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第57話 モンスター襲撃9


 前回のモンスター襲撃において、海上自衛隊はモンスターを見つけながらも攻撃ができずに不名誉な結果となった。


 次の機会には、出来る限り海上でモンスターを倒す様にと、幹部からも政府からも強く言われている。


 そのため、長い期間をかけ徐々に戦力を集め、万全の体制でのぞみ、防衛準備が終行われた。


 ほぼすべての準備が終わる。


…………



 その数日後の夜明け前、EEZ近くの艦艇内CICルームにて監視業務をしていた。


 レーダースクリーン上に表示される朝鮮半島の地形に突如赤い光点が灯る。


 それが徐々に増え、進行方向とスピードが加わる。方向は日本を示していた。


 スピードと発生場所と数からみて、日本を襲撃するモンスター集団と判断し、複数の当直士官同士がお互いを目で確認し、緊急招集ボタンを押す。


 艦内に非常事態の警報が鳴り響き、CICルームの正面スクリーンが明るくなり、通路の証明が灯る。

 CICルームに艦長他、士官と乗員が駆け込んでくる。


 艦長が駆け込み声を上げる。


「報告しろ!」


「朝鮮半島に多数の飛行型モンスターを補足、進行方向は日本です!」


 正面大きなモニターには、朝鮮半島の海岸線に多数の赤い点があり、進行方向と速度が表示されている。


 艦長はすぐにモンスター襲撃であると判断。


 ただちに、リアルタイムで観測データを送ると共に、防衛本部に定められた緊急コード(朝鮮半島からモンスターの襲撃の可能性あり、数は多数)を送る。



ーーーー



 まだ夜明け前の防衛本部は、当直の士官しか居ない。


 薄暗い中、複数の士官が各人のモニターを見ていた。


 あくびを噛み殺しながら、もうすぐ交代か、朝食は何だろうと考えていた。


 突如、部屋内に警報が鳴り、正面の複数ディスプレイに光が灯り、動画が映り始める。徐々に動画の数が増える。


 そこには、朝鮮半島の海岸線近くに赤い光点と進行方向等の情報が映る。画面の下には緊急コードとモンスター襲撃の可能性ありと赤い点滅が表示される。


 部屋が明るくなると共に、各人がお互いを見つめ、頷きの無言で確認を取り、定められた緊急ボタンを押す。


 それは、緊急事態発生による防衛本部に緊急招集を行う行為であり、各関連組織に緊急事態発生の通知であった。


 部屋が途端に騒がしくなる。


 それは、定められた手順に従い緊急招集の確認連絡であり、各組織に通話で緊急事態の連絡確認である。

 そして目も覚めるほどの忙しさになる。



ーーーーー



 時を同じくいて、国家安全保障局の司令室にも同様の警報が鳴り響き。

 内容を確認後、総理を含む重要閣僚に連絡を行い。

 総理から緊急事態大臣会合の招集が発令される。


 短時間に集まる閣僚と関係者で会議を行う。

 会議内容は




1、現在の状況


 既にEEZ内での海上戦闘が行われていた。

 海岸線と陸上戦闘は始まっていない。




2、戦闘行為の継続と監視


 もともとEEZ内での戦闘は許可されているが、再確認のため連絡と、状況を国家安全保障局の司令室にて常時モニタリングを行う事を決定する。




3、国連及び関係国への連絡


 データを添えて戦闘継続中と戦闘区域を指定し進入禁止、進入した場合攻撃される可能性があると厳重に注意喚起する。等を国連と各国に連絡。


 戦闘可能性のある区域は以前より進入禁止になっていたが、再度戦闘中データを添えて連絡する。


 特に、大鮮共には詳細侵入状況を添えて抗議の連絡を行い、大使館には直接訪問して抗議を行う事を決定する。



 その他、細々とした議題を行い、必要人員が国家安全保障局司令室に併設された会議室へ移動する。




ーーー




 時が少し戻り、大型艦艇がモンスターを発見し緊急コード送信後。


 艦長が指示する。

「各艦と戦闘モード情報連結しろ」


「戦闘モード連結送ります………… 敵モンスターを探知した複数艦と情報連結、スクリーン出ます」


 全面大型スクリーンの左右に各艦の戦闘モード画像が表示され、スクリーンの下には艦艇の縮小配置図がでる。


 スクリーンの上には戦闘モード情報連結により、各艦が検出した全モンスターがAIにより分析し統合した全敵モンスターの縮小図が表示される。


 単艦でも戦闘モード情報連結で、戦闘参加艦艇全体の情報が見れるようになる。



 艦長が次の指示をする。


「EEZ境界に向かって撃つことはできない、EEZ境界の手前2キロに移動!」


「EEZ境界手前2キロに移動します」


「攻撃目標は当艦より1キロ以内と日本側に入ったモンスターとする」


「攻撃モードAIに攻撃可能エリアを設定します」


 全面スクリーンには艦の周囲1キロと艦から日本側の攻撃可能の薄いブルーの領域が表示される。



「攻撃行動を攻撃モードAIに移行、以後AIの自動制御監視を厳とせよ」


「攻撃行動を攻撃モードAIに移行します」


 攻撃モードAIはスクリーンに出ている全敵モンスターの攻撃対象を自動で各艦艇と使用武器に割り振る。


 近距離はCIWSに、それ以上は艦砲か各種ミサイルに適時割り当てられる。



 敵モンスター接近まで10分を切る。

 室内は電子音と空調音、オペレーターの声だけが聞こえる。




「自動攻撃目標設定が始まりました」


