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第6話

6話 元アサシン、城での買い物と届け物。


 バイクに乗り連れて来られたのは、昨日の城……イヤ違う! ショッピングモールだった。

 バイクを停めてから大きな建物の中に入ると、たくさんの店があり、まるで小さな街のように俺には見えていた。


「バート、衣類と靴を買うぞ。急げ!」


 ファッションやまむらと、掲示されている店だった。


★★★★


 店内に入ると、俺達を見た店員さん達がザワツキ始めた。


「ヤバイ~、銀髪ロングの超イケ面がキター」


 俺は耳がいいので小声で話している会話も、しっかり聞こえている。

 ジャンケンと言うのをしているようだ。


「シャァー! 私の勝ちぃ~」


 咳払せきばらいをした後、勝者の女性が俺に近付いて来た。


「いらっしゃいませ~、お客様。本日は何をお探しでしょうか?」


 その言葉を聞いた、玄人げんとが言った。


「仕事で使えて、普段着としても使えそうな物を頼む。あっ、下着と靴も頼む」


 そう告げて、玄人げんとも服を選びだした。


「し、下着もですか?」


 女性店員さんは顔を赤らめながら玄人げんとに聞き直したのだが、玄人げんとは俺を残して他の服を見に行ってしまった。


「お姉さん、スイマセン。よろしくね」


 ウインクをしてから頭を下げて、お姉さんにお願いをした。

 女性店員さんは『かしこまりました』軽く頭を下げてから、俺にも分かるガッツポーズを見せて、ハリキッテ服や下着や靴を選んでくれていた。


「こちらのコーディネートなんて、いかがでしょうか?」


 品物の説明をされているようなのだが、俺にはよく分からないので『うん、うん』と頷いて、笑顔で居ることしか出来ないでいた。

 説明によると、デニムと言うあおい色のズボンと、ロンTと言う長袖の肌着か? と、ズボンと同じ生地のデニムのあおい色のジャンパーに、頭に被るような布の付いたパーカーと言う物が選ばれて、俺の体のアチコチにあてられていた。


『うん。いい』と、頷いた後、店員さんから笑顔で手渡された。


 靴下と言う足に被せる物と、下着は女性ものか? と思うほどの小さな下着と、玄人げんとと同じタイプの下着なのだが、密着感の強い物の2つのタイプが選ばれていた。

 靴は履きやすく、とても軽いんだけど革に見えるような物だった。


「バート、買う服は、そのまま着てしまえー」


 奥のほうから玄人げんとの声が聞こえた。

 同じく、女性店員さんにも試着を勧められたので、分からないながらも、なんとか試着室で着替えを済ませた。

 着替えが終わったので試着室から出ると、女性店員さん達が試着室前で待っていた。


素敵すてきですよ。お客様~」


「お、お客様のご職業は、モ、モデルさんですか?」


「芸能関係のお仕事の方ですか?」


「彼女は居るんですか? 好みのタイプは?」


 たたみかけるように色々と質問をされてしまった。

 どのように答えていいのか困ったので、宣伝もねて、店員さん達に答えた。


「俺は移動販売、焼きイモ屋ゲンちゃんの店員です! 街で見掛けたら買いに来て下さいね! 悪魔的あくまてきな甘さで天国に連れて行っちゃいますよ~。レディー達」


 ワチャワチャしている中、ジャンケン勝者の女性が俺から服を取った。


「着て来た服を、お預かり致しますね」


「スイマセン。お願いします」


 着て来た服は、お店の袋に入れてもらい笑顔で渡された。


「終わったか? バート」


「はい。終わりました」


 玄人げんとが戻って来ると、俺をチラッと見てから店員さんに連れて行かれた。

 支払いを終えて、玄人げんとが戻って来た。


「いいぞ。似合っているぞバート」


「有り難う。玄人げんと


「給金から引いておくから、心配するな。笑」


 俺達はバイクに戻り、美空の学校へと向かった。


★★★★


 20分と言う時間ほど走ると、広い広場を網のような物で囲み、その奥に大きな建物があった。

 玄人げんとはバイクを停めてから、ヤーニ《タバコ》に火をつけて一服している。

 今度こそ城だと思い、俺は玄人げんとに聞いた。


玄人げんと、あ、あの建物は城だよな?」


 笑いながら玄人げんとが言った。


「あっはっはぁー! バートは城が好きなのか? あそこに美空が居るんだよ。つまり、学校と言うところだよ」


「なら、この国には城はないのか?」


「あるぞ! だが、バートの思っている城とは違うと思うけどな?」


(この国にもやはり、城はあるのか! どんな王が居るのだろう?)


 そんなことを考えていた時だ。

 玄人げんとがスマホと言う連絡装置を使い、学校と言うところと連絡を取っているみたいだ。

 連絡を終えると、学校と言うところから音が鳴り始めた。


〈ピン、ポン、パン、ポォーン〉


「2年の山島美空やましま みそら、お兄さんが届け物に来校されている。至急、校門まで受け取りに向かうように!」


 玄人げんとにチラッと視線をやると、玄人げんとにバックを渡された。


「バート、美空に届けてやってくれ。あそこが校門だ」


 指を差して、場所を俺に伝えた。

 渡されたバックを持ち、校門へと向かった。


〈キーン、コーン、カーン、コーン、キーン、コーン、カーン、コーン〉


 突然! 学校から鐘が鳴り、ビクッとして、つい戦闘体制になってしまった。


「・・・・」


(あっ、あれ? な、何も起きないぞ?) 


「ハッ!」


 急いでチラッと玄人げんとを見ると、玄人げんとは俺に指を差して大笑いをしていた。

『ふう~』と深呼吸をして、赤くなっているだろう顔を落ち着かせて、校門のところで美空が来るのを待っていた。


(あれ、美空と友人かな? 3人でこっちへ来るぞ)


 俺はバックを見えるように出して……あれ、何かを話しているようだ。

 話を合わせるために、呪文、集音しゅうおんを唱えて、聞き耳を立てて待っていた。


(この国でも呪文が使えることを確認した。『先にヤレ!』と師匠ししょうに怒られそうだ)


「美空って、お兄さんが居たんだね~」


「あれ? お兄さんだよね? お姉さんじゃないよね? 綺麗きれいな銀髪ロングの女性に見えるんだけどー」


 そうかそうか、美空の友人には俺が女性に見えているようだ。


 なら俺から声を掛けて、男性であることを事前に知らせることにした。


「みそらー、お弁当を忘れているぞ~」


 俺が声を掛けると、3人が走って来た。


「こんにちは~。美空のイケてる、お兄さーん」


「美空のお兄さん、超イケじゃ~ん」


 3人は仲良くワチャワチャしていたが、美空が手を差し出して、お弁当を受け取った。


「お弁当を届けてくれて有り難うね! バート兄さん。今日のコーディネート素敵すてきだねぇ、似合っているよ! じゃ~、時間だから戻るねぇ。バイバーイ」


 美空は顔を赤くして、友人にからかわれながら戻って行った。


(ファッションやまむらの店員さん達、有り難う)


 俺は走って、玄人げんとのところに戻った。


「有り難うなバート。帰って昼飯を食って、仕事に出るからな」


「了解だ! 玄人げんと


 俺達はバイクを走らせ家へと戻った。



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