観測。


 モンスターの発見から撃墜まで一部始終をスズメが見ていた。




ーーーーーー




 襲撃がはじまる前のマスコミの動き。


 モンスターが上陸するまで 一部の評論家が危機を煽るだけで、マスコミに悲観的な空気は少なかった。


 取材陣が九州、中部地方の日本海側に派遣。

 警察、自衛隊、ダンジョン対策部隊に張り付く。

 そして主要な港や公共施設に派遣していた。


 次こそは望遠でリアルタイム映像を取材しようと張り切る。


…………


 そして。


「見てください、遠くにモンスターが見えます!

 上陸してきます!」


 上陸後、ダンジョン対策部隊の戦闘をリアルタイムに映してアナウンスする。

 そこまでは良かった。


 突如としてモンスターが戦うのを止め周囲に飛び去る。

 一体のモンスターが取材陣がいる場所に飛んでくる。


 そのモンスターをそのまま映す。


 そしてモンスターが通り土産に幾つもの魔法を取材陣に放つ。

 カメラの前でアナウンスしていたアナウンサーの上半身が弾け飛ぶ。

 手や首が宙を舞う。

 カメラには数滴の血が付き倒れ始める。


 カメラが倒れた先に映し出されたのは、ピクピク動くアナウンサーの倒れた下半身だった。



 検閲されない死の惨劇が全国にリアルに流れる。



 急遽ワイドショーのスタジオに場面が変わるが、ニュースキャスターや芸人は声を出せなかった。

 カメラの裏から手を必死に回して(マケマケ)と合図するが。


「あ、その、現場は……繋が……り………… 無理……ですね……」


 とぎこち無くしか話せなかった。




…………




 今までの取材は、十分に遠く離れていれば危険は少なく、陸上モンスターのため逃げる時間もあった。

 しかし、飛行モンスターに距離はほぼ関係無い。

 今までのモンスターは遠距離魔法も使ってなかった。


 この時から全ての放送局は《緊急放送、海外からのモンスター襲撃》となり、被害地域、避難先や方法、死者の名前等の即時的なニュース放送となる。




 今回の襲撃と今までの襲撃の違い。

 今までの日本のモンスター襲撃パターンは、ダンジョンマスター攻略本による影響であった。


 サクラがこの事に気づいた時。

「そうか…… 今までは日本にとって良かったが、これからは変わって行かないとね」

 とつぶやいた。




ーーーーーー




 日本全国が衝撃を受けた放送から、モンスターを駆逐するまでの7日間を「惨劇の7日間」と呼ぶようになる。


 初日はモンスターを倒せず希望の無い放送ばかりだったが、次の日には自衛隊の狙撃チームとダンジョン対策部隊の合同でモンスターを倒す。


 そして、多く作られた合同チームの一つに同行したマスコミがモンスターを倒す場面を録画し、全国放送する事で明るい兆しを全国に伝える事ができた。


 しかし、殲滅するまでの期間が長い、全国放送では惨殺の場面や悲惨な死の場面は流さなかった。

 投稿動画には惨劇の映像がUPされたが、すぐに動画が削除される。


 その結果、現場周辺は目を疑うような惨劇と悲しみが渦巻いていたが、他の場所では他人事のようにテレビを見ていた。


 その結果、多くの日本人に現実感が伝わらずに危機感がないままだった。




ーーーーーー




 惨劇の7日間が終わると、マスコミはモンスター襲撃と防衛の分析を始める。

 当然ながら政府とダンジョン対策省と自衛隊の責任が追求される。


 前回、先方に立って声高に攻めるアナウンサー、評論家、政治家は病床の上に居た。

 しかし、人が変わっても攻め立てる人は減らない。


 そして、アサカの暗躍が始まる。


 必要以上に攻め立てる人は療養に入るだろう。

 病気発生の異常さに気がつき、その情報をマスコミで発信する人は、翌日には床上の人になる。




 襲撃終了後、ネットワーク上に発信者不明の噂が流れる。


『海上自衛隊のイージス護衛艦XXXが、艦対空ミサイルで6体の飛行モンスターを倒した』


 そして、妙にリアルな情報が同時に説明されていた。


 それを見たネット利用者は驚き、情報を拡散する。

 一躍ネットはお祭り状態となり、自衛隊に問い合わせが殺到。


 マスコミもその情報に飛びつきニュースに上がり、評論家が分析して情報の正確さを説明する。


 番組の中でアナウンサーやコメンテーターが国に問いただす発言を繰り返す。


 そして、マスコミや民衆からの問い合わせ圧力が高まり、嘘が言えない自衛隊や防衛大臣は翌日に説明会見を行う事で収拾をはかった。




 翌日、ホテルの会議室で大勢のマスコミの前に国防大臣と自衛隊幹部が揃う。


 防衛大臣の挨拶後、開口一番。


「世間を騒がせている情報ですが、海上自衛隊のイージス護衛艦XXXが6体の飛行モンスターを撃墜したのは事実です」


 一斉にカメラのシャッターが切られる。

