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2章帰郷

第15話

15話 4つの季節。


2章 前書き。

 2章目となるこの物語では、バートが新たな試練に直面します。

 異世界である東京でルノーン界のことを考えながら、ルノーン界での環境と違う中で、焼きイモ屋ゲンちゃんでの修行にはげみます。

 山島家とのきずなが深まり、友情や家族のきずなの大切さがますます明らかになる中で、チョットしたアクションと日常のチョットしたユーモアが融合ゆうごうした成長物語が展開します。


 この章では、バートがさまざまな経験を通じて成長し、お客様との関わりが物語を豊かにしてくれます。

 バート自身の秘密に向き合う瞬間や、心が締め付けられる別れ、新たな出会い、と思わぬ出来事が待ち受けています。


 果たしてバートは、これらの試練をどう乗り越え、自分は何をなすべきなのかを見付けることが出来るのでしょうか?

 ドキドキ、ワクワク、ハラハラの展開が再びあなたを待っています。


 さあ、バートと共に未知の冒険に、ご一緒に行かれませんか?




2章 本編 15話 4つの季節。


玄人げんと美空みそら、俺は2人と家族になれて良かったよ。本当に有り難う……〉


 俺の体が光りに包まれて、意識がなくなり始めた時〈ドスッ〉とした感覚を感じた。


〈バート、またな!〉


 そうつぶやいて、泣いている美空の肩を叩き、玄人げんとはリビングの椅子に座り、タバコを手に取った。

 俺の意識は、そこで完全になくなった。


〈ピッ、ピピ、ピッ、ピピ〉


 なっ、なんだ! これは夢と言うやつなのか? 俺はなんの夢を見ていたのだろう。

 目覚まし時計を止めて、ひどい寝汗を拭きながら、俺は朝の準備を始める。


★★★★


 俺が、この世界に転移して来て、半年が過ぎようとしている。

 相変わらず玄人げんとは、仕事を教えてくれない……『見て覚えろ!』のスタイルだ。

 ルノーン界の師匠ししょうもそうだった。

 ちゃんと俺の修行を見ていて、次の段階まで行くと指導が始まる。

 だが、やっと玄人げんとからの指示と指導をしてもらい、今年の新商品の開発を任されることになった。


 ……嬉しい。


「でも、なんなんだー! この暑さは!! 日本は暑すぎるぞおぉぉ!!!」


 今日も暑い……暑いと言うよりジリジリ、ヒリヒリする痛い感じがする暑さが連日続いているぞ。


「何時まで、この暑さは続くんだあぁぁー」


 この暑さは、日本で経験する初めての気候なんだ。

 この国には4つの季節があるようで、俺には初めての体験だった。


(勘弁してくれよぉ~、さすがにもう倒れちゃいそうだぁ……)


 ルノーン界には2つの季節しかなく、この世界で言うと春と秋と言う季節しかない。

『今日は昨日より少し寒いかなぁ~』『今日は昨日より暖かいなぁ~』ぐらいの気候なんだ。

 焼きイモの石を洗いながら、この暑さに対抗するために頭から水を被った。


★★★★


「おはようございます。今日も朝から暑いですね~」


 聞き覚えがある声だったので、水を止めて顔を上げたら、常連のお客さんだった。

 この暑さでもスーツと言う、見るからに暑そうな仕事着を着こなして、凛としている。


(今の俺には、この常連さんが、素直に格好かっこイイと思える女性だった)


「おはようございます。本当に暑いですね~! あっ、今日も取り置きしておきますか?」


 急いでタオルを取り、濡れた銀髪を拭きながら笑顔を向けて尋ねた。


「はい! 帰りに寄りますのでお願いします。時間なので仕事に行きますね」


 彼女は時計に指を差して頭を下げた。


「毎度 ありがとうございます。暑いので無理をしないで、気をつけてくださいね! 行ってらっしゃい」


 俺も頭を下げて彼女を見送った。



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