 全面スクリーンには、当艦から青い線が複数の敵モンスターに繋がる。

 線の種類によって使用武器が決まる。

 同様に、他艦艇の戦闘モードスクリーン上にも線が出る。


 時間経過と共に、線の種類と攻撃目標も自動で変化する。


 各担当士官が目の前のスクリーンを見つめ、問題や異常がないか監視をする。



「攻撃開始まで3分……」


……


「攻撃開始まで2分……」


……


「攻撃開始まで1分を切りました」


……


「攻撃開始まで10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、開始!」



 艦前方に備えられたCIWSが唸りをあげる、敵モンスターはCIWSの連射に耐えきれず、瞬時に粉々になって海へと落ちて黒い霧に消えていく。


 スクリーンからも赤い光点と青い線が消える。


 敵モンスターの1グループ5体は戦闘艦を知らなかった、だから前方の船を襲おうと接近したのだ。

 攻撃されたのだと気が付いた時には既に粉々になっていた。

 念話でマスターに報告する暇も無いほどに。



 遠くからそれを見ていたモンスターは、あの船は危険と判断し船から離れる様に飛んでいく。



「近くの敵モンスター当艦から離れます、攻撃目標と攻撃方法変化します」


 正面スクリーンには、敵モンスターの赤い点が動き、接続された青い線も追従して移動し線種も変化する。

 刻々と状況が変化し、戦闘モードAIが自動で目標と武器を決める。



「長距離ミサイルA1からA4発射します。

 続いて短距離ミサイルB1からB3発射します」



 前方サイロが4個開き、1秒起きに長距離ミサイルが上昇してゆく。

 後方のミサイルキャリアーからも次々に短距離ミサイルが飛び立つ。


 ターゲットまで別々の距離のため、弾着アナウンスは無い。


 正面スクリーンには、青い線の上を白い光点が複数移動して、弾着と共に赤い光点が消える。



 ただし、幾つかのターゲットの赤い光点が消えても、撃破マークが出ないターゲットが有る。

 AIの判定が推定回避となっている。

 敵モンスターが回避で海面すれすれや海中に退避した可能性をあげていた。


 ミサイルが当たって消えるのではなく、消えるタイミングが僅かに早いか、爆発のタイミングが僅かにズレたためだろう。


 レーダーから消えてしまえば二次攻撃ができない。



 残っている敵モンスターに当艦より二次攻撃、三次攻撃が行われ、スクリーン上では他の艦艇も激しく攻撃を行っている。

 徐々に赤い光点がが消え、スクリーン上では全ての赤い光点が消える。


 戦闘行動が終わり、攻撃モードAIの判定は推定4分の3撃破となった。



 その後も、チラチラと赤い光点が出るが、ターゲットできる時間が無く攻撃ができないていた。


 また、レーダーに映らない場所を飛んでいた敵モンスターの数は不明であり、残存敵モンスター数も同じく不明となる。


 第一次海上防衛ラインでの戦闘が終結する。



ーーーーーーーーー



 少し戻り、敵モンスター発見時から上空5000メールに多数のハイブラッドスパローが、大型艦艇の戦闘を監視していた。


 対馬島観測ダンジョンのコアルームでは、大きなテーブルの前に多数のスクリーンがコアにより表示され、観測ハイブラッドスパローの望遠映像がリアルタイムで映し出されていた。


 テーブル手前では、サクラ、トウカ、タケル、アサカと防衛関係者が座って戦闘を見ている。

 テーブルには飲み物や軽食やお菓子等が置かれていた。



 まるで戦争映画を見ている様に観戦する。


 サクラが

「あのCIWSだっけ、中型モンスターを一瞬で倒したね」


 タケルは答える。

「あれはファランクス、20m多銃身機関砲で毎秒約60発の弾丸を撃つ、とてもじゃ無いが中型の中程度のモンスターじゃ即死だね。

 特に飛行系モンスターは物理に弱い」


 家のタケル君は軍事にも詳しかった。


……

…………


「なんか、ミサイル打ちまくってるけど、たった一戦であれほど使って大丈夫なの?

 モンスターなんてGのように湧くよ」


「いや駄目だろ、一発数億から数十億円するから、あんなに撃ちまくったら、弾代だけで1000億円超える。

 あと数回戦闘したら在庫が切れるし、国の財政が破綻するよ。

 何考えてるんだか分らん」


「いや、将来他国と戦うのに残して置かないと、モンスターなんて対策部隊に任せないと。

 うちで防衛したら0円、無理に経費換算しても100万も掛らん、10万分の1だよ」


「財政破綻する前に止めるべきだ」


「アサカ! 3人で相談して何とか注意するか止めて」


「はい、お任せください!」


 相変わらず丸投げなサクラです。



ーーーーーーーーー



 国家安全保障局司令室に併設された会議室では、海上での戦闘を見てた自衛隊最高幹部が青い顔をして防衛大臣に話す。


 防衛大臣は途端に青い顔で総理に近づき小声で。


「総理、今回の海上戦闘でミサイルを使い過ぎです。

 概算1000億円以上、あと数回でミサイルが枯渇します」


 総理大臣が思わず振り向き。


「ホントですか?」


「はい」


「マズイ、マズ過ぎる、財政が…………………」







 ーーー 注釈 ーーー


{現実の戦闘艦艇を知らないので、ここに有るのは空想艦艇です}



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