 テレビ画面には《イージス艦モンスターを撃墜!》。

 アナウンサーが「ネットの情報は事実だったんですね!」


 一斉に起こった騒ぎが落ち着き防衛大臣が続ける。


「詳細説明は、こちらに居る海上自衛隊のXXXが説明します」


 そして、大きなスクリーンを使って発見から撃墜までの詳細が説明された。

 その後、質疑応答になる。


 A記者が質問する。


「今まで近代兵器がモンスターに効かなかったのは何故ですか?」


「拳銃、小銃、機関銃、ライフル等は物理的衝撃を与えても強いモンスターを倒す事はできませんでした。


 モンスターやLv保持者が持つ魔法的なバリアーが魔力の籠もっていない攻撃を防ぐからです。


 だが、非常に強力な打撃力があれば強いモンスターを倒す事は知られています。


 しかし、対空ミサイルや戦車砲の様な周辺を巻き込んで破壊する打撃力を国内で使えません。

 そしてモンスターの機動力に対して鈍重すぎて対応できない。


 だが!


 海上なら使えます!


 既に条件付きながら攻撃許可は出ています。

 次からは発見すれば、条件をクリアして攻撃出来ると考えています」


 B記者が質問する。


「モンスターの発生場所は何処ですか?」


「飛行モンスターは朝鮮半島から飛来していると考えています。

 外交チャンネルを通して、モンスターの発生場所の調査とダンジョン破壊を行いたいと、問い合わせをしましたが。


 日本の戦力を国内に入れる事はできない。

 朝鮮半島のダンジョンは我が国が対処する。

 と拒否されました。


 また、朝鮮半島の近くで艦対空ミサイルを打つとは、我が国を挑発しているのか?

 と猛抗議を受けています。


 しかし、EEZ内であれば国際法にも問題が無く、国民の命を守る為の武力行使は断固として行います」



 C記者が質問する。


「なぜ、上陸前にモンスターを攻撃出来なかったのですか?」


 防衛大臣が汗をかきながら答える。


「それに付きましては、反撃願いを受けた自衛隊上層部は、隣国と近い位置で艦対空ミサイルの様な打撃力が有る攻撃の判断はできません。


 私である防衛大臣に相談し、私はすぐに緊急閣僚会議を招集しました。


 協議の上、条件付き攻撃許可を出しています。

 決定までX時間かかり、その時は既にモンスターは日本の陸地近くに入り艦対空ミサイルを撃てる場所ではありません。


 だが、遅れて来たモンスターは撃墜しました。

 次は攻撃可能です」


 この点はマスコミや野党が大きく騒ぎ立てた。


 幾つかの質疑応答が行われ会見は終了する。


 その後、強くバッシングして日本にマイナスとなる人はアサカにより退場となる。

 そして、ダンジョン対策省と自衛隊の強化と予算増を望む世論と政界の工作を行う。


 アサカに休む暇は無い。



ーーーー



 イージス護衛艦のモンスター撃墜情報をネットにリークしたのはアサカであった。


 なぜ情報をリークしたのか?


 それは、モンスター襲撃前にサクラやライトワン含む主要メンバーが集合して戦闘状況を見て評価していたためだ。


 空には多数のハイブラッドスパローが観測のために展開。

 エンシェントドラゴンがダンジョン対策部隊の精鋭を見守っていた。


 会議室には多数のテレビでニュースを流し。

 多数のパソコンと携帯端末でネット情報を見る。


 その中で特に注目したのが2点。



1、飛行モンスターに対してダンジョン対策部隊が思ったより無力だった事。

 だが、自衛隊との共同討伐は見事だった。


 今後、チャレンジダンジョンの飛行モンスターをもっと現実に則した状況に変更し、ダンジョン対策部隊の強化につなげる。



2、イージス護衛艦による飛行モンスターの撃墜。


 近代兵器がモンスターにどこまで通用するかの調査。

 そして自衛隊の積極参加により、将来の国家紛争に備えた自衛隊の強化。


 自衛隊の弱点に備蓄弾薬が少ない事。

 他国から輸入した兵器が多い事。


 どちらも世界的に生き残りの国家紛争に突入した時、輸入が困難になる。

 そして輸入先の国が侵略国になり敵対すると兵器と弾薬が無くなる。


 そのために自衛隊の弱点を克服して強くなって欲しい。


 イージス護衛艦の情報をリークして自衛隊の積極参加を即す世論を作りだす。

 そして、弱点を表面化させ改善させる。


 特に武器弾薬は自国内で作れるように、強力に誘導する。

 眷属が増えようと、呪い死が増えようと、必要な条件となった。

 そして、武器弾薬も低価格で大量に自国で作れるよう誘導する。



 と、決定されアサカとタケルが行動し、ライトワンが敵モンスターや対策部隊、自衛隊の戦術分析を行う、トウカが全体をまとめて行動を始めた。